決して秀才の集団ではないけれど、

社会に貢献するまっさらな人材の宝庫!

 資格取得にスポーツに!

普通校では味わえない実りある高校生活がここにある!

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学校法人上野塾
東京実業高等学校 校長 上野 毅氏

無骨な校名である。『東京実業高等学校』。昨今はお子さんの名付けにも通じるような『キラキラ校名』に変更する学校が横行するなか、創立時の校名を一途に守り通している。それは、ひとえに職業教育を実践する者としての誇りの表れだろう。今では都内でも数えるほどになってしまった機械科を持つ私立高校の矜持をぜひお伺いしよう。

 

 

社会に役立つ人材の育成こそ本校の使命!

「即戦力として社会に貢献する人材の育成、つまり職業教育が創立当初からの本校の目的でした。今から92年前に、簿記を教える商業学校としてスタートしたのが本校です。当時から資格を取得して社会に貢献する人材を育ててきました」

勉強する目的があいまいな生徒が多い現在、資格取得といった明確な目的を持って学ぶことは、生徒本人にとっても、これから羽ばたいていく社会にとっても大いに役立つことだと、上野校長は胸を張る。

 

「本校は『専門高校』と位置付けられますから、卒業後、それを活かす道に進む生徒がいます。また、さらに上の学校に進み、知識や技術を高める生徒も多い。進路を見ると就職が2割弱、大学・専門学校進学が8割といったところです」

東京実業高校では、3科4コースを擁し、5つの分野を学ぶことができる。普通科のみの高校にはない、専門特化された充実の設備やカリキュラムが特徴だ。

 

「もともと、生徒自身がこれを学びたい、これを身に付けたいと志望して入学してきますから、当然意欲は高い。しかし、15歳の選択ですから、入学してから『ちょっと違うかも』ということも充分あり得ます。そこで本校では2年生に進級する時、転科を可能にしてあります。生徒一人ひとりの意欲と自立を特に大切にしているのです」

さらに、放課後の講習会などで自分が属する科以外の科目も勉強でき、生徒の多角的な知識向上に役立っている。

 

 

伝統のクラブ活動は、全国レベルの部も多数あり!

力を入れているのは勉強ばかりではない。クラブ活動も非常に熱心であり、輝かしい実績を残している。

「近年最も活躍しているのは陸上競技部。駅伝の都大会では4連覇中です。また、野球やサッカーも都内では上位にあり、全国大会出場も視野に入って来ました。文化部の中ではマーチングバンド部ですね。世界大会出場の経験もあるんです」

だが、強調したいことはそういった結果ではない。大事なことはクラブ活動を通じた忍耐と努力だ。

 

「厳しい練習を乗り越えて、3年間何かをやり通すことこそ大切です。それはクラブ活動だけでなく、資格取得などでも同じことですが、そういった忍耐力が、社会に出て結実するんです」

ただ周りが進学するから進学する。そんな生徒とは一線を画する専門高校ならではの人材こそ、日本のモノづくりを支える企業には必要ではないだろうか。

 

 

【直言×直答】

工業高校など専門高校の統廃合が進む現在、私立学校における専門高校は大変珍しい存在だ。将来の専門的職業人に求められる職業教育を行い、我が国の産業・社会の発展を支える原動力となってきたはずの専門校に何が起こっているのだろうか。

 

Q・高校における専門高校の現状を教えてください。

 

高校生のうち専門高校で学ぶ割合は、昭和40年代には約4割を占めていましたが、現在は約2割まで激減しています。少子化が進み、高校の生徒数が減少する中、公立高校の再編整備が進められていますが、普通科と比べ、専門学科が再編整備の対象の中心となっているのが実情です。

東京でも私立の専門高校は激減しており、工業科のある私立校は本校を含めてわずか6校だけです。

 

Q・それだけ貴重になったとも言える私立の専門高校として、各科の特長や自慢は?

 

商業学校として出発した本校は、日本の「簿記教育」の先駆けとして、「簿記を勉強するなら東京実業」と言われる学校でした。今もその伝統は受けつがれ、普通科ビジネスコースにおける簿記教育の充実ぶりが、卒業後の若年での「公認会計士」合格につながっています。普通科文理コースは、大学進学をめざす生徒のためのコースです。

 

機械科では、業界の様々な資格取得を目指し、知識や技能を身につけています。また、電気科の国家試験をとるということも行っています。

 

電気科電気コースでは、「電気工事士」という大きな国家資格取得が目標です。第二種電気工事士資格では、本校の生徒が東京都における合格者数ベスト3に入るほどです。難関の第一種電気工事士も毎年合格者を出しています。

 

電気科ゲームITコースは他校に先駆け開設された新コースで、4年目に入りました。今年1期生が卒業したばかりです。日本のゲーム業界は高卒で就職するのは難しい。ですからこのコースの生徒はほとんどが大学か専門学校に進学しています。本校で学ぶ強みは、電気科の中にあるので、ハードの勉強ができることです。ハードの知識がまったくないままゲーム業界に入る人が多いのですが、その知識があることが、将来有利に働く可能性は非常に高いと考えています。

 

Q・近年では、仕事が長続きしない若者が多くいます。企業が若者を雇用するにあたって留意して欲しい点は何でしょうか。

 

最近の生徒は異世代間交流が苦手です。狭い範囲での仲間意識が強く、メールや、近頃ではLINEなどでのコミュニケーションが中心にあって、特に年長者とうまく交流できません。ですから新卒者の言動が先輩社員に理解されにくいのではないかと思います。近年の雇用情勢から、特に中小企業では社員の年齢構成にばらつきがあります。すぐ上の先輩なのに年が離れているということも少なくないでしょう。そうなると新卒者の理解者がいない状況になってしまう。

ですから、新卒者を指導する役割の社員は、出来るだけ年齢が近い方をお願いしたい。話しやすい先輩社員を通じて、会社全体との関係が深まればいいのではないでしょうか。

 

こんな例があります。本校卒業生が就職した先に、同期入社の他校の生徒がいて、非常に仲良くなったそうです。ところが、その他校生が会社を辞めると、本校生も辞めてしまった。慰留に努めてくださいましたが、止めることができなかったそうです。同世代とはうまく交流できても、年上世代とは難しかったということだと思います。

 

Q・大田区蒲田という、モノづくりの街が貴校のホームグラウンドです。このことは、生徒の進路に影響を与えているでしょうか。

 

大学進学やその後の就職は、必ずしも地元にこだわらないケースが多いでしょうが、専門高校では、地元の産業基盤の変化によって進路にも大きな影響が出ます。例えば、日産の座間工場がなくなったことで、周辺の自動車にかかわる産業が衰退します。すると本校卒業生の就職にも影響が出るわけです。これは学校側ではコントロールできない問題です。おっしゃる通り、大田区はモノづくりの街です。しかし、零細な企業ではいくら業績が順調でも、新人の採用を定期的にできないことが少なくありません。

 

それに、高校生にしてみれば、やはり名の通った企業に目が向くのは当然です。残念なことですが現時点の本校で、モノづくりの中小企業に対しての就職希望者は少ない。本校に来る求人票が少ないからか、あるいはそういう現場仕事を敬遠しているためなのか。本校としては、高価な機械も入れて工業科を運営しているのに、それを活かす仕事に就きたがらないのは本当にもったいないことです。

 

今、そんな状況を改善する方法を模索しています。やはり、生徒が会社や仕事を知る機会が不足していることが大きい。若い人材を欲している中小企業側の、情報発信のためのイベントでもあれば、本校の進路指導の先生は喜んで足を運びますよ。お互いに結びつくことができる方法を企業と共に探っていきたいと考えています。

 

Q・具体的な提言をありがとうございました。

 

 

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●学校法人 上野塾 東京実業高等学校

東京都大田区西蒲田8−18−1

TEL 03−3732−4481

http://www.tojitsu.ed.jp/index.html

 

 

 

この記事はBigLife21 2013年12月号に掲載されたものです