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風評被害対策コラム 第8回

<社長が必ず知っておくべきネットの風評対策>

アリさん騒動から学ぶ炎上、拡散のメカニズム

カイシャの病院・ソルナ株式会社 Karte.08

 

太陽と月をモチーフにしたソルナ株式会社のロゴ

ネットの監視サービスや風評対策総合コンサルティングを行う『カイシャの病院』として、中小企業から上場企業まで多くのクライアントのネットトラブルに対応。書かれたものへの対処法だけでなく、「今後いかに書かれにくい企業」としていくか、そのための様々なサービスにも力を入れており、さながら「根治治療」を掲げる専門医のようだと好評を得ている。六本木ヒルズにて開業中。

 

■アリさん騒動とは?

 昨年もさまざまな企業で大小多くの炎上騒動が起こりました。中でもまだ記憶にも新しく、またこれから先も世間の負の記憶として残り続けてしまうであろう大きな炎上騒動がアリさん騒動と呼ばれているものです。今回はこの騒動から学ぶ炎上と拡散のメカニズムをみていきたいと思います。

 「アリさんマークの引越社」で有名な引越社。この会社の社員であるAさんがかねてより業務中の事故や破損の弁償金を、本来負担すべき会社ではなく、従業員に給料から天引きさせるという形で負担させている会社の体制や、長時間労働や残業代の未払いなども常態化している社内環境を疑問に思い、誰でも一人から加入できる合同労働組合プレカリアートユニオンに加入しました。

 

 そしてこの労働組合を通じて会社に改善の団体交渉を申し入れたところ、会社側は一方的にAさんを1日中立ったままひたすらシュレッダーをさせるような部署へ異動させました。これを不服としたAさんは異動取り消しを求める訴訟を起こしましたが、会社側はAさんを今度は一方的に懲戒解雇処分としました。さらにはこの懲戒解雇の通知文を多数の社員の前で読み上げたり、「罪状」と書かれたAさんの顔写真、氏名、解雇理由が記された紙を全支店に掲示したり、社内報にも掲載しました。このことをAさん側が記者会見をして明らかにしたのが騒動の発端です。その後、Aさんの仮処分の申立てにより懲戒解雇は撤回となりました。しかし、依然としてシュレッダー部署のままであるなど状況が以前と変わらないため、Aさんの加入している労働組合が会社の前で抗議に踏み切りました。この抗議活動に対応する同社の社員の様子が動画サイトに投稿され、全国で注目の的になるような大炎上騒動となってしまいました。

 

カイシャの病院・ソルナ株式会社01

■炎上・拡散した理由とは

 昨今は「ブラック企業」という言葉が非常に注目されており、こういった労働に関する問題は注目を浴びやすいという状況があるかと思います。ですが、動画再生回数200万回(2015年12月現在)を超えるほどの大炎上になってしまった原因は何だったのでしょうか? それは、動画で撮影されてしまった引越社社員の感情的な態度、これに尽きます。

 

 全国規模で事業を展開し、テレビ広告も長年にわたり放映され、誰もが名前を知っているような有名企業の社員が凄む様子は、とてもまともな会社員が取るようなものではないセンセーショナルな印象を世間に強く与えました。

 そしてすぐさまネットニュースにも掲載され、SNSを中心に瞬く間に拡散、さらにテレビなどのマスコミが取り上げることによりますます爆発的に広がっていきました。

 

 もともとの問題であるAさんが訴訟を起こした労働問題については、両者の言い分が食い違っている部分もあり、また現在法廷で争っている最中でもあるため、一方的にどちらが悪い、という判断はまだ誰にもできないはずです。しかし、すでに引越社は完全なるブラック企業、とんでもない反社会的な会社だ、というイメージが定着してしまいました。

 もちろんこういった問題に詳しい人や、この問題の経過を追っている人は、「一方的に善悪を決めつけることはできない」と冷静に認識しているでしょうが、広い世間の中でみればそれは本当にごくごく少数です。

 

 引越社にしても、テレビ広告にあるように真面目にやってきて、長年かけてやっとここまで大きな会社にしてきたのかもしれません。そして今回のような労働に関する問題もあくまで例外的なものだったのかもしれません。

 けれど、たった一人、二人の社員の軽率な行動により、長い年月と莫大な広告費を使い積み重ねてきた知名度と信頼は一瞬で崩れ去ってしまいました。

 

 今後、たとえ裁判で会社側の言い分が認められたとしても、その頃には世間の大多数は他のセンセーショナルな出来事に関心を奪われてことの顛末を見届ける人は少ないでしょう。ブラックな会社というイメージだけがいつまでも残り、決して楽観視できないような人数のユーザーが今後、この会社からサービスを受けることを拒否もしくは回避するであろうことが予想できます。

 その結果、単純に売上が減ることも会社にとって痛手ですが、今まで真面目にやってきた従業員にとってもこれはそうそう納得できることではなく、会社全体の士気やモチベーションの低下は避けられないはずです。これもまた、会社にとって大きな痛手です。

 

カイシャの病院・ソルナ株式会社02

SNSが発達した現代社会において、劣化もせずいくらでもコピーが可能なデジタルデータは、まさにネズミ算式に爆発的な勢いで拡散していく

 

■今回の騒動から学ぶこと

 果たしてこのような騒動は避けることができなかったのでしょうか。

 今回のような事例では、動画が投稿されてしまった時点で炎上を防ぐことはかなり困難だったといえます。

 SNSが発達した現代社会において、劣化もせずいくらでもコピーが可能なデジタルデータは、まさにネズミ算式に爆発的な勢いで拡散していくものです。

 

 ただし、できるだけ炎上を小さくする、早期に収束させることは不可能ではありません。

 今回の場合でいえば、動画が投稿され話題になり始めた時点で、できるだけ早く会社としてあのような態度を取ってしまったことを真摯に詫びる、といったことができていれば流れが違っていた可能性があります。

 

一社員の勝手な行動であり、決して会社全体の意思ではないという対応ではいけません。こういった場合に責任逃れのような態度を取ることは最も嫌悪されてしまいます。社員の態度、行動は全て会社の責任であるということをできる限り早期に、明確に、誠意を持って示すことが大事です。会社が大きくなり、従業員の人数が増えてくる中では訴訟問題となるケースも出てくることは避けられません。ただしそれが炎上騒動に繋がってしまうかどうかは、炎上に対する会社内の意識と迅速かつ適切な対応で決まるのです。

 

 今回のアリさん騒動から学ぶべきことは、ネット社会における拡散のメカニズムを認識することの重要性です。現在のネット社会では社員たった一人の誤った行動が、会社が長年積み重ねてきた信頼を一瞬にして壊してしまう可能性があるということを学ばねばなりません。

 「生き残るのは、最も強いものではなく、変化に対応できたものだ」という言葉もある通り、どんな商品やサービスでも、時代や世間の流れを読み、柔軟に対応することで売れ続けることができるはずです。

 

 そしてそれは、炎上対策にもいえることなのです。SNSが生活の一部になりつつある現代において、その便利さは、時に会社に利益をもたらすこともあります。一方で使い方やつき合い方を誤ると会社の心臓を貫くナイフになる危険性もあるのです。SNSの流れにも敏感に反応し、常に新たなリスクにも備えることが必要なのです。そのことに気付かないままでいることは、商品やサービスに何の改良も進化もさせないまま満足しているのと同じくらい、会社にとっては非常に危ういことなのかもしれません。

 

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ソルナ株式会社 本社エントランス

 

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フリーダイヤル0120-934-515

http://www.soluna.co.jp/

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六本木ヒルズノースタワー6F

 

◆2016年2・3月号の記事より◆

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