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酒田エス・エー・エス株式会社 – 酒田から子どもたちへ、酒田の子どもたちへ。

◆取材:綿抜幹夫 /文:渡辺友樹

 

03B_Sakata_SAS03(写真左より)酒田エス・エー・エス株式会社/エンターテイメント事業部 技術部長 佐藤久志氏、プロジェクトマネージャー 水越俊一氏03B_Sakata_SAS01

6人用メダルゲーム『もっとみんなでダービーLite』。個性あふれる馬たちの走りに思わず大興奮してしまう。ファミリー・カップルから競馬ファンまで大満足! みんなで囲んで楽しむ新感覚のメダルゲーム。03B_Sakata_SAS02こちらも6人用メダルゲーム『原始人がビンゴでワアアア!』。「原始人で狩をしよう!力尽きるまで獲物を狩って!獲って!獲りまくれ!」がキャッチコピー。

酒田には、こんなに面白いゲームを作っている会社があるぞ!

あの『甲虫王者ムシキング』や『オシャレ魔女♥ラブandベリー』など数百タイトルに及ぶ大手メーカーのゲーム開発をはじめ、バーチャル水槽システム『リアルアクエリアム』の開発、また業界初の業務用ネイルアートマシン『ネイルコレクション』の開発にも協力するなど、魅力的なゲームやコンテンツを手がけ続けるエス・エー・エス株式会社と、子会社の酒田エス・エー・エス株式会社。本誌20144月号では、渡部宏一社長と梅木元博・取締役本部長のお二人に登場いただいたが、今回は酒田エス・エー・エス株式会社の佐藤久志氏、水越俊一氏に、『さかた産業フェア2014』出展について、また同社が酒田にあることの意味や今後の展望について聞いた。

さかた産業フェア2014

 まずは5回目の出展となった『さかた産業フェア』への参加について聞いてみよう。東京(エス・エー・エス株式会社)から振り分けられた仕事を行うことが多い同社の特徴もあってか、地元での知名度が低かったことから、「自分たちで作った製品もあるし、せっかくのお祭りなのだから、まずは参加してみようという気持ちで(佐藤)」出展を決めたという。実は、渡部社長からは参加することでどんなメリットがあるか問われたというが、その点についてもまずは参加した上で様子を見てみたかったとのことだ。結果、同フェアでは、ゲームの筐体が設置された同社のブースに子どもたちが群がる光景が恒例となっているが、出展回数を重ねる中で見えてきた課題もあるという。

「ゲームが置いてあるところ、という意味での知名度は付いてきましたが、ゲームに釣られて子どもたちが集まるだけ、という側面も否めません。今後は社名を覚えてもらえるような、会社の認知度を高めるような出展をしたいと考えています(佐藤)」

 

東京本社との差別化

 こうして『さかた産業フェア』への出展を重ね、地域への浸透に努める同社は、スタッフ10名のうち主要メンバーの多くが酒田、あるいは周辺地域の出身だ。しかし、東京に30~40名規模のエス・エー・エス株式会社がある一方で、子会社が酒田に存在することの意義はどこにあるのだろうか。改めて尋ねると、「クリエイティブな仕事という意味では、お客さんの近くにいて、意見をたくさん聞けて、それを取り入れて開発する方が、良いゲームや良いコンテンツを作るには適しています(水越)」との答だ。遠距離でのやりとりについては、メールや電話、テレビ会議などの手段もあるにはあるが、億劫がられてしまうことは多いという。

「酒田にいるというのは、この業界においてはデメリットしかないんです(水越)」

 そうまで言い切った上で、なお酒田にあり続ける理由について佐藤氏は、「人、人材です」と即答した上で、「社員の人柄、地域柄に酒田ならではの個性があり、東北出身という意識がもたらす結束力も強いんです」と続ける。また、自分たちは離れたところにいるからこそ、近くにいる人よりももっと頑張らなくてはいけない、という気持ちを常に持っているという。クライアントに距離を感じさせない対応を心がけており、こうした「遠い酒田だからこそ」の意識は、過剰とも言えるほど持つようにしているとさえ語ってくれた。その結果、クライアントから「この仕事は酒田エス・エー・エスに頼みたい」と指名を受けるケースも増えている。同社が持つ技術力、そしてスタッフの人柄が、距離のデメリットを超える事例が既にあるということだ。

 「以前は、東京のお客さんのもとへ出張することもありましたが、今ではそれも年に1、2度です。現在3年ほど手がけている大手企業との仕事でも、東京に来なくていいと言っていただいています。中には酒田に来てくれるお客さんもいて、もしかするとそれは酒田名産の食べ物や飲み物などが目当てという部分もあるかも知れません。しかし、それも含めて、『酒田』のメリットだと思っています(水越)」

 距離によるデメリットを感じさせない仕事をすることで、クライアントの信頼を勝ちとっているのだ。さらに、酒田にいても東京にいても、また水越氏自身が過去に赴任経験のあるアメリカや台湾にいても、場所を問わず品質の高い仕事ぶりを示すことで、業界の体質を改善したいという思いもあるという。

 

地方から夢を発信したい

 そう、同社が酒田を拠点とする理由はまだある。地方には一次産業や二次産業が多く、同社のようなクリエイティブな仕事は少ない。進学校出身者は、東京をはじめ、人や仕事の多い都市に出ていってしまう。若者の地元離れは、多くの地方で深刻な問題だ。そういった中で、酒田に同社のような企業が存在することで、地元に夢を与えたいという思いがあるのだ。

 プログラマーという職種は元来、地位が低く、大手メーカーの開発を手がけても、それを表に出さない慣習があった。ヒット作の『ムシキング』や『ラブベリ』についても、仕事を通じてクライアントとの距離を縮め、信頼関係を築く中で、同社が開発したことを発信できるようになった経緯がある。当時はゲームの売り上げに対するロイヤリティもなく、技術の切り売りだったが、現在では1本いくらというロイヤリティの契約を結べるようになり、自分たちの仕事として名前を出すことができるのだという。

 とはいえ地元では、同社が30年に渡って、酒田の地でこうした仕事を続けてきたことはまだまだ知られていない。水越氏自身、少年時代に梅木氏が開発したゲームで遊んでいたが、当時は地元の先輩が作ったものだとは知らなかったという。そうした自身の体験も、地元での知名度を上げるために『さかた産業フェア』への出展を重ねていることの理由となっている。

 少数精鋭の優れた人材を武器に、メーカーとしての立ち位置、知名度アップを目指す同社。今後は従来の裏方仕事のみではなく、同社の名前が表に出ていくようなモノづくりをしていきたいという。大きな目標は100%自社製品だ。「常々チャンスは狙っていますので、1日も早く実現させたいと思っています(水越)」と頼もしい。

 「酒田エス・エー・エス」の名を冠した製品を世に送り出し、同社のようなクリエイティブな産業も地方から発信できるという事例を示すことができれば、それは酒田にとっても、同社にとっても、大きな一歩となる。

 

オビ ヒューマンドキュメント

●酒田エス・エー・エス株式会社

〒998-0828

山形県酒田市あきほ町654-1

TEL 0234-23-1750

http://www.sas-sakata.co.jp

●エス・エー・エス株式会社

〒110-0016

東京都台東区台東1-1-14

ANTEX24ビル2F

TEL 03-3836-0655

http://www.sas-tokyo.co.jp/

2014年12月号の記事より
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