オビ 企業物語1 (2)

ポジティブリアルエステート株式会社 – 芸人時代の芸名を地で行く〝ポジティブ〟社長、 ただいま不動産業界で奮闘中!!

◆取材:綿抜幹夫

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社名が示すごとく、ポジティブな人物だ。念願だった証券会社に就職したものの満足できなくて芸人の道へ。そこで挫折を味わい、さらに思いがけない多額の借金を背負った……。と、ここまで書けば、かなり悲惨な人生だ。ところが近藤哲也氏はどこまでもポジティブで、どん底な状況でも光明を見いだすパワーを持っていた。不動産業に転身してからはみるみる頭角を現し、ついには2011年に自身で創業。そのポジティブ・シンキングの源泉を探った。

 

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ポジティブリアルエステート株式会社/代表取締役 近藤哲也氏

 

■一流証券マンから芸人へ

 いわゆる日本経済がバブル全盛期時に商業高校生だった男は、もともと関心があった金融や経済を学び、念願の大手証券会社に入社した。だが、当時の証券取引は、日経平均はそこそこいいが出来高がとにかく少ないという状態。商いが少なく証券取引所が午後3時に終われば、証券会社の方でもほぼ仕事が終わる。電話どころか何をすることもなく定時で退社することが日常化していた。

 

 仕事は面白くなく、その反動で面白いことをしたいという思いは日々膨らんでいく。就職して3年が過ぎた頃、その男、近藤氏は子どものころから興味を持っていた『お笑い』の世界に飛び込む。

 

 「面白いというのは、ひとつは自分が楽しむこと。それにプラスして人に喜んでもらって初めて面白いことになる。なおかつそれでいて『面白いな君、すごいな君』と言われたくて芸人を目指したわけです」(近藤氏、以下同)

 

 そのときの芸名は『ポジティブ』。相方と二人で人気のあった番組の前説や、ネタを考えてはコントを披露していた。舞台やテレビドラマ、映画などで芝居も経験した。

 

 「芸名のおかげもあって『お前らネガティブじゃなくていいなぁ』と笑いが起きる、それは何百、何千回、何万回って聞きましたね」

 

 なるほど。だがお笑いの世界もやはり甘くはないし、才能が必要な世界でもある。

 

 「たとえば私が三日三晩寝ずに考えたネタでも、才能のある人はたった1分で思いつく。わかってはいましたが、その差というのは大きく、努力が全て報われる世界でもないことを痛感しました」

 

■使命となった不動産の仕事

 

 〝芽が出なかったら30で辞める〟と、決めていた芸人の道。その通りに30歳ですっぱり芸人を辞めた近藤氏は、一時期、腑抜けになったという。何をしたらいいかわからない、やりたいことが見つからないジレンマに陥った。それでも芸人時代の伝手でアルバイトなどを続けていくうちに、あるイベント会社の社長から『役員になって、一緒に頑張って欲しい』との打診を受けた。その会社のことはわからないなりにも、前向きに捉えることが信条。その誘いに乗った。

 

 ところが実印を押して役員になったタイミングで、その社長は破産してどこかに逃げてしまった。残ったものは一千万円という多額の借金だけ。納得はいかないし、経済的にももの凄く苦しい状態になってしまった。本来なら頭を抱え、それこそ途方に暮れる場面だ。ただ近藤氏はここで、生来持っているポジティブ・シンキングの資質を発現させる。

 

 「神が与えた試練だと感じました。まだ若かったですし、それなりに背負うものもありましたけれど、自分だったら跳ね返せるんじゃないかという気持ちもありました」

 

 そんな前向きな気持ちが功を奏したのか、目の前に不動産業という新たな扉が出現した。それはフリーペーパーに掲載されていた求人広告で、テレフォンアポインターというマンションを売るための電話営業のアルバイト募集だった。時給1400円に惹かれ面接を受け、晴れて採用。

 

 「次の日の午前中に研修、午後からはもう実際に電話営業を始めていましたが、運良く次の日のアポイントが取れた。アポイントが取れてそのまま物件が売れてしまったんです。その会社でそんな早いスピードで売却したのは私が初めてらしく、それで社員にならないかというお話をいただきました」

 

 リーマンショック前で不動産業界も景気が良く、その会社にも資金が潤沢にあった。

 

 「『今、自分はこういう状態です』と正直に言うと、ある程度整理もしていただいて社員になり、その営業の仕事を通じて返済はすべてクリアしました。まわりの人からは『自己破産した方がいい』などといろいろ言われましたけれど、単純に年間300万円返せば3年余で返せる額なので、そんなに難しくないと考えていました。もちろんアルバイト生活だったらば厳しいですけれども(笑い)」

 

 実際はその言葉通り、いやむしろ目標より早く3年もかからずに借金は完済した。自分の債務だったら当たり前のことだが、詐欺まがいな目に遭えば、なかなかプラスには考えられないのが普通の感覚だ。100人いたら100人が尻込みしてしまうような状況で、ポジティブに向き合うことができたのは、いい意味での純粋さと物事から逃げない強さを持ち合わせているからと思われる。

 

 「今もそうですけれども何か問題にぶち当たった時に、あやふやにしないでしっかり向き合うこと、しっかり考えること。乗り切る手立ては絶対にあると思う。その思いは今の仕事でも生きていますし」

 

 こうして出会った不動産業では、収入も得ることができたし、不動産を通じてお客様に喜んでもらえることもできた。同氏にとって使命とまで思わせる仕事になった。

 

ポジティブリアルエステート株式会社

 

■ポジティブこそが、人生の支え

 その後、マンション販売の会社から不動産ファンドを学ぶために一部上場企業に移った近藤氏は、2008年のリーマンショックを経験する。製造業では軒並み大手が苦境に陥ったり、倒れていった時である。

 

 不動産業界でも単純に投資物件だけやファンドだけ、不動産の転売だけという会社はすべて淘汰された。残ったのは、不動産の管理物件を多く持っているとか、リフォーム業も同時に行っているなど、マンパワーのある会社だった。その事実をかみしめ、いつか独立するなら『お客様のヒューマンドキュメントを語れるようなマンパワーのある会社になりたい』と考えるようになった。

 

 そしてついに2011年に、ポジティブリアルエステート株式会社を設立する。

 

 「芸人の時から〝ポジティブ〟という言葉に支えられてきました。『自分はポジティブ』と言って自己主張するのではなくて、仕事を通してお客様にポジティブになっていただきたいというコンセプトが自分の中にあるわけですね。と同時に、お客様にポジティブになっていただこうとする立場の自分自身が、ツッコミではないですけれども『ネガティブやんけ』と言われたら、それは違うと」

 

■人のために尽くせば、きっとハッピー

 

 不動産業界というと、どうも〝マネー=ハッピー〟、お金さえ儲かればあとのことはお構いなしのような偏見を持たれ、一般ユーザーからは手数料目当てと思われがちだ。しかしながらポジティブリアルエステートは、今までの不動産会社のイメージから少しかけ離れている。

 

 たとえば、その戦略は薄利多売。不動産の売買だけでなく、ファンドへの投資なども行う。任意売却物件や借地権のある物件を扱うことが多いのも特徴だ。特に任意売却物件の場合は、不動産価格の下落や建物の老朽化が要因で〝処分してもローンが完済できない〟いわゆる担保割れのケースが多く存在するため、円滑に遂行させるにはそれ相応の知識や能力が必要になる。同社では一軒一軒個宅訪問をして、オーナー様と資産のための話をじっくりし、無償で銀行や金融政策を紹介したりして相談に乗ることもする。

 

 他社が手を付けたがらない物件も進んで扱う。具体的な例をあげると、ある会社の2代目社長から物件売却依頼があった。会社自体の経営が厳しく、いくつもの不動産会社からはすでに断られた状況で、しかも経営の都合上、一般には知られずに売却したいとの二重の足かせが存在した。ポジティブリアルエステートではこの案件を引き受け、一旦同社が買取り、商品化して売却。税理士と相談しながらその会社自体にも別会社を立てさせたり資産開示させるなど、整理しながら利益も確保できる形をとった。大手の不動産会社ではまず採らない解決策だった。

 

 近藤社長は好きな言葉として『人の為に火を灯せば、我が前明らかなるが如し』を挙げる。その意味するところを聞いてみた。

 

 「要は私の場合は不動産業を通して、その人のためにプラス思考で考えてあげてその人の道を明るくできるのであれば、自分にも絶対同じように明るい道が開けると思っている、ということです」

 

 親身になって最初から最後まで面倒を見てくれて感謝している、という声も聞く。それはお客様と接する時に人対人でしっかり膝を突き合わせて話していく、という同社の姿勢からも伺える。そうした実績からか、同社のお客様は紹介が多い。友人からそのまた友人へネットワークは繋がっていく。

 

 「人の繋がりを大切にする。〝マネー=ハッピー〟ではなく〝人のために尽くせば自分もハッピー〟。うちの強みは小回りの利いた仕事の積み重ねにある。その意味からいっても、薄利多売でいいですから、うちみたいな会社は存在しなければいけないと思っています」

 

 そう断言するポジティブ社長は、元芸人の明るさと他人の借財を跳ね返すような男気を武器に、不動産業界で前だけを向いて進んで行く。本誌は今後もその動向に注目し、応援し続けたい。

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プロフィール

 

近藤哲也(こんどう・てつや)氏…

1972年12月1日神戸生まれ。神戸商業高校を卒業後、元・山一証券入社。

お笑い芸人を経て、その後不動産業界に転身。

2011年ポジティブリアルエステート株式会社を創業、代表取締役として現在に至る。

 

ポジティブリアルエステート株式会社

〒153-0063 東京都目黒区目黒1-1-1-301

TEL 03-3794-6200

http://positive-re.com/

賃貸HP:http://reblo.net/positive/

 

◆2016年2・3月号の記事より◆

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