オビ 企業物語1 (2)

セブンエイト流通コンサルタント合同会社 ‐ 他業種とのコラボも進める物流業界のニューフェイス

◆取材:綿抜幹夫 /文:橘夢人

オビ ヒューマンドキュメント

12_Seven_eight01セブンエイト流通コンサルタント合同会社/代表社員 鈴木邦彦

企画力と製品力で、エコで低コストな物流を提案

ダンボール、ストレッチフィルム、ガムテープ……と、まだまだ使い捨て包装材が主流の物流業界にあって、「環境にやさしい物流」を掲げるのがセブンエイト流通コンサルタント合同会社だ。従業員数4人の少数精鋭体制で、開業は2011年。

リユース可能な荷崩れ防止製品から、ダンボールに代わる箱や保冷バッグなど、応用範囲の広い製品を手がけ、他業種とのコラボも積極的に行っている。創業者で代表社員の鈴木邦彦氏に話を聞いた。

 

■起業の原点は「環境にやさしい物流」

「物流の中で、使い捨てのものはたくさんあるんです」。同社の代表社員を務める鈴木邦彦氏(以下、鈴木氏)が30年以上勤めた会社を辞め、自分の会社を立ち上げたのも、根本的にはそれがきっかけだった。

鈴木氏は、もともとは荷崩れ防止バンドの専業メーカーに勤めるサラリーマン。パレットや6輪台車で商品を搬送する際、荷崩れ防止に使われる使い捨てのストレッチフィルムに替わる、何度でも使えるマジックテープ式バンドなどを手がけ、コスト削減と環境への配慮の両面をそなえた商品開発を行ってきた。

 

「お客さんの要望は千差万別。同じパレットにのせる場合でも、ダンボールを積むこともあれば大きさがバラバラの時もあります。規格品では対応できないケースが非常に多く、お客さんごとに従来品に改良を加える必要があったことから、製品開発のノウハウを得ることができました」と当時を振り返る。

そこから徐々に、バンドだけでなく使い捨てのダンボールや緩衝材などもリユース可能な製品に変え、環境にやさしい物流を作れないかと考え始めるが、専業メーカーでは縛りが多く、実現が難しかったことから独立を決意。

2011年9月に足立区と東京電機大学が連携した創業支援施設を利用して起業し、広く梱包資材の開発に乗り出したのが同社の始まりだった。

 

■現場の声を取り入れた製品開発

12_Seven_eight03同社の代表商品のひとつである「e-box」。使い捨てのダンボールとは異なり200回以上繰り返し使えるため、配送コストの削減だけでなく、環境にもやさしいというメリットがある。

そんな同社の製品の特徴は、1つにはリユースが可能で環境にやさしく、コストも押さえられる製品であること。もう1つは、現場で困っていることをどうすれば減らせるか、という視点から開発が行われていることだ。

例えば、今年度力を入れているというオリコン(折りたたみコンテナ)用の保冷バッグは、ドライバーの負担をどう軽減するか、という問いかけからスタートしたもの。高い密閉性・保冷力のほか、中身の移し替えが不要な構造で、作業時間が大幅に短縮できる製品となっている。

 

この製品づくりの特徴は、実は会社設立前から鈴木氏が実践してきたものにほかならない。2006年にまだ会社員だった氏が手がけた、ICタグと荷崩れ防止バンドの組み合わせによる某大手ビールメーカーのCO2削減の事例は、そのことを示すエピソードの1つと言えるだろう。

ビールと一緒に出荷する洋酒・ワイン・焼酎などの配送にICタグを導入したこの事例の概要を簡単にまとめると、まず出荷工場で種類ごとにパレットにまとめた酒を荷崩れ防止バンドで固定して、パレットごとに商品詳細と行き先のデータが入ったICタグカードを装着。荷受工場でそのタグ情報を読み取ることで、格段に効率のよいピッキングが可能となり、倉庫内の作業効率が向上。CO2の排出削減に効果があったというものだ。

国土交通省、経済産業省などが主催する「グリーン物流パートナーシップ」の補助対象事業にも選ばれ、ICタグを物流に導入した事例として注目を浴びた。

この仕組みには当然ながら、パレットごとにICタグカードを装着する必要があるが、ICタグ導入前の荷崩れ防止バンドはそれを取り付けるようにはできていない。それが可能なように、カードケースを取り付けられる専用の荷崩れ防止バンドを製作したのが鈴木氏だった。

 

「ICタグを開発できる会社はいっぱいありますが、それを現場でどう運用していくかプラニングできる会社は少ないですね。重要なのは技術自体より、いかにそれを業務に落とし込めるか。うちはそこに注力しています」

そんな言葉を裏付けるように、同社の主力製品の一角である荷崩れ防止バンドは、基本的に顧客に合わせたオーダーメイド仕様。通常当たり前だと思われている従来品の問題点も突き詰めて、それぞれの現場に合わせた商品を作り出すことに力を注いでいる。

 

■隙間産業の強みを生かし国内市場で勝負する

現在同社は、日本では製品の企画やデザインのみを行い、生産はすべて中国・上海にある工場に依頼している。ただ、中国国内で流通させる予定はなく、持っている特許や意匠は日本国内用のものだ。今後確実に進むであろう日本の人口減少・マーケット縮小を見越して、現地法人を立ち上げて海外での生産・販売に乗り出す企業は多い。

そんな中、敢えて別の戦略をとるのは、同社の扱う荷崩れ防止製品や梱包資材が、基本的には「コストや効率、売り上げ、利益なんかを考えると、大所帯では回らず、国内で競合するところは意外と少ない。市場規模もそれほど大きくないので、大手も入って来ない」隙間産業だから、というのが1つ。また、海外だとパテントの把握ができないことも理由の1つだという。

 

「ハイテク製品なら特許を生かして海外展開もできるでしょうが、うちの製品はローテク。基本的に材料を縫製するのみで、特許はその構造や形態だけなので、誰でも作ろうと思えば作れます」と鈴木氏。もし海外工場から情報が流れ、海外で製品が出回っても、それはやむを得ないとの判断で、「それよりも日本市場に必要なものを生産し、きちんと供給できることが一番のポイント」なのだと語る。

 

中国で生産することを選んだ理由もそこにあり、それはずばり「日本では作れないから」だ。同社の製品は、スポットで一気に3000~5000枚の生産が必要になるものの、継続案件ではないために、国内ではパートナー企業を見つけにくいという現実がある。そこで鈴木氏の友人であり、日本に帰化した中国出身者が持つ上海の工場に生産を依頼。大量のスポット注文にも対応できる体制を作り上げたのだ。

もちろん、問題もなくはない。その最たるものは為替相場で、4年前に同社が起業した時は1ドル70円台後半、1人民元約12円前後の超円高だったレートは、2015年3月現在で1ドル約120~122円、1人民元では約19円前後にまで円安が進んでいる。また工場の人件費も、4年前の平均時給13人民元前後から、現在は20~22人民元へと上昇し、「コスト的にはきつくなってきている」のは確かだ。

現在の状況が進行すれば中国で生産するメリットはなくなってしまうという危機感を持ちながら、鈴木氏は次の一手を模索している。

 

■将来の鍵は他業種に応用できる製品

こうした状況を踏まえ、設立5年目の同社が目指すのは、「ほかにはない価値を持った商材を作り出していくこと」。そのためには、繰り返し使えることは大前提として、商品にさらなる付加価値をもたせること。物流業界に留まらず、一般的な消費の中で使える製品を作り出すことが重要だと鈴木氏は語る。

例えば、荷崩れ防止バンドはパレットや台車とセットで使われる性質上、その使用範囲は工場からの出荷や物流センターから店舗への搬送などに限定されてしまう。ところが、ダンボールの代わりに繰り返し使える箱や保冷バッグなら、その使用範囲はコンビニエンスストアなど、より小さい単位まで拡大。

さらに、箱の中に入る商品パッケージなどさらに細かい部分で革新的な商品を作ることができれば、消費者の直接目が届く範囲にまで製品の使用領域が広がっていくかもしれないというわけだ。

 

最終目標であるこの地点を目指して、目下同社が取り組んでいるのは、他業種とのコラボにより新境地を切り開くこと。鈴木氏も月に一度は異業種交流会に欠かさず参加し、情報集めにも余念がない。中でも特に相性がいいのは引越し業者だ。

例えば、一般に家族の引越しの場合、使うダンボールは平均30~50箱。これらはすべて使い捨てで、使用後は廃棄処分されている。1箱の単価は約250円で、その費用は引越し代金の中に含まれているので、つまり引越し業者はこのコストがなくなれば、他社に対して高い価格競争力を持つことができ、価格を変更しない場合はその分利益を増やすこともできるメリットがあるのだ。

となればここは、同社の代表商品の1つで、200回以上のリユースが可能なダンボールの交換材「e-box」の出番。ほかにも、オリコン用に開発した緩衝材を食器など割れ物の運搬に応用する、引越しの際に困る冷蔵庫の中身を保冷バッグを使って運ぶ、などさまざまなサービスについて現在進行形で話が進んでいる。

 ◇

 今年還暦を迎える鈴木氏。「現役でやれるのはあと10年ぐらいでしょう。ただせっかくパテントもいくつか持っていますし、この2、3年で若い人を数人採用して、そちらに業務移譲できればいいかな」と言いながらも、自社製品や異業種間のコラボを目指して提案中のサービスを語る声は若々しく、力強さに満ちている。

設立から4年経過したとは言っても、「環境にやさしい物流」への挑戦はまだ始まったばかり。同社の今後の発展に注目したい。

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◉プロフィール

(すずき・くにひこ)氏…昭和30年(1955年)11月19日生まれ。福島県郡山市出身。東北学院大学卒業後、大学職員、システムSE等を経て、荷崩れ防止バンドを主力製品とする梱包資材メーカーに勤務。約32年間の研鑽を積み、平成23年(2011年)に独立開業、代表社員に就任。現職。

 

セブンエイト流通コンサルタント合同会社

〒116-0002東京都荒川区荒川5-4-2 新日本TOKYOビル5F

TEL 03-6806-7803

このHPについて

2015年5月号の記事より
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