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株式会社 藤波タオルサービス 日本が誇るおもてなし文化、「おしぼり」に新たな風を

◆取材:綿抜幹夫 /文:渡辺友樹

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藤波タオルサービス (5)株式会社 藤波タオルサービス/代表取締役社長 藤波克之氏(Katsuyuki Fujinami)…1974年9月11日生まれ。法政大学社会学部応用経済学科卒。NTTグループ勤務を経て2004年に家業である株式会社藤波タオルサービスへ入社し、2009年に代表取締役専務、2013年9月より現職。

アロマおしぼり・抗ウイルスおしぼり 高付加価値商品で市場を開拓

飲食店で、着席するとまず供される「おしぼり」。手や、時には顔まで(失礼!)拭いてさっぱりし、ほっと一息つく瞬間はたまらないものだ。あのスーパースター、マドンナが来日時、おしぼりと温水洗浄便座に感動したという話もある。

そのおしぼりレンタル業界に要注目の企業がある。「アロマおしぼり」や「抗ウイルスおしぼり」といった高付加価値な新商品を生み出し、新たな市場を開拓し続ける株式会社藤波タオルサービスだ。東京都は国立市に同社を訪ね、「おしぼりは日本が誇るおもてなし文化」と語る藤波克之社長に会った。

 

「新しい風を吹かせてくれ」といわれ入社

藤波タオルサービスは、現社長の父である先代が1967年に創業した会社だ。1974年生まれの現社長、藤波克之氏は二代目で、法政大学社会学部を卒業後、NTTグループ企業への就職を経て、2004年に同社に入社する。2009年に専務、2013年9月には社長に就任したが、肩書きに関わらず、実質的には入社時から二代目社長の立場だった。そんな同氏が入社時に要求されたのは、「新しい風を吹かせてくれ」ということだったという。

藤波タオルサービス (2)最高級の業務用おしぼり「匠」

得意先を回っておしぼりを配達しながら使用済みのものを回収、洗濯と包装をしてまた配達するという地域密着型のルート営業が主流のおしぼりレンタルは、現在でおよそ50年の業界。10年前の同氏入社時には既に斜陽といってよく、マーケットが縮小する中、昔ながらのあり方では先が見えている状態だった。とはいえ、地元の決まった客先を巡回していれば成り立ってしまう商売であることもまた事実で、そのためファミリー経営の企業が多いという特徴もある業界だ。

「うちの会社はアットホームで、みんなが助けあう、とてもいい会社です。入社前からそう思っていましたし、入社して改めて、やっぱりいい会社だなと実感しました。ただ、社全体として、不器用でのんびりしている。そこを変えるのが私の役目でした」

 

 

2006年、「アロマおしぼり」発売

藤波タオルサービス (3)日本の伝統文化であるおしぼりを扱う同社。イメージカラーは黒と赤で、雅さを連想させる色である。社屋の外観をはじめ、制服や業務用洗濯機の色に至るまで、これらの色は随所で使用されている。

先代社長である父が病に倒れたことをきっかけに、家業を承継する決心をしたという同氏だが、「そうなるまで、継ぐつもりはありませんでした」と語る。自身が描いていたキャリアプランは、経営コンサルタントへの転身。この夢を叶えるべく、会社勤めのかたわら夜間学校に通っていたそうだが、結果的に、同氏の経営コンサルタント的視点が同社に還元される形となった。

「新しい風」を吹かせるには、従来の業態のまま、既存のマーケットの中でシェア拡大を狙うのではなく、商品やサービスに付加価値をつけ、新たな市場を開拓していくことが必要だと考えたのだ。

 

そこから生まれたのが、2006年に発売を開始した「アロマおしぼり」だ。自社でアロマ芳香剤を開発し、香りや色に豊富なバリエーションを取り揃えた。この新商品に、ショールームやカーディーラー、化粧品業界やエステサロンなど、顧客単価が高く、サービスの質を重視する業界が飛びついた。このほか、目を酷使するIT企業のオフィスに福利厚生の一環として導入されるなど、「アロマおしぼり」によって、外食産業が大部分を占めていたレンタルおしぼりの市場に広大なブルーオーシャンが拓けることとなった。

 

 

2013年、「抗ウイルスおしぼり」で特許取得

藤波タオルサービス (4)同社で働く社員の皆さん。藤波社長を囲んで。笑顔からはアットホームな雰囲気が伝わってくる。

同氏の改革は「アロマおしぼり」だけにとどまらない。次に業界内外をあっと言わせたのは、「抗ウイルスおしぼり」の開発だ。慶大・東工大発ベンチャー、そして同社の連携から生み出された、画期的な「VB(=ウイルスブロック)」の技術。これを利用した「抗ウイルスおしぼり」は、病院や介護施設をはじめとする福祉や教育の現場など、衛生を重視する業界のニーズを直撃。介護や福祉の現場での特殊な使用状況を考え紙製の使い捨ておしぼりも開発、専用の製造ラインを整備し、生産を軌道に乗せた。現在では、抗ウイルス技術の適用商品を拡大し、アロマおしぼりをはじめ同社の商品はすべて抗ウイルスおしぼりとなっている。

 

このVB技術は2013年に特許を取得し、新たにVB技術に関する子会社を設立。おしぼりに限らずさまざまな形でこの技術を活かすべく、他業界も含めたさまざまな企業と連携し、新商品の研究開発を進めている。

 

 

新しい風を吹かせ続ける新社長

藤波タオルサービス (6)包装作業の様子。専用の機械でおしぼりを巻き、おなじみの形へ。

このほか、地域密着型ビジネスの弱点を補うためのオンライン通販の活用や、五感へのアピールを重視し自社内にデザインスタジオを設け、商品のみならず社名ロゴからチラシ、ウェブサイトにいたるまで同社に関するすべてのデザインと宣伝、広報を自分たちで行うなど、同氏の行った経営改革は枚挙に暇がない。

 

本社・また昨年落成した新工場は、工場内の機械までをも含めた建物全体が同社のイメージカラーである赤と黒にペイントされている。こうして社屋や工場のビジュアルデザインにまでこだわり、随時見学を受け入れているのも、おしぼり業界や同社のイメージアップのためだ。

 

雇用に関しても、女性の積極的な採用、学生インターンシップの幅広い受け入れ、さらには障害者採用にも、自立支援センターを設立し本腰を入れて取り組んでいる。

これから確実に訪れる人口減に向けて、労働力を若い男性に頼る体質からいち早く脱却しようとしているのだ。

 

 

おしぼり業界への根強い偏見。悔しさをバネに

藤波タオルサービス (7)日本に数台しか無い洗濯機。通常、業務用の洗濯機といえばステンレスの色(シルバー)か青色というのが一般的だというが、同社では藤波社長のこだわりで黒く塗装されている。

「私には必要以上にお金を稼ぎたいという欲もありません。単に仕事が、この会社が好きなんです」と語る同氏。同社、ひいてはおしぼり業界へのこれほどまでの熱意はどこから来るのだろうか。

 

「こどもの頃、父が営んでいたこの会社や工場が遊び場でした。番頭さんをはじめ社員のみんなも私をかわいがってくれ、大好きな場所だったんです。そのころから現在まで通して言えることですが、こんなに人間関係が良好で、雰囲気の良い会社はあまりないと思います。また、学生時代には、当社でおしぼり配達員のアルバイトをしましたが、行く先々の飲食店の方たちも、にいちゃん、にいちゃん、と良くしてくれ、時にはごはんを食べさせてくれることもありました。そんな触れ合いはとても心地良く、いい仕事だなとしみじみ感じたのを覚えています」

 

しかし、おしぼり業界に対する世間の目はそうではなかった。NTTグループ企業の社員としての安定を捨て家業を継いだとき、「なんでおしぼり屋なんかに」と言われることも多かったという。さらに、「その筋の世界」や「ピンク産業」に近い業界、というイメージも強く、実際、50年前、業界の黎明期は「その筋の組織」が牛耳る商売だったのは事実で、先代社長は自分の会社や社員、家族がそういった目でみられないために、国立界隈の「その筋の組織」と交渉し、おしぼりの商圏を買い取ったのだという。

こうした父の想いや、自分が肌で感じていた会社の雰囲気の良さ、顧客との触れ合いなどのやりがいに対して、世間のイメージはまったく逆のもので、数十年を経てもそれは変わっていない。この不本意な現状が、同氏の原動力になっている。

 

藤波タオルサービス (1)「NPO法人東京自立支援センター 就労継続支援A型事業所ともにー」(緑色の制服は障害者雇用により採用されたスタッフ)。おしぼりの洗濯・包装作業といった作業を通して、多くの障害者の自立を支援している。

「小さいころ、両親が会社の経営を巡って、竹ぼうきを持ちだしてケンカするのを見たことがあります。今にして思えば、経営が苦しい時期も多かったんだろうと思います。そして10年前、胃潰瘍で倒れた父の姿をみて、これは自分がなんとかしなければいけないと、会社を継ぐ決心をしました。幸い、父は回復し、現在も母ともども当社で働いていますが、その父や母、社員さんたちが経営に苦労しながら、ときにはその筋の組織とわたり合ってまで守ってきた会社や工場のことを思うと、いまだに残る偏見が悔しくてたまらない。ビジネスの勉強会に行っても、なんだ、おしぼり屋か、という目で見られるなど、今でもバカにされることは多々あります。この悔しさを忘れず、必ず見返してやるという気持ちでいます」

 

心の底に流れるのは、家族や社員への感謝と愛情だ。革命児となった二代目は突然変異的に現れたのではなく、創業者をはじめとする家族や社員たち、同社全体がひとつの良き家族として育んだ、現れるべくして現れた同社の申し子なのだ。   ■

 

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プロフィール

藤波克之氏(Katsuyuki Fujinami)

1974年9月11日生まれ。法政大学社会学部応用経済学科卒。NTTグループ勤務を経て2004年に家業である株式会社藤波タオルサービスへ入社し、2009年に代表取締役専務、2013年9月より現職。

・VBジャパンテクノロジー株式会社代表取締役

・Fujinami HongKong Company代表

・NPO法人東京自立支援センター副理事

・NPO法人FBNジャパン理事

 株式会社 藤波タオルサービス

〒186-0012 東京都国立市泉1-12-3

TEL 042-576-9131 http://fujinami.co.jp