株式会社興正 あくまでも資源を回収するという意識で社会貢献を

◆取材:加藤俊 /文:渡辺友樹

 

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株式会社 興正/専務取締役副社長 飯塚憲貴氏

 

株式会社興正は、不要になった家電製品、パソコン、AV機器など電化製品の引き取り、買い取りを行っている。不用品を単なるゴミとして扱い処理・処分する業者とは大きく異なり、また同時にリサイクルショップにも無い同社の特徴として、多少の故障品でも買い取り可能である点が挙げられるだろう。今回は、不用品を〝ゴミ〟ではなく〝資源〟と捉えることで業界の常識を打ち破り、エコや経費削減の側面から社会貢献を目指す同社の飯塚副社長に話を聞いた。

 

 

先代による創業、そして飯塚氏へ。
紆余曲折を経て辿り着いた〝資源回収業〟という現在地

創業者である先代社長は、少年時代から経営に興味を持つ人物だったという。計画的に様々な職種を経験したのち株式会社興正を起業し、軽トラックを使った利益率の高いビジネスを模索する中で焼き芋、竹竿、桃など様々な商品の販売を手がけてきたという。

 

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商材を変えながら試行錯誤を重ねるうち、捨てられているものを回収してお金になることに着目したのが1996年から1997年頃のこと。1999年には、家電品やエアコン、自動車用バッテリーなどの買い取り事業を始めた。集めた不用品を修理して再販するビジネスだ。型落ち品など国内では売れないものでも、外国では高く売れる。はじめは中国が主な市場だったが、やがてフィリピンなど東南アジアや、アフリカのナイジェリアなどへと幅広く展開していった。ドバイや香港では、裕福な投資家たちが同社から大量に買い取り、それを彼らのビジネスとして修理・販売するというモデルも成り立っていたという。

 

「肌での実感として〝日本製神話〟は健在です」と飯塚氏は語る。

しかし、2008年、北京オリンピックの際の現地での輸入品の締め出しや、国内での家電リサイクル法など法規制の強化、またリーマンショックによる世界的な不況などの要因が同時期に重なり、同社は経営危機に陥ってしまう。そうした状況下で何か新しいことをできないかと始めたのが、現在まで行っている片付け代行や遺品整理、また不用品回収による企業の経費削減などの事業だ。

 

 

〝ゴミ〟〝廃品〟回収と呼ばれたくない!
資源を有効活用しているという意識。

自分たちの事業に対して「廃品、不用品、産廃、ゴミなどといった言葉は使いたくない」と飯塚氏は語る。今回の取材の中で、ひときわ口調に熱が入ったひとコマだ。

 

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「決してゴミではないのだから、〝資源〟回収業者であると名乗りたい。だれ一人として必要としていないものがゴミなのであれば、我々が回収しているものはそうではなく、資源なのです。あくまでも資源の引き取りや買い取りを行っているのであって、〝処理〟や〝処分〟をするのではない。要らないものでも有効活用できることを世の中に伝えたい」熱意をこめてこう続けてくれた。

 

同社では、取扱品目の範囲内であれば、どんなものでも、どんな状態でも引き取っている。同様のことを謳っていても、いざ依頼してみると断られてしまう不用品回収業者も多い中で、これは確かな強みであると言えよう。

 

 

業界への不安や不信感をどうするか。
騙されない業者選びとは?

同社のような高い意識を持った企業も存在する一方で、業界には問題点もある。不当に高額な料金の請求や、引き取ったハードディスクのデータ消去を正確に行わないなど、不用品回収にはトラブルが多い現状は否定できないだろう。

 

確かに、郵便ポストには頻繁にこうした業者のビラが投げ込まれている。しかし、各業者の比較や、信頼できるかどうかの判断は難しいのが実際のところだ。

 

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そこで、信頼できる業者選びのコツを尋ねてみると、古物商・産業廃棄物・一般廃棄物など関連する資格や、会社所在地、電話番号などの情報をビラやチラシ、ホームページ等に明記しているかどうかに注目してみて欲しいと教えてくれた。もっとも、住所も山の中や、貸しオフィスのようなところを載せている場合は要注意で、きちんとした倉庫を持ち、事務所を構えている業者を選んで欲しいとのことだ。また、実際には1~2人の少人数でありながら、コールセンターと表記するなどスタッフが多そうな雰囲気を出し、大きな会社を装っているケースもあるという。

 

また、遺品整理やいわゆるゴミ屋敷の整理の様子などがテレビやメディアでも盛んに取り上げられているが、画面の中の業者が数十万~数百万円などと話している案件も、同社なら三分の一の価格で行えるようなケースもあるというから驚きだ。業界全体として適正な価格がいまだ確立・浸透していないことの表れだろう。

 

飯塚氏のおすすめは、見積もりを複数の業者に依頼してみること。5、6社の見積もりを見て、金額と作業内容をよく吟味して判断して欲しいと語る。

 

「不用品を大量に手放す局面や大掛かりな片付けは、誰にでもそう何度もあるものではありません。人生の大きなタイミングに一度だけという人も多いでしょう。今まで自分や家族が長年、共に暮らしてきたものを引き取ってもらうのだから、弊社を利用するかどうかは別として、しっかり業者を選んで欲しい。また、引き取ったものを燃やしたり、埋め立てたりして単に処分するのか、それとも資源として再利用、再使用するのかといった角度からも比較してみてください」と飯塚氏は語る。

 

なお、環境省のホームページには、家電リサイクル法の資格を持たない業者に引き取りを依頼してしまった場合にどうなるかという事例や、業者の見分け方も案内されているという。不用品回収の際には、一度目を通しておきたい。

 

 

他者の役に立ちたい。またエコの観点からも。
社会貢献への想いは強い。

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将来のビジョンや夢の部分について話を聞いた。法整備が進めば、自ずと不用品を手放すために必要な費用は高くなっていく。経済的に余裕がない状況にあれば、不法投棄など違法な行為に走ってしまいがちだ。しかし、同社のような引取業者なら、こうした困っている個人や法人の力になることができる。資源の再利用はエコにも繋がる。同社が行っているような再利用の仕組みが周知され、広く利用されるようになれば、国内で資源を回していくことができる。ひいては、我が国の経済の安定に繋がる。

 

「自分たちの存在がきっかけとなって、そんな流れを作りたい。凝り固まった業界に楔を打ち込みたいんです」そう語る飯塚氏の表情は、社会貢献への情熱に溢れている。

 

実際に、これまでに同社での買い取り事業が生活に困窮している人の社会復帰への第一歩となった例も、一度や二度ではないという。同社自体が身を以て紆余曲折を味わってきたためか、飯塚氏の抱く弱者や社会の役に立ちたいという想いの強さが印象に残る取材だった。

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●プロフィール
いいづか・のりたか氏…1974年生まれ。東京都出身。東海大学を卒業後、他社への就職を経て、2002年に株式会社興正に入社。専務取締役副社長として現在に至る。

 

●株式会社 興正

〒133-0061 東京都江戸川区篠崎町6-6-21
TEL 03-3677-8595
http://www.kosho-asia.co.jp

 

 

町工場・中小企業の応援団 BigLife21 2014年1月号の記事より

町工場・中小企業の応援団 BigLife21 2014年1月号の記事より