1.自前オンライン展示会とは?

 

「自前オンライン展示会」の開催に取り組むことで、自然に企業のDXを進めることができます。(ご参考:「オンライン展示会の進め 1」)

この稿では、「自前オンライン展示会」の具体的な開催方法について説明します。

そもそも「オンライン展示会」という単語自体が、新しい言葉です。なのでそれぞれの人がさまざまな意味で使っています。その中で、私が提唱する「自前オンライン展示会」という言葉は、私の造語ですので、ここで定義します。

 

【「自前オンライン展示会」の定義】

『自前オンライン展示会』とは、次の2つの要素によって成り立つ、顧客獲得のための取り組みである

【「自前オンライン展示会」の要素】

要素1:WEBサイトを実践的な営業ツールとして作りあげる

要素2:コンセプトに沿ったオンラインセミナーを定期的に開催して攻めに転じる

 

2.「自前オンライン展示会」の要素1~WEBサイトを実践的な営業ツールとして作りあげる

 

これは、会社パンフレットのような既存の公式サイトとは異なります。単なる商品紹介や会社案内とは異なる、見込み客の問題解決に寄与するコンセプトをつくり込み、そのコンセプトに合致したWEBサイトを開設します。新たに開設するのではなく、既存の企業サイト(ホームページ)の下層に配置する形でも構いません。

そして、そのWEBサイトにコンセプトに沿ったブログ記事や動画を掲載します。これら一つ一つの記事や動画が会場に出展するリアルな展示会におけるブースにあたります。このWEBサイトは、常に閲覧できるので、リアル展示会における「常設展」になります。

 

 

 

 

WEBサイトを開設するなんてお金がかかるじゃないか。コロナウィルス禍の影響で先行きが見えないから少しでも支出を抑えて手元資金を厚くしておきたいのに……」

そう思ったあなたも、安心してください。WEBサイトを無料で開設できるサービスは多々あります。例えばペライチ(https://peraichi.com/)の「スタートプラン」は無料サービスの代表的なものです。

もちろん、予算があり労力もかけられるならば、VR(バーチャルリアリティ)などを駆使してリアル展示会にも負けない臨場感のあるサイトを構築することもできます。最近はITベンダーが、さまざまなオンライン展示会ツールを開発しているので、こういったものを活用することも可能です。

しかし、凝ったやり方は、時間やコストがかかりすぎてしまいます。まずは、無料ツールで手軽に始めて社内に勢いをつけた後、必要に応じてWEBサイトの高度化・高機能化を検討するというステップを踏むことをお勧めします。

 

3.既存企業サイトと、オンライン展示会用WEBサイトの違い

 

「WEBサイト? 会社のホームページならすでにあるぞ!」

こう思った方もおられるでしょう。しかし、その「ホームページ」は、あなたの会社商品・サービスや会社自体をわかりやすく説明する自己紹介型サイトなのではないでしょうか?

自己紹介型のホームページは、信頼証明のためには有効ですが、それだけで、潜在的な見込み客を集められるようなものではありません。つまり営業ツールとしては、ほぼ役に立たないのです。

見込み客を集めるためには、既存のホームページとは別に、コンセプトをつくり込み、そのコンセプトに合致したWEBサイトを追加してください。コンセプトとは、「見込み客の問題解決に役立つもの」で「あなたの会社が顧客に提供する真の価値につながるもの」です。

 

次に、コンセプトに沿ったブログ記事や動画をサイトに掲載していきます。

こう言うと、「記事や動画をつくるって言ったってどうやるんだ? 外注する予算はないし、内製しようにも、うちにはそんなことができる人材はいないぞ」という声が聞こえてきます。

大丈夫です。記事や動画は、あなたの会社の営業担当者などの社員たちで簡単につくることができます。シフト制にして、全社員が記事や動画を数ヶ月に一度つくっていくというイメージです。

WEB上で検索されるキーワードを意識して記事や動画をつくっていくことで、徐々にサイトの閲覧が増えていきます。この閲覧者が、まさにあなたの会社の見込み客です。この「自前オンライン展示会」サイトを運営していけば、自然と見込み客が増えてくるのです。

 

しかし、問題があります。それは、この方法が待ちの姿勢であり、見込み客数が増加するスピードには限界があるという点です。この問題をクリアするのが「自前オンライン展示会」のもうひとつの要素である「オンラインセミナー」の開催です。

 

4.「自前オンライン展示会」の要素2~コンセプトに沿ったオンラインセミナーを定期的に開催して攻めに転じる

 

「ウェビナー」という言い方も定着していますが、オンラインで開催するセミナーを開催します。開催頻度は、3か月に一回程度が良いでしょう。このオンラインセミナーに、見込み客を集めます。このことによって、メールや電話によって参加を促す攻めの姿勢で活動でき、見込み客数の増加がスピードアップします。こうして、増やした見込み客に随時アプローチし受注していくのです。

 

5.「自前オンライン展示会」の実例

 

私自身も、自社の「自前オンライン展示会」を開催してきたので、ここで実例としてご紹介します。コンセプトは、「リモート営業のすすめ」です。

このリモート営業の導入をお勧めするオンライン展示会のWEBサイトのイメージが下記です。

 

 

実際にWEBサイトをご覧いただいた方がイメージできると思います。「リモート営業オンライン展示会」と検索いただくか、こちら https://onlinetenjikai.com/ からご覧ください。

この「リモート営業オンライン展示会」は、先ほど紹介した無料ツール「ペライチ」を使って作成しました。高額のWEB制作を行わなくても、まずはこの程度で十分なのだとご認識ください。

私は、この「自前オンライン展示会」を開催し、第1回セミナーを2020年4月28日に行いました。

下記の図は、このセミナーをYouTubeライブで配信した際の分析グラフです。グラフの横軸は時間を、縦軸は視聴者数を表しています。セミナーは13時から17時までの4時間にわたる長丁場でしたが、グラフの通り、最大132名の方に参加いただき、4時間後にも100名以上の視聴者数をキープしていました。

 

 

もし、見込み客が、あなたの会社のオンラインセミナーに4時間もの間、参加してくれたとしたら……。その見込み客は、あなたの会社に少なからず興味関心を持つようになると思いませんか。こういったことが実現可能になるのが、「自前オンライン展示会」なのです。

ぜひ「自前オンライン展示会開催」を自社の営業プロセスに組み込んでほしいと思います。

 

6.「三密(密室・密談・密約)営業」から「教える営業」に

 

「自前オンライン展示会」の開催において、もっとも重要なコンセプトを練り上げるために肝心なのは、「『売るのではなく教える』という発想に営業活動をトランスフォーメーションしていく」ことです。

 

思えば、コロナが襲来する前までは、営業の重要な瞬間は必ず「密」でした。

商談の第一歩は、「笑顔で名刺交換」でした。勝負をかけたプレゼンは、当然「顔の見える距離で」行っていましたし、「がっちり握手」して顧客の心をしっかりつかむことが重要でした。そして、「深い関係とは距離の近さだ」とばかりに、アルコールを入れながら、顧客と肩を組んで「エイエイオー!」と言っていたのです。

「営業GNP」という言葉もありました。

G・・・義理(何十年も取引していて貸し借りもあるから義理で取引を続ける)

N・・・人情(何度も足しげく通って情に訴える)

P・・・プレゼント(時には接待をして一層関係を強固にする)

 

しかし、新型コロナウィルスがこの状況を一変させました。コロナで経営が厳しくなれば、義理による取引継続は期待できません。そもそも、何度も足しげく通おうにも、接触自粛で面談できませんし、夜の街で接待なんてもっての外です。

私自身は、顧客との『密』な時間が大好きです。「営業GNP」を駆使して顧客に食い込む営業マンを尊敬しています。しかし、コロナです。「DX」化が叫ばれる中、こういったやり方は、もうできなくなってしまったのです。できなくなってしまった以上、新たなやり方を模索するしかありません。

 

そもそも営業GNP的なやり方には、マイナスの側面もあります。それは、行き過ぎると属人化し、コンプライアンス的に望ましくないやり方になってしまうという点です。三密営業と言っても良いかもしれません。三密営業とは、密室で、密談しながら、密約する、という今の時代にそぐわない営業を表す、私の造語です。

 

私たちは、コロナショックを、三密営業を脱却し、営業の本質的価値を発揮していくチャンスとして、前向きに捉えるべきなのです。

 

では、営業の本質的価値とは、何でしょうか?

 それは、「教える」ことです。プロとして、自社が扱う商材の周辺領域における情報、知見やノウハウを教えて差し上げることこそが、営業の本質的価値なのです。

 

「お客さまに教えるなんて、果して、うちの弱気な営業部隊にできるかな・・・」

心配ありません。この「営業としての本質価値」は、コロナ前まで多くの現場で成果をあげてきた、このコラムをお読みの経営者の方や営業マンのあなたには、実は、既に備わっています。そんなあなたなら、「DX」化もオンライン化も、仕組みとコツさえわかれば、すぐに対応できるはずです。

また、社内での経験が浅い若手社員や中途採用の方でも、『自前オンライン展示会』を開催することで自然と、「プロとして、自社が扱う商材の周辺領域におけるノウハウ情報を教えて差し上げること」ができるようになります。ぜひ教育の場としても実践してみてください。

 

7.「自前オンライン展示会」を開催する9つのメリット

 

最後に「自前オンライン展示会」のメリットを9つにまとめておきます。

 

1.自社で開催日を決めて自社だけで開催できるため社内に勢いをもたらす

2.接触自粛中でも災害が起こっても、開催することができる

3.出展料がかからず、費用ゼロで開催できる

4.距離の制約を超え、全国、全世界から見込み客を集めることができる

5.セミナーの中で、自社商材のメリットを順序立ててしっかり訴求することができる

6.セミナーを録画しておくとコンテンツ資産になり2次利用できる

7.継続すればするほどコンテンツが充実し、見込み客にとって有益なものになる

8.リアル展示会や合同オンライン展示会に出展する際に、相乗効果を発揮できる

9.取り組むことで社内のDX化が無理なく自然に進んでいく

 

 

 

 

執筆:展示会営業コンサルタント 清永健一

 https://tenjikaieigyo.com/

株式会社展示会営業マーケティング代表取締役。中小企業診断士。奈良生まれ、東京在住。展示会やオンライン展示会を活用した売上アップの技術を伝える専門家。 中小企業への売上サポート実績は1300社を超える。アジア最大級の食品・飲料展示会FOODEX JAPANの出展者向けパネルディスカッションのパネリストを務めるなど展示会業界活性化にも尽力。展示会活用に関して、テレビ等出演のほか、行政、公益法人、金融機関などで講演多数。 著書は『中小企業のDX営業マニュアル~オンライン展示会をきっかけにしたスムーズな営業改革術~』など7冊。