オビ 企業物語1 (2)

株式会社フェニックスソリューション ‐ これまでにない「RFID電子タグ」で世界を席巻だ!

 ◆取材:綿抜幹夫

オビ ヒューマンドキュメント

株式会社フェニックスソリューション 取締役副社長/和田康志氏株式会社フェニックスソリューション取締役副社長/和田康志

物流業などで広く使われるRFID電子タグ※は、金属や水分の近くでは使用できない問題点があった。世界で唯一これをクリアし、従来にない極小チップも開発する石川県金沢市の「株式会社フェニックスソリューション」。

外資系大手資産運用会社で活躍してきた経歴を持つ副社長、和田康志氏にお話を伺った。

※RFIDとは:ID情報が埋め込まれたRFIDタグと呼ばれる媒体のデータを、電波を用いて非接触で読み書きする電子認識システムのこと

 

◎和田氏と同社のあゆみ

■外資系大手資産運用会社を渡り歩いた経歴

1966年生まれ、この10月に49歳を迎えた同氏。慶應義塾大学商学部を卒業後、安田信託銀行、モルガン・スタンレー、メリルリンチ、UBS、ゴールドマン・サックスを経てイーストスプリング・インベストメンツ代表取締役社長と、外資系大手資産運用会社で商品開発・営業に長年従事。

世界初、日本初となる新商品を多数開発し、累計で2兆円を超す預かり資産を獲得。世界最大の公的年金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)から、機関投資家営業部を立ち上げわずか一年足らずで、海外在住の外国人運用者による初の日本株式アクティブ運用を受託するなど、華々しい業績を残してきた。

そんな同氏が、石川県金沢市のベンチャー企業の営業に奮闘している。一体何が同氏ほどの経歴の持ち主をその気にさせたのだろうか。

 

■RFIDにおける世界唯一の技術

同社の製品は「RFID」と呼ばれる電子タグだ。電子情報を「ピッ」と読み取り、書き込む技術、SuicaやPASMOのようなICカード(チップ)が、数メートル先からでも読み取れるものとイメージするとわかりやすい。

従来のRFIDは金属や水分の近くでは読み取れず、また、その大きさから極小部位での使用も困難であった。これを世界で唯一クリアしようと試みるのが同社だ。

もともと、同社の技術担当取締役の杉村詩朗氏が別の会社で開発していたこの技術。マレーシア政府や日立製作所、サムスン電子などを顧客とし、RFIDとアンテナ技術を提供していた。マレーシアのマハティール首相(当時)が同社と会うため、小松空港にプライベートジェットで下りたち、国家プロジェクトとして提携したという逸話もあることから、世界的にも稀な技術と頷ける。

 

■立ち上げ時点で最強のベンチャー企業

技術力はあっても、経営や営業展開に困難を抱えることは、中小企業でよくあることだ。マレーシア政府や名だたる大企業に技術を提供した前会社も、その後の事業で行き詰まることに。このとき手を差し伸べたのが同氏だ。縁あって出会ったこの技術に、同氏は大きな可能性を感じたのだ。

救世主はもう一人いた。地元金沢で建設業、公共事業施行、不動産など複数企業を経営する実業家の金岡久夫氏だ。現在75歳の金岡氏。自らも起業家として数社を築いたが、同社の技術に惚れ込み、事業支援、資金提供に名乗りを挙げた。

こうして2014年に株式会社フェニックスソリューションが創立。立ち上げ時点で、世界唯一の技術を持ち、強力な地元の支援、世界レベルの営業力を持つベンチャー企業が誕生したのだ。

 

 

◎世界唯一のRFID技術、その活用例

■物流で広く利用されている「RFID」 金属や水分の近くでも使用可能

タグをリーダーから読み取るRFID。無線電波を利用するため、距離があっても読み取れる上、複数のタグを一度に読み取れ、上書きもできる。RFIDは、物流の世界ではすでに広く普及している技術だ。

そして同社のRFIDは、世界で唯一、金属や水分の近くでも高い精度で読み取れる。用途は限りなく幅広い。

物流の現場であれば、金属製カゴ車やパレットの管理に使える。パレットは、プラスチック製か木製が多いが、重量のある荷物や、海外行きの荷物など、特殊なニーズのある荷物は金属製を使う。金属製カゴ車やパレット用のRFID開発は、多くのタグ・メーカーが苦戦しており、同社の技術が市場を席巻できる可能性がある。

 

そもそも金属を介して読み取れないのは、金属が電波を跳ね返してしまうからだ。金属の裏側に貼り付けたタグはまず読めない。しかし同社の技術なら、金属の裏側や内側にあっても読める。例えばマンホールの裏側に貼り付けたICタグを、路上の腰の高さから読んでしまうというから驚きだ。現状は、手作業でマンホールを一枚ずつ開けて確認しているため、時間と労力を大きく削減できる。

 

自転車の管理にも使える。一台一台にタグを埋め込めば、盗難防止や、放置自転車対策に役立つ。放置自転車の処理には莫大な行政費用、手間暇がかかっている。タグを車体に埋め込んで管理すれば、これらのコストが大きく削減される。警察官による防犯登録チェックの効率改善も期待される。

 

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マンホール裏側に貼付したタグを、地上から、マンホールを閉めたままで、読み書き可能。

 

コンクリートに埋め込むことで、竣工後のコンクリ個体の中長期的な個体管理にも利用できるし、路面アスファルト下に埋め込んで上下水道の埋設箇所の管理に利用することもできる。トンネル内の天井やインフラ資材のボルトの締め漏れ、締め忘れ防止などには、チェックの済んだものを「ピッピッピッ」と電子管理することで、チェック漏れなどのヒューマンエラーを防げる。すべてのモノがコンピューターとつながるIoT(Internet of Things)の好事例だ。

 

株式会社フェニックスソリューション (4)【金属製資材の管理】
従来難しいとされてきた、金属製カゴ車、鋼板、ガスボンベなどの複数一括管理が可能となる
株式会社フェニックスソリューション (7)【金属表面、裏面でも、卓越した読み取り性能を発揮】
一般的なRFIDの弱みである、金属面での読取書込に威力を発揮。金属面裏側のタグも、表面から読み取りができる(他社製品ではほとんど不可能)

金属製の産業用・医療用ボンベの個体管理にも利用可能だ。入出荷時に複数のボンベを一括で読み取れるし、ボンベ個体の経年、履歴を電子管理することで、破裂や爆発事故のリスクを低減させることが期待される。

 

製鉄所の鋼板や、リース会社のリース資産(例えば選挙事務所の折り畳み机・椅子、あるいは建設現場向けの各種リース資産など)など、金属製品に貼り付けても、複数の資材を一度の読み取りで管理できる。人間がひとつひとつ数える必要もなく、人手による間違いも減らせる。入出荷管理や棚卸の時間、人件費、間違い防止の効率が一気に改善する。

 

水分は電波を吸収してしまうため、通常のRFIDタグは水分の近くで使えないが、同社の技術ならこれも可能となる。人体の約60%は水分。水分の近くで使えるということは、人体の近くでも使えるということだ。入院患者や認知症患者にリストバンドをつけてもらい、医療過誤、徘徊を未然に防げる。企業の社員証も、ストラップで首からぶら下げたまま、リーダーに直接かざさなくても利用できるし、ドアを通過した入退室者全員の履歴も管理できる(現在の普及システムでは、同時に入退室した同伴者の入退室履歴管理はできていない)。

応用事例として、畜産用の豚や牛の耳に取り付けるRFIDも開発中だ。飼育段階での個体管理を向上させ、生産効率改善、品質向上に役立ちたいと考えている。

 

■0.5mmの極小チップ

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0.5mm四方の極小チップも、世界唯一の技術だ。この極小チップも用途は幅広い。

歯科インプラントに埋め込めば、カルテ代わりにインプラントの個体情報や治療履歴を上書きできる。インプラント向け極小タグの開発は、海外の大学から依頼されたもので、歯科インプラントにRFID管理を用いること自体は既にイタリアで特許申請されている。

その極小さゆえに、タグを真贋鑑定にも使える。例えばダイヤモンドの真贋鑑定、金庫とショーケース間の日々の移動の際の在庫確認、棚卸管理にも使える。カジノでは、高額チップの偽造防止に、紙幣や機密書類に擦り込めば、透かしやホノグラムに代わる偽造防止技術になる。

試験管やシャーレの底に貼り付けて、研究過程・成果を一括/個別管理することも可能になるなど、医療メディカル分野にも応用が可能だ。

 

 

◎フェニックス離陸前夜

 ■立ち上げから1年半、順調な推移

金融業界で20年以上にわたって世界を飛び回り実績を築いた同氏には、以前から、実業界で「日本の高度なモノづくり」、「ニッチトップ技術」、「ベンチャー企業」で腕を奮いたいという思いがあった。同社の技術に惚れ込み、ついに転身した。

 

株式会社フェニックスソリューション (8)株式会社フェニックスソリューション代表取締役社長金岡久夫

同氏は、経営者として金岡氏を非常に尊敬している。外資金融で偉業を遂げてきた同氏の目にも、金岡氏の判断、発想は「本当に鋭い」と驚かされるという。そんな金岡氏から「この事業に惚れ込んだ。面倒を見る。営業戦略を引っ張ってくれないか」、そう託された。ビジネス戦略、新規事業の立ち上げ、営業展開や交渉ごとには自負も実績もある。

金岡氏・和田氏の二人三脚で、杉村氏の技術を再び世に知らしめるべく走り出した同社。金岡氏は75歳、杉村氏は68歳。同氏はふた回りほど年上のメンバーと年の差を超え、日々アクティブに動いている。

 

■「半年後が楽しみ」

昨年11月には立ち上げ1年目にして石川県の「革新的ベンチャービジネスプラン コンテスト」で最優秀起業家賞を受賞、今年10月には石川県の産業活性化資源活用ファンド(活性化ファンド)の支援対象にも採択され、石川県からのサポートも得ている。グループの金剛建設は、昨年経済産業省より「がんばる中小企業300社」に選ばれている。

今年度下期には、大企業との量産案件も複数抱えている。これらが実際に世にでれば、国内業界どころか世界市場を相手に一気に日本の技術力をアピールできる。同氏は「これから半年、非常に楽しみです」と目を輝かせる。

 

世界に誇れるモノづくりの技術を持ちながら、経営や営業展開、事業承継に苦しむ中小企業は多い。68歳のベテラン技術者、その夢の実現を、49歳の敏腕外資金融マンが請け負った。フィクションのように胸のすく現実を、もうすぐ見られそうだ。飛翔するフェニックスソリューションに、日本の未来を重ねたい。

 

株式会社フェニックスソリューション (12)株式会社フェニックスソリューション (10)

フェニックスソリューションのRFID電子タグのユーザーの声はこちら

大日本印刷×フェニックスソリューション 世界唯一のRFIDタグでIoTに大きな布石を!

フェニックスソリューションのRFIDタグ その稀少性 ‐ 自動認識総合展2015 レポート

 

 

★同社の金属タグの性能が、HP上の動画で見ることができます。

http://phoenix-sol.co.jp/video.html

オビ ヒューマンドキュメント

◉プロフィール

和田康志(わだ・こうじ)氏…1966年生まれ。1992年、慶應義塾大学商学部卒業、安田信託銀行入社。その後、モルガン・スタンレー、メリルリンチ、UBS、ゴールドマン・サックス等の外資系大手資産運用会社で営業部長、役員を歴任。2013年、英国プルーデンシャルグループのイーストスプリング・インベストメンツ株式会社 代表取締役社長。2015年、フェニックスソリューション取締役副社長。

 

◉株式会社フェニックスソリューション
代表取締役社長/金岡久夫

〒920-0377石川県金沢市打木町東1414番地

TEL 076-256-2811

http://phoenix-sol.co.jp/

 

2016年1月号の記事より
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