オビ 企業物語1 (2)

株式会社ジョブコム ‐ 新スローガン「働きたい、をあなたらしく。」に込められた思いとは?

◆取材:加藤俊 /文:五十川正紘

オビ インタビュー
ジョブコム様 (8)

 

働く人に寄り添う人材派遣会社を目指して

社員たち全員で考えた新スローガン

新しいコーポレートスローガン「働きたい、をあなたらしく。」を策定したのは、人材派遣会社の株式会社ジョブコム。同社は、年商約40億円の業界中堅企業で、東京、名古屋、福岡に拠点を持ち、主にオフィスワーク系の人材を企業に派遣している。そして、第20期を迎えるのを機に、その第二創業期のスタートと位置づけ、昨年12月にコーポレートスローガンを一新した。

 

企業の節目にあたる年を機に、そのスローガンを一新するというのはよく聞く話だ。ただ、興味を引いたのは、ジョブコムの新スローガンは、経営者サイドが考案したものではなく、働く従業員たち全員で考えたということだ。

同社の山村欣矢常務取締役に、新スローガンに込められた社員たちの想いや、プロセスについてうかがった。

 

「ジョブコムとの出会いをきっかけに、豊かな人生を歩んでもらいたい」

ジョブコム様 山村様山村欣矢 常務取締役 「安心して働ける環境は、働く人にも、企業にも利益をもたらします」

―この新スローガン「働きたい、をあなたらしく。」に込められた、社員の皆さんの想いとは?

 

山村:新スローガンづくりのプロジェクトでは、これからの当社が、社会の中で果たすべき役割を考えました。その役割とはズバリ、求職者の方々が、その人らしく生きられるにようにサポートすることではないかと。

 

働くことによって、人生を豊かにすることができますよね。仕事内容や働き方しだいで、生き方だって変わってくるのではないかと思います。そのような視点から、当社は、求職者の方々にとって、単にお仕事を紹介するだけの人材サービス会社ではなく、その人生の歩みをサポートする存在であるべきだと考えるに至りました。

 

さらに、求職者の方々が、当社のご利用を通して豊かな人生を歩んでいただくには、当社がどうあるべきかを考え、「求職者の方々にしっかりと寄り添って、信頼関係を築き、お悩みがあれば一番に相談される会社になる」というビジョンにたどり着きました。

 

このような「ジョブコムとの出会いをきっかけに、豊かな人生を歩んでもらいたい」という私たちの想いを表現したのが、新スローガン「働きたい、をあなたらしく。」です。

 

―新スローガン「働きたい、をあなたらしく。」は、社員たち全員で考えたそうだが、なぜ、そのような新スローガンづくりをしたのか?

 

そもそも、コーポレートスローガンを昨年12月に一新したのは、第20期に達するタイミングを第二創業期のスタートと位置づける当社が、その新たなスタートを切るためです。この第二創業期を牽引するのは、今働いてもらっている従業員一人ひとりですから、いたって自然な流れで当事者である皆で考えようとなりました。

やはり、社員たちが丸暗記するだけの有名無実なものにしたくなかったので、社員たち一人ひとりが新スローガンづくりに参加するのが一番だと考えました。

 

―新スローガンづくりには、社長を始め、役員は参加しなかったそうだが、具体的には、どのようなプロセスで新スローガンが決まったのか?

 

一昨年から、社員たちが新スローガンづくりのプロジェクトに取組み始めました。プロジェクトでは、社員一人ひとりへのインタビューや、これからの当社の在り方を考えるディスカッションなどを行ってきました。そして、プロジェクトを通して全社員70名から集まった600件の新スローガン案を5案に絞り、その5案について、全社員による最終投票を行いました。

 

なお、社長や私を含めた役員たちは、その最終投票にだけ参加しました。役員が新スローガンについて意見や考えを述べると、社員たちがそれに流されてしまう恐れがあると考え、一握りの役員主体でプロジェクトが進まないように配慮しました。

 

 

「想いや信念が伝われば、成功への道が開ける」

―新スローガンづくりや創業の経緯から、想いや信念を大切にしている会社だということが伝わってくるが、想いや信念は、実務でも役立つものか?

 

むしろ、この業界の実務では、想いや信念を相手に伝えることが何よりも大切だと思います。もともと私は、営業担当社員として当社に中途入社しました。その営業の仕事の中で、想いや信念をしっかりクライアント企業に伝えることができた結果、当社をご信頼いただき、取引につながった、ということが何度もありました。

 

―何か、象徴的なエピソードなどあるか?

 

昔の話ですが、あるクライアント企業の人事部長から、当社の派遣スタッフの遅刻が多いことを理由に、そのスタッフを辞めさせて、別なスタッフを紹介するように依頼を受けたことがありました。しかし、私は、その返答として、その派遣スタッフ本人から仕事への意気込みを聞いていたり、また、派遣したスタッフが安定して働けるように努めるのも当社の義務なので、一回、その派遣スタッフ本人と相談の場を設けさせてくれないかお願いをしました。

 

その時は、先方から、なぜクライアントの要求が受け入れられないのか不満をぶつけられました。しかし、後日、登録スタッフの入替えで解決を図るのではなく、スタッフ一人ひとりのことを細かくケアすることで解決しようとする姿勢をご評価いただきました。

その結果、当社を信頼してもらえるようになり、当社が紹介するスタッフは、派遣ニーズを同業他社に発注することなく当社一社にお任せいただけるようになりました。

 

他にも、新規顧客獲得につながったエピソードもありますよ。十回ぐらい訪問しても、担当者の方にご対応してもえなかった企業がありました。でも、ある日突然、いつものように訪問したところ、先方の担当者の方が会ってくれることになりました。

 

実は、その企業は、既にある業界大手の派遣スタッフを20名ほど使っていたんですが、その大手の人材派遣会社に適度な緊張感を与えるため、他の会社の派遣スタッフも使うことを考えていたそうです。また、私と同じように、同業他社10社ほどが、営業でその企業を訪問していたそうです。

 

先方の担当者が私と会ってくれた理由は、私の訪問回数がダントツで一番だったということです。実は、先方の担当者は、各社の訪問回数を記録していたんです。そして、その日にさっそくスタッフ2名の派遣を依頼され、最終的には、当社のスタッフを18名派遣することになり、完全に当社が派遣元のメインになりました。これは、私の熱意を先方の担当者に伝えることができたゆえの成果だと思います。

 

このように、私たちの業界では、しっかりとした想いや信念を持ち、それが相手にきちんと伝われば、成功への道が開けてくると思います。そして、想いや信念を相手に伝えるヒューマンスキルが成功を左右するというのは、他の業界にはない、この業界ならではの面白さでしょう。

 

オビ ヒューマンドキュメント

ジョブコム スローガン

 

創業社長の信念から生まれた人材派遣会社

山村氏によると、ジョブコムは、創業者の古田年季氏(現社長)が抱く「理想をもとに生まれた人材派遣会社」だと言う。ここで、ジョブコムの物語に触れてみたい。

創業者の古田氏は、もともと某派遣大手の創業メンバーの一人。そこで長いこと役員兼支社長を務めていたそうだ。その大手企業は業界としては後発ながら短期間で急成長を遂げたという有名企業。古田氏が勤めていたのも、ちょうどその急成長期にあたる。ただ、旧成長期の歪みともいうべきか、当時の古田氏のもとには、組織の急成長に伴い、企業に派遣されるスタッフや、社員たちからそれまでになかったような不満の声や相談が相次ぐようになったという。

 

そこで古田氏が感じたのは、人材サービスで最優先すべきなのは、規模拡大や利益追求ではないということだったという。そして、古田氏は、人材派遣会社が質の高いサービスを提供するには、企業に派遣されるスタッフや社員が安心して働ける環境があってこそとの思いを実現するべく、その大手人材派遣会社を辞し、平成8年、自らジョブコムを起業したという。

 

起業してからは東海地区を中心にジョブコムは業界に確かな地位を確立。今日では関東圏、九州圏にも進出し、事務スタッフの派遣分野に於いて、月に1,000人以上にも及ぶスタッフを多くの日本企業に派遣する企業になった。また古田氏が込めた「スタッフや従業員を大切にする」という理念を地で行くが如く、先般のオリコン社の企業調査では、「福利厚生」の充実度、国内3位、「社内研修」の充実度、国内5位に選ばれてもいる。

 

安心して働ける環境にこだわる信念から生まれた会社らしく、仕事以外で上司に対して不要な気遣いを排除するため、実際に社内では年賀状や暑中見舞いなどの挨拶状や、お中元、お歳暮、バレンタインデーなどの贈り物のやりとりを禁止している。「社内では、誰でも正しいと思ったことを発言できる職場づくりをする一環として」と山村氏は語る。

 

求職者のニーズもしっかり捉える

最後に、山村氏は、「これからの人材派遣会社は、企業のニーズだけではなく、求職者のニーズにも敏感になる必要があります」と語る。

 

人々の働き方に対する意識が変わり、求職者は、自分らしい生き方をするには、どのような仕事がよいのか、また、どのような働き方がよいのか、という基準で仕事を選ぶようになった。つまり、“ワークライフバランス”を重視するようになった。

 

そして、社会全体でワークライフバランスを推進する取組みが活発に行われている。企業では、在宅勤務制度の導入が進み、また、仕事の進め方や勤務時間帯を個人の裁量で決められる「裁量労働制」を導入する企業も増えている。

 

また、昨年、企業の子育て支援をより促す目的で「次世代育成支援対策推進法」の改正が行われたり、派遣労働者のさらなる雇用安定とキャリア形成を促す目的で「労働者派遣法」の改正が行われるなど、ワークライフバランス推進のための法整備も進められている。

 

今後、ワークライフバランス推進の動きはさらに活発化するだろう。そうなると、人材サービス会社も、ワークライフバランスを重視する求職者のニーズをしっかり捉え、その推進に取り組むことが求められる。

 

そのような状況を踏まえると、ジョブコムの新スローガン「働きたい、をあなたらしく。」は、「ワークライフバランス推進を通して、働く人と企業の間にWIN-WINの関係をもたらす」という企業姿勢を表す言葉であると同時に、ワークライフバランスを重視する求職者へのメッセージでもあると受け取れる。

 

 

多様化する企業のニーズに対応

近年は、人材サービス会社に対する企業のニーズが多様化し続けていると感じている。ジョブコムでも採用代行サービスを物流企業のニーズをきっかけに提供を始めていたりする。

 

物流センターなど、物流の現場を支えているのは、大勢のアルバイトスタッフたちだ。現場によっては、アルバイトスタッフが1,000名近くにおよび、そうなると、毎月辞めるアルバイトスタッフも数十名におよぶため、その穴を埋めるべく、アルバイトスタッフを募集・採用し続ける必要がある。

 

そうした現場では、アルバイトの採用業務が大きな負担のため、アルバイトの採用業務はアウトソーシングし、本業に集中したいというニーズが生まれる。そして、ジョブコムは、このようなニーズを捉え、求人広告の出稿、応募受付、面接スケジュール設定、合否連絡などの採用業務を代行するサービスも提供している。

人材派遣企業も規制強化など国の政策に左右されながら各社の競争が激化していくなかで、各社差別化を打ち出すべく様々な取り組みを行っている。ジョブコムも第二創業期にあたり、今後どういった展開を行っていくのか。ますます期待がかかる。

 

オビ ヒューマンドキュメント

山村欣矢氏(やまむら・きんや)…1973年大阪府生まれ。人材派遣会社の株式会社ジョブコムに入社。現在常務取締役。つなぐナビを運営する株式会社リンクアップドリームを設立。代表取締役社長として現在に至る。

 

株式会社ジョブコム

https://jobcom.co.jp/

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