オビ コラム

風評被害対策コラム 第3回 

ABCマートから学ぶ「不公平な批判」から会社を守るには

◆文:ソルナ株式会社

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初摘発第一号

全国に展開する靴の販売店「ABCマート」が労働基準法違反で書類送検されました。2015年7月にテレビで繰り返し流されたニュースのうちの一つですので覚えている方も多いでしょう。送検容疑は「協定書を出さずに残業をさせたこと」、「協定で定めた残業限度時間を超えて残業をさせたこと」でした。

 

政府肝いりの「かとく」

このABCマートの労基法違反は別の意味でも頻繁に取り上げられる理由がありました。厚生労働省は、2015年4月にいわゆるブラック企業対策のため、「過重労働撲滅特別対策班」(通称・かとく)を東京、大阪の労働局に専従で設置。

「かとく」設置に際しては、塩崎厚労大臣が発足式に出席するなど、政府は「過重労働による健康障害の防止と長時間労働対策は喫緊の課題」として「ブラック企業」対策に取り組む強い姿勢を見せていたからです。

その専従「かとく」による「初摘発」も加わって、このニュースは必要以上に大きな報道につながったわけです。

 

ブラック企業名の公表

厚労省が5月に発表した、「ブラック企業」のうち、違法残業が複数の事業所で行われている大企業は企業名を公表するという話はすでにご承知のとおりです。

公表対象となるのは、1年程度の間に3カ所以上の支店や営業所で労働基準法違反があり、悪質な企業。ABCマートは国内外に約1000店舗を展開する東証第一部上場企業で、2015年2月期の連結売上高は約2135億円、従業員数は7千人超(アルバイトを含む)の大企業です。

 

違反事実は?

具体的には、ABCマートは「会社と労働組合、または従業員代表とが結ぶ協定書を労働基準監督署に出さず、平成26年4月13日~5月10日、従業員2人にそれぞれ97時間、112時間の残業をさせた」、また「協定で定めた残業限度時間(月79時間)を超えて2人に98時間、109時間の残業をさせた」と違反事実を指摘されました。

これらは厚労省による「企業名を公表」する条件に合致します。

 

また、今回の送検に至った理由として「平成25年に本社に3回、平成23年から平成25年に16店舗に改善を指導したが、本社と14店舗は改善しておらず、悪質と判断した」とされたようです。

 

ABCマートの名誉

ただし、ABCマートの名誉のために書くと、ABCマートの代表取締役社長・野口実氏は平成27年7月2日付で「当社及び当社人事担当役員1名及び従業員2名は、平成26年4月から5月にかけて、当社2店舗において、労働基準法の定める上限を超える長時間残業の事実があったとして、東京労働局から、東京地方検察庁に書類送検」されたのは事実としてお詫びをした上で、東京労働局から指導をされた直後から「当社内において外部専門家である弁護士の協力も得て、上記原因の調査を行い、早急に残業時間の削減及び抜本的対策の構築に取り組み」、その結果、「既に労使協定の上限を超える長時間残業を解消させ、また、再発防止のための労務管理システム構築を含めた万全の措置を講じており、当社全店舗でこのような問題が生じない体制を確立しております」とコメントを発表しています。

 

問題点はすでに解消済み

ABCマートのプレスリリースの中で特に注目されるのは「一部報道において、現状も改善されていないとも受け止められかねない表現がございます」と憤った上で、「平成26年8月以降は、長時間残業の問題は解消されている」としている点です。

しかし、この点を報道したマスコミはほとんどありませんでした。一方で、労基法違反の「かとく」による初送検のニュースは延々と垂れ流され、私が見た限りでは、テレビで放映されたABCマートのコメントはいずれも「現在はすでに問題は解消」には一切触れず、「今後ともコンプライアンス遵守について万全を期すべく全力で取り組んでまいります」というものだけを流していました。

 

報道の偏りも悪評の原因に

すでに万全の措置を講じ、労基法違反の指摘後は「長時間残業の問題は解消されている」ことについては、まるで報道されません。

ABCマートにとっては今回の報道は大きな痛手でしょう。報道によって売上高や利益に影響が出るかもしれないし、社員やアルバイトの採用に悪影響を与える可能性もある。

しかし、ABCマートの違法な長時間労働は発表によれば、現時点ではすでに解消されているのです。このことはマスコミも世間も誰も言ってくれない。そして、「あそこはブラックだぞ!」なんて言葉だけが独り歩きし始める。今回の事例では、ここを私たちは考える必要があるのではないかと感じます。

 

企業も間違いは犯す

たしかにABCマートは労基法に対する違反があった。これは間違いない事実です。この点に関して批判があるのはやむを得ない。しかし、指摘があって改善をした。少なくとも東証一部の上場企業が「解消されている」と社会に対して断言している。にもかかわらず、マスコミは、それには触れずに違反事実や送検のことだけを報道し、企業名が公表される。率直に言って不公平だと思います。

こうなってしまっては時間はかかりますが、ABCマートの今回の問題が、発表されたようにすでに解消されているならば、ABCマートの今後の新たな成長が期待できるのではないでしょうか。いや、何としてでも頑張ってますます成長してほしいと願います。

 

批判から会社を守る

企業も人も間違うことがあります。誰にでもあることですし、それは致し方がないことで責められません。ABCマートの問題は対応が遅れたこと。平成23年から店舗に指導が入り、改善されたのは26年8月ですから3年以上の時間が経過しています。

間違ったら即座に直す。その上で、現在の状態をも大いにアピールしていかなくてはなりません。自社の評判を守ってゆくのは、他でもない自分達なのですから。それを知っていただきたく、ABCマート側の発表も知っていただきたかったわけです。

 私立探偵フィリップ・マーロウの有名な言葉を借りれば「組織は改善しただけでは生きていけない。実直なだけでは生きていく資格がない」と組織人には伝えたい。間違いはすぐに正し、大いに反論もし、より良くしていけるのは自分達しかありえません。誰も無責任な批判の責任は取ってくれないのだから。

 

◉風評被害の対策の流れ

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2015年9月号の記事より
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