支えとなったのは手作業を大事にする職人気質

住宅などの建築後やリフォーム後の引渡し清掃および定期清掃、ユニットバスの組立、建築塗装、グリスフィルターのレンタルと、4つの業務を大きな柱として建築業界の一端を担う住美産業株式会社

 

工藤芳蔵氏が一代で作り上げ、年商5億円を売り上げるまでに至った、その成長の足跡と信念を伺った。

 

 

「成り行き」で、建築清掃スタート?

中学卒業後上京した工藤芳蔵氏が、最初に就職したのは炭問屋だった。その後、手で仕事をすることが性に合って職人として働いていたが、「会社がどうも怪しくなってきて、ダメになる前に自分でやろう」と決意。

 

住美産業株式会社 会長 工藤芳蔵氏

 

「計画も何もなかったような状況でしたね。ただ、ちょうど建売住宅が多くなってきた時で、建築清掃を請け負うことにしました。まぁ、建築会社は掃除をすることがなかったので、工事の後にきれいに掃除してお客様に渡す。そういう状況が生まれてきていたので、清掃を商売にしようと独立したのです。手仕事だったのも良かった」と大らかに笑いながら振り返った。時は1967年、21歳の若き工藤氏がいた。

車を買って移動しながら仕事するようになって7 、8年。先見の明があったのか、仕事は順調に増えつつあったが、「なかなか採算性が取れないのと車を止める場所がないなどのいろいろな問題もあって、一時は断念しようとしたこともありました」

 

 

ユニットバスで、建築ラッシュの波に乗る

建築清掃だけでは企業として伸び悩む中、工藤氏が目をつけたのが、ユニットバスの設置作業だ。

 

「1985年当時はバブル景気が始まって、建売住宅はまさに建築ラッシュ。ユニットバスの組み立ての仕事は、職人が足りない状況がしばらく続きましたが、いい加減な仕事が多かったのです」

 

そこでユニットバスの組み立てに参入し、丁寧で正確な施工品質とマナーの向上に努めて、建築会社からもユニットバス販売会社からも信頼を得るようになった。そこからは住宅関連の事業を拡大させていく。増改築工事に始まって、屋根や外装の建築塗装や防水工事などなど。清掃部門も建築後の引渡し清掃だけでなく、ハウスクリーニングなどの定期清掃、賃貸アパート・マンション入退室後のクリーニングへと幅が広がって、企業としては飛躍的な成長を遂げた。

 

そんな中、工藤氏には胸に刻むことがあった。「昔の建築現場では“怪我と弁当は自分持ち”という不文律がありまして、今では『怪我をすると現場の管理が悪いとか、会社の責任だ』などと言いますけれど、私はそれでも怪我と弁当は自分持ちだと思います」

そこには『手作業をする職人として、自分で気をつけ責任を持って、きちっとした仕事をしなければならない』という、職人の矜持が伺えた。

 

 

グリスフィルターのレンタルで、環境改善に貢献

1995年からスタートさせたレンタル事業部は、工藤氏が知り合いから引き継いて欲しいと頼まれたことがきっかけで生まれた。主にグリスフィルターという商品を扱うもので、定期的に交換をしたりメンテナンスを行う。

グリスフィルターは飲食店などの厨房に必ずある排気設備の中で、調理場にあるフードから誘導された調理から出る脂を含んだ湯気や煙の、脂のみをキャッチしてその先にあるダクトなどが油まみれになるのを防ぎ、しいては火災を未然に防止する役目を持つ重要な商品だ。

 

フィルターの写真

 

「もともとモノを扱う仕事をしたいなと、思っていたところだったので、その会社を買い取りました。ただ引き継ぐのではなく、商品の性能を改良しました」

グリスフィルターを扱うことの課題は、しっかり油分を捕まえダクト内に入れないこと。そのために従来のステンレス製のものではく、アルミ繊維を採用した。「アルミ製のものはぶつぶつがあって表面積が広い、ステンレスよりも油を取る率も多い。それに軽いこともメリットの一つです」

 

他社製品にはセラミック製のフィルターもあったが、飲食店がより性能の良いものを求めていたことも上手く作用した。「何しろセラミック製は壊れたら廃棄するしかないけれど、アルミは使って古くなったものは溶かして再生ができる。うちはアルミで勝負すると決めました」

結果的に環境にも貢献することになった。またアルミ製フィルターを生産しているところは一ヶ所しかなく、住美産業とある一部でしか扱っていないため、同業他社の中でも優位に立っている。「レンタル事業では、全国展開しているレンタル事業者と提携というかお願いをしている経緯があって、全国展開ができています」

 

現在では大手コンビニのフランチャイズ店や飲食チェーン店、都内の大手ホテルなど多くの飲食の現場で、住美産業のグリスフィルターが快適な厨房環境を提供しているのだ。

 

さて、先にグリスフィルターで環境問題に貢献していることは述べたが、そのこだわりはほかにもある。脱脂・除菌・消臭そして環境に優しい業務用高性能洗剤『酸素系除菌マルチクリーナー・住洗』の販売がそれだ。天然ヤシから作った界面活性剤のみを使い環境への影響を軽減でき、漂白や除菌の時に塩素特有の匂いがない高性能洗剤で、厨房設備・調理器具ほかに店内外のクリーニングに使用できる。

ほかにも『グリストラップ専用洗剤・グット』を販売するなど、“少しでも飲食店の役に立ちたい”という思いも見えてくる。

 

フィルターの写真

 

手作業の良さがわかる職人の育成へ

創業してから40年余り、工藤氏がこだわってきたのは手作業にこだわる職人気質だ。「職人は手間仕事、モノを売るのではなくて手間を売る仕事」とも断言する。それはどの事業でも人の手で作業する職人たちが、住美産業の根幹だからだ。

ところが近年は、体を動かさずに頭で考えて生計を立てようとする若手が増えている。「日本の若者は手作業に対してアレルギー傾向があって、就職する人も少なくなりましたよね」

 

当然、住美産業でも若い人が入ってくることが少なくなり、従業員の平均年齢も高くなった。そこで今は縁があって清掃に従事している中国人からの広がりに期待をしている。「この人の評判がとても良くて、8月からは中国語のできる従業員がもう一人入ります。その人がまず技術を覚える、それと並行して中国人の若い人に教えていくと、中国人が中国人に教える形になりますね」

中国人などの外国人の場合、ビザなどの問題で長期の雇用は望むことが難しいのではないか、との問いかけに工藤氏は

 

「日本にずっといられるような状況である人が好ましいので、そういう人材を探しています」と明確な答え。企業が存続するためには中国人やベトナム人なインドネシア人などを受け入れて、技術を習得してもらう方向のようだ。“令和の時代は外国人の職人を育てていく”そんな覚悟が見て取れた。

 

工藤 芳蔵(くどう よしぞう)1946年5月25日 岩手県生まれ
中学卒業後、上京し炭問屋に就職。1978年に建築清掃、養生工事開業。1984年有限会社住美産業設立。1985年ユニットバス施工、1988年増改築工事開始。1993年住美産業株式会社に名称改。塗装、防水工事開始。1995年グリスフィルターの販売、およびレンタル業開始。2005年環境事業部門を開設。2010年代表取締役社長に実弟の工藤芳信氏が就任。それと同時に会長職に就く。

 

住美産業株式会社

〒351-0102埼玉県和光市諏訪1-11

主な事業:美装事業部/住設事業部/塗装事業部/レンタル事業部

http://www.jyubi.co.jp/