SECエレベーター株式会社 new SEC、いよいよ発進!!

エコロジー&エコノミーをワンストップで

◆取材:綿秡 幹夫

 

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SECエレベーター 代表取締役会長兼CEO 鈴木孝夫氏

 

これはもう、ゼネコンに倣って〝ゼネワン〟とでも呼ぶほかない。単なるエレベーターの保守管理会社ではなく、ビルやマンションなど、電気を大量に使う居住空間のエコロジー&エコノミーを、ワンストップでトータルにデザインするゼネラル企業体である。

独立系としては業界最大手でありながら、近年は独自のLED製品(広角度省エネ蛍光灯)やメガソーラー(大型太陽光発電装置)、スターリングエンジン(外燃機関)発電装置など、新・再生可能エネルギーの開発メーカーとしてもとみに知られるSECエレベーター(東京台東区)だ。

そのSECがこのほど、新たな成長戦略と、それに伴う大胆な機構改革案を発表した。ひと言でいえば、アッと驚く〝new SEC構想〟である。さっそく、オーナーの鈴木孝夫氏(70歳)を直撃した。

 

エコ・省エネは業容、業態を超越した産業界全体の責務

まずは鈴木氏の、産業人としての基本的な理念や、信条から話を始めたい。

時代は今、何を求めているか。またそれに、我々はどう応えていくか。かりそめにも産業界に身を置く一人の人間として、考えるべきこと、やるべきことは、すべてこのひと言に集約されると私は思っているんですよ。その意味で言うと、20世紀はいい時代だったと思いますね。豊かさや便利さが何より求められた時代で、産業界もそれにしっかりと応えてきましたから」(鈴木氏、以下同)

ちなみに氏は46年前に、個人事業主としてエレベーターの保守管理を始めているが、それも時代の要求に応えようとしたある種の〝決起〟と言っていい。当時はエレベーターを販売した大手メーカーが、(他社にマニュアルや部品を提供しないなどして違法に)顧客を囲い込み、ベラボーなメンテナンス料を請求し、徴収していたため、ユーザーの間では、持って行き場のない怒りや不満が鬱積していたという。

 

「それはそうですよ。エレベーター1基のメンテナンスは半日もあればすべてできるのに、1回につき彼らは、当時の金額で、職人一人分の月給に相当する料金を取っていたんですから

ユーザーの要求に応えて、徹底した安全対策と親身な対応、リーズナブルな料金設定を掲げて船出した鈴木エレベーター(当時の商号)が、みるみるシェアを伸ばしたのは言うまでもない。

とまれそんないい時代も、高度経済成長が終わり、安定成長に入った頃から徐々に様相を異にし始める。つい数十年前には思いも寄らなかった負の遺産を、人々が否応なく背負わされることになったからだ。言わずと知れた、

 

「環境汚染、環境破壊ですよ。このことで時折、自動車や燃料、薬品業界だけをヤリ玉に挙げて責める人を見かけますが、それはとんだ勘違いで、実は産業界全体、更に言うと豊かさ、便利さにばかり目を奪われてきた人類全体の責任なんですね。

つまりは20世紀に我々人類がやってきたことの〝ツケ〟ですよ。そこで生まれたのがエコという新しい概念と、省エネという新たなニーズです。したがって業容、業態を超えて、我々産業人には、この新たなニーズにしっかりと応えていく責務があるんです」

 

余談ながら、昨今の流行りや〝世間体〟でエコ・省エネ対策を導入したという企業は少なくない。東日本大震災を契機に、初めて省エネを意識したという企業も多々あると聞く。それはそれでもちろん結構なことだ。

しかしそれと比べていうのも何だが、SECが新エネルギー、再生可能エネルギーの研究に取り組み、事業化に向けて開発を始めたのは、もう十数年も前のことである。分かりきった話で恐縮だが、エレベーターを動かしているのは電力で、電力をつくる際には少なからずCO2(二酸化炭素)やNOx(窒素酸化物)を排出することになる。これに手をつけないでおいて、「人さまにエコだ省エネだなんて、言える筈もない」というのが、そもそもの動機だと聞く。

なるほど。業界最大手の、これが矜持というものだろう。

 

 

デビュー! スーパーソーラーパネルのSEC-JinKO

さて、ぼちぼち本題に入ろう。冒頭に述べた「new SEC構想」だ。

これまでSEC本体の事業部に位置づけられていた新・再生可能エネルギー部門を、数年後の上場を視野に別途法人化し、「新エネルギーサイエンス株式会社」として発足させたのが、構想の目玉というか大きな特徴である。

事業の柱メガソーラースターリングエンジン発電機、そして「バインド電池」と呼ばれるハイブリッドタイプの次世代型蓄電池という3本である。驚くなかれ。

 

「初年度の売り上げは、100億円を見込んでいます」 と、氏だけでなく、関係者たち全員がこともなげに口を揃えるのだ。訊くとこうである。

 

「例えば〝SEC-JinKO〟のブランド名でリリースしたメガソーラーですが、これは先頃(7月24日~26日)、東京ビッグサイトで開催された第8回再生可能エネルギー世界展示会でも、予想以上の反響を呼びまして、早くも有力な製品情報として世界を駆け巡っています。

詳しくは差し控えますが、私どもSECと、ソーラーパネルメーカーとしては世界でもトップクラスとされる中国のJinKO社、それに旭硝子との共同研究を基に採用した、これまでにないスーパーソーラーパネルの波及効果です。簡単に言うと、経年化による発電力の低減が、従来のパネルと比較して、3分の1以下に抑えることが可能になったのです。更に構成部材を必要最少量にまで抑えるなどして、イニシャルコスト(初期投資)を、これまでに比べて格段に低くすることにも成功しています」(関係者)

 

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ちなみに太陽光発電による売電価格は37.8円/1kwh(2013年設置・10kw以上)で、発電コストは規模や減価償却の仕方にも依るが、1kwh当たりざっと10数円だという。一方、購入価格は18.89円/1kwh(同・東電)である。ただしこの差額は今後、急速に縮まることが確実視されており、他の再生可能エネルギーにも言えることだが、ある意味でここ5年くらいが、同社にとっても、ユーザーにとっても見逃すことのできないビジネスチャンスであり、導入のチャンスといえる。

気合の入れようは想像に難くあるまい。そんなこんなを考え合わせると、100億円の売上見込みもなるほど、頷けるというものだ。ついでながら、

 

「スターリングエンジンを使った発電装置の研究開発も、これまでのところ予想を遥かに上回るスピードで進んでいます。すでに低音化と省スペース化については課題を完全にクリアしており、残すところは発電量の微妙なズレをなくす安定性の向上だけです。その研究も芝浦工大との産学連携で順調に推移しており、この秋には完成を見る段取りになっています」(同)

ちなみにこちらの発電コストは、予定通りにいくと1kwh当たり実に10円未満だという。家庭の生ゴミや廃材、産業廃棄物など、いわゆるバイオマス燃料を熱源に想定しており、こちらの売電価格は17.85円~25.2円/1kwh(同)になる。

エコロジー&エコノミーとは、まさにこのことだ。

 

 

抱負というより産業人としての〝覚悟〟

それにしても、初年度から100億円とは少々強気に過ぎないか──。

ここまで読んで、そう感じた読者も少なくはあるまい。そこで少々補足しておきたい。上記した技術力や市場動向、良好な経営環境のほかにも、同社は他社も羨む決定的な強み、アドバンテージを有していることである。年商130億円(2012年度)、従業員数約1000名の規模からすると、おそらくは他に類を見ないほどの充実した拠点網である。

 

北海道から九州・沖縄まで、実に160を超える支店、事業所がビッシリと網羅されているのだ。独立系としてはもちろん断トツのトップで、業界全体を見渡しても、エレベーターに特化してという意味では三菱、日立に次ぐ堂々の第3位。東芝やフジテックを遥かに凌ぐ巨大ネットワークといっても過言ではない。

 

「その拠点網から上がってくる情報量が、半端でなく多いんですね。それもほとんどがユーザーの生の声ですから、それぞれの地域、それぞれの層の多様なニーズが、的確に、それも手に取るように分かるんです」(前出の関係者)

賢明な読者にはもうお分かりだろう。冒頭に書いた〝エコロジー&エコノミーをワンストップでトータルにデザインする〟という発想も、この巨大ネットワークがもたらした〝必然〟というわけだ。もちろんこのネットワークが、新事業においてもそのまま営業部隊としても機能することになる。要するに、100億円はけっして強気でも何でもないということだ。

 

最後に、今回の機構改革に伴って行われた人事について、簡潔に報告しておきたい。

創業以来これまで、半世紀近くに亘って代表取締役社長を務めてきた鈴木氏が、グループ(SECエレベーター、SECオンライン、新エネルギーサイエンス)全体を統括する会長兼CEOに就任し、エレベーターの社長には代表取締役専務の西村裕志氏が、新エネルギーの社長には専務取締役の兼安保良氏が、それぞれ株主総会を経てこの8月にも就任する予定だ。

 

「今回の人事は、より時代のニーズに応えるために、より機動力を強化しようというのが一番の狙いです。今後の抱負ですか? う~ん。抱負というより〝覚悟〟ですね。ここまできたら、何としてもこれまで以上に社会のお役に立てる会社にするぞ、という産業人としての覚悟ですよ。なんたって十数年も前から温め、先行投資をし、育ててきた、社会的にも意義のある事業ですからね。正直言って、やっとそのスタートラインに立てたというのが、本当のところですよ」(鈴木氏)

ちなみにここ数年、同社の業績は一貫して右肩上がりである。とりわけ高経年化したエレベーターのリニューアル部門が絶好調で、24年度は対前年比で4倍もの施工実績を達成したという。

 

とまれnew SECの発進に、これほどの餞はあるまい。というわけで読者諸氏、こんな時代でもやる人はやっているし、伸びる会社は伸びている。何がどうしたこうしたのと言って、モタモタしている場合じゃありませんぞ。

 

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●「さあ登板だ! ~西村裕志新社長に訊く~ 感謝の心を自らの役割に替えて  しっかり、着実に、皆さんの期待に応えたい」

「SECが結晶太陽電池世界第6位のJinKOソーラーと業務提携 初年度100億円、年間50メガワットも視野に」

SEC鈴木氏

プロフィール

鈴木孝夫(すずき・たかお)氏…1943年生まれ。岩手県平泉町出身。東京電機大学を卒業と同時に、菱電サービス(現・三菱ビルテクノサービス)に入社。エレベーター関連の技術者として3年間勤務。1967年、同社の下請け事業主として東京杉並区を拠点に独立・創業する。1970年、有限会社鈴木エレベーター工業を設立(後に株式会社に改組)し、代表取締役社長に就任。1978年、株式会社SECエレベーター代表取締役社長に就任。本年8月、新会社新エネルギーサイエンスを設立すると同時に、グループ全体を統括する代表取締役会長兼CEOに就任。

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SEC(エス・イー・シー)エレベーター株式会社

〒110-0016 東京都台東区台東3-18-3 SECビル

TEL 03-3833-1171

http://www.secev.co.jp/

 

 

 

町工場・中小企業を応援する雑誌BigLife21 2013年8月号の記事より

町工場・中小企業を応援する雑誌BigLife21 2013年8月号の記事より