ƒvƒŠƒ“ƒg学校と企業を行き来しながら、座学と実務訓練を長期に行う、ドイツ生まれの「デュアルシステム」が日本の専門高校に導入されてから12年。

もともと高卒者の就職率向上と、中小企業の人材不足を解消する目的で始まったが、いまやその効果も活用法も多様化し、地域全体を巻き込んだまちおこしにも活用されている。

そこで各地で定着しはじめた、デュアルシステムの活用の実際とポイントについて実例を挙げながら紹介していく。

 

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デュアルシステムで採用ミスマッチを解消!

◎都立葛西工業高等学校編/東京セントラルエアコン株式会社

 

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入社後と全く同じ環境を体験できる実習とは?

PENTAX DIGITAL CAMERA東京セントラルエアコン株式会社は、正社員36名、準社員15名を擁する空調・給排水設備の設計施工会社だ。主に店舗、オフィス、公共施設などで利用されている業務用エアコン設備や、各種水回り設備の設計・施工・メンテナンスなどを手掛けている。

同社では、本年度と昨年度に1名ずつ、同社での実習を経験した学生が新卒入社し、現在は、3年生1名が実習中だ。同社代表取締役の坂根尚樹氏は、「実習生には、実際に入社してもらった場合と全く同じ環境を体験してもらいます」と語る。

具体的な実習生の環境や、環境を体験させる狙いについて坂根氏に伺った。

 

 

─実習生は、どのような仕事に携わるのか?

 

DS_tokyo_c_aircon_menteメンテナンス作業の様子

業務用エアコン設備のメンテナンス業務です。メンテナンスの場合、通常、スタッフ2名一組でお客さまのところにお伺いし、作業をします。実習生には、そのスタッフたちに同行してもらいます。

なお、当社では、高卒の新卒社員には、入社後の数年間はメンテナンスの仕事をしてもらい、その後、本人の希望があれば、設計、施工などの他の業務担当になることもできます。

 

─そのメンテナンスの仕事の中でも、一番、経験やテクニックを要すところは?

 

メンテナンスでは、最初に空調設備が正常に作動・機能しているかチェックして、もし異常や故障があれば、その原因を突き止めます。この空調設備の診断が、一番経験が必要で、かつ、一番ポイントになるところです。

もし、異常や故障の原因の一部しか突き止められなかったり、突き止めたはずの異常や故障の原因が間違っていると、適切な修理ができません。そのため、メンテナンスでは、最初の診断をしっかり正確に行うことが大切です。

また、しっかり正確に診断できるようになるには、機械関連の知識が多少ある人でも、最低5年ぐらいは現場経験が必要だと思います。

 

─一人前になるのに、それだけの経験が必要だと、半年間の実習だけでは即戦力レベルまで実習生を育成できないのでは?

 

DS_tokyo_c_aircon_genbakanri02現場管理の様子

確かに、実習期間中だけで即戦力になるレベルまで育成することはできません。ただ、当社は、即戦力人材を確保するためではなく、新卒入社の社員と当社、双方のミスマッチを防ぐためにデュアルシステムに参加しています。

実習生に期待しているのは、入社したらすぐに一人前に活躍してもらうことではなく、実際に入社した場合に担当する仕事や、自分が働くことになる職場の雰囲気・メンバーを知ってもらい、また、そうしたことに慣れてもらうことです。

そのため、実習生が当社に入社した場合は、引き続き、実習時に一緒に現場を回っていたスタッフと共にメンテナンス業務を担当してもらいます。

新卒の若手社員が辞めてしまう場合、その原因は、入社後の仕事内容よりも、人間関係の悩みによるところが大きいと思いますので、実習時に人間関係も含めて本当にリアルな仕事環境を体験できれば、採用ミスマッチの解消につながると思います。

 

 

実習に来る生徒さんは挨拶、身だしなみがきちんとできている

─技術的な部分以外では、実習生でもしっかりできていると感じるところはあるか?

 

挨拶や身だしなみに関しては、きちんとできていると感じます。葛西工業高校さんの方で、普段からしっかりご指導されているのでしょう。実習生とはいえ、当社の一員としてお客さまのところに出向いてもらいますので、挨拶や身だしなみは、とても重要です。

仕事の技術面も重要ですが、挨拶や身だしなみは、すべての仕事の基本と考えていますので、当社では、現場に限らず、社内全体で重要視しています。

 

─受け入れたい実習生の人数や特徴など、細かい要望を学校に伝えることはできるのか?

 

DS_tokyo_c_aircon_genbakanri01現場管理の様子

当社に関しては、そのような細かい要望を学校にお願いすることはありません。そうではなく、当社での実習を希望される生徒さんたちを受け入れています。ただ、実習時の仕事内容は、事前にきちんと学校に伝えています。ですから、当社での実習内容は、葛西工業高校さん経由でデュアルシステムに参加される生徒さんたちにも事前に伝わっているはずです。

なお、当社では、3年生の実習生については、年1~2名、受け入れています。当社の組織規模を考えると、半年間の長期に渡り、責任を持ってしっかりと指導・育成できる人数としては、それぐらいが適切だと考えています。

 

 

採用ミスマッチのコストを考えたら、受け入れコストは全然安い

─デュアルシステムの実習生の受入れ後にかかるコストは、企業側の負担だ。また、実習生が必ず実習先企業に入社するわけではない。その現状の仕組みについて、どう考えるか?

 

確かに、ヘルメットや安全帯などの装備の費用を始め、実習生の受入れ後にかかるコストは当社の負担です。ただ、それは年間で数万円程度の負担です。

先程もお話しました通り、当社がデュアルシステムに参加しているのは、新卒の新入社員と当社、相互のミスマッチを回避するためです。

例えば、新卒入社の若手社員が、当社とのミスマッチが理由で辞めてしまうと、それまでの指導・育成にかかった数百万円の費用が無駄になってしまいます。

デュアルシステムが、多額の損失になる採用ミスマッチの回避につながることを考えれば、実習生の受入れ後にかかるコストは、気にするところではありません。

また、入社に至らなかった実習生の方がいても、当社の仕事を実際に体験し、職場の雰囲気やメンバーのことを分かった上でのことなので、大変残念ではありますが、それは、採用ミスマッチの回避そのものだと思います。

 

─一人の若手社員が辞めてしまうだけで、それだけ多額の損失になるのは意外だが?

 

新卒入社の社員に関しては、入社後数年間は、実質的に教育期間だと思っています。ですから、その期間の給与も、将来、一人前になった時に大いに活躍してもらうための指導・育成費用だと捉えています。

そして、採用時にかかった費用なども含めると、やはり、一人の若手社員が辞めてしまうだけで、数百万円が無駄になってしまうと言えます。

 

─葛西工業高校の場合、3年次における企業での実習ペース・期間は、週1日、5月から11月までの半年間だが、この現状の実習スケジュールについて、どう思うか?

 

実習スケジュールそのものについては特に問題も不満もありませんが、生徒さんたちが、できるだけ多くの企業で実習できるようにして、もっと幅広く将来を考えられるようにしてもよいと思います。

例えば、3年生の場合、実習日を午前・午後の2部制にして、午前は当社で、午後は他社で…、あるいは、実習日を週2日にして、うち1日は当社で、もう1日は他社で…ということでもよいと思っています。

当社でぜひ実習したいとご希望いただくのは、もちろん嬉しいことですが、当社に少しでも興味がある生徒さんがいれば、他社との同時実習でも構わないので、私たちの仕事も体験していただく機会を提供できればと思っています。

 

オビ 特集

◉プロフィール/坂根尚樹(さかね・なおき)氏

1972年生まれ。京都府出身。早稲田大学理工学部機械工学科卒業、同大学大学院修士課程修了後、空調設備の設計施工を手掛ける新菱冷熱工業株式会社に入社し、5年間に渡り施工・営業・経理などを担当。その後、東京セントラルエアコン株式会社に入社し、2015年、同代表取締役社長に就任。

 

◉東京セントラルエアコン株式会社

〒132-0031 東京都江戸川区松島3-29-12

TEL 03-3655-5671

http://www.tc-aircon.co.jp

 

 

 

 

◆2016年7月号の記事より◆

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