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平沢勝栄議員 日本は世界一の工場を目指せ!

ポストTPPは移民政策&投資を呼べる税制改革

◆聞き手・文:加藤俊

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衆議院議員・平沢勝栄氏

(前編:TPP 政府がイエスでも、国会はノーを突きつけられる!より続き)

 

しっかりとした青写真と綿密な計画が不可欠

─TPPが締結され、発効すれば、程度の差こそあれありとあらゆる分野でボーダーレスが進むことになりますね。とくに内外の賃金格差を考えますと、大量の労働力が日本に入ってくるものと予想されます。もちろんこれにもメリットとデメリットがあるとは思いますが、先生はどのようにお考えでしょうか。

 

平沢 これは成長戦略にも絡む重要な問題でしてね。迅速に、前向きに取り組んでいくべきだと思いますよ。先の参院選では大した争点にはなりませんでしたが、この国が抱えている一番の課題は、なんたって世界でも突出した少子高齢化率をどう是正するかと、それが是正されるまでどう対応するか、つまり生産もし消費もする現役世代をどう増やすかですよ。とにかく今は減る一方なんですから。このままでは国そのものが沈没しちゃいますよ。

 

─前向きにというのは、積極的に受け入れるということですね?

 

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平沢 そうです。今、日本で働く外国人労働者はざっと50~60万人、全体の1%ちょっとしかいないんですよ。他の先進国はだいたい5%ですから、これは少な過ぎるでしょう。ではどうするかですが、具体的に言うと、移民の受け入れも視野に置いた、外国人定住者や永住権の付与基準をどう緩和するかという政策をきちんと打ち出して、きちんとした法律を整備することですね。

アベノミクスに欠けているものがあるとしたら、この点ですよ。ただし野放図というわけにはもちろんいきませんよ。いろいろと厄介な問題が起きる可能性が否定できませんからね。その意味では欧米での失敗例などもよく調べて研究し、しっかりとした青写真を描き、綿密な計画を立てて、丁寧に進める必要があるとは思っています。

 

─単純労働者には慎重であるべき、ということでしょうか。

 

平沢 う~ん。というより、まずは専門的というか、高度な技術者やその予備軍のような人たちから順番にハードルを下げていくことでしょうね。だって誰でも彼でもどんどん入れて、要らなくなったらポイというわけにはいかないじゃないですか。世界から猛烈な批判を浴びますよ。例えば看護士や介護士、IT技術者のような人たちは、今すぐにでも来てもらって、問題がなければ永住できるようにすべきだと思いますよ。もちろん単純労働者だって、労使それぞれの事情に照らして受け入れるべきは受け入れていけばいいんです。要は国としてきちんと青写真を描き、それに向けた法律を整備することですよ。

 

─なるほど。そうなれば国内の労働力だけでなく、需要も消費もそれだけ増えますから、企業もわざわざ海外に出なくてもよくなり、設備投資も増えるということですね。

 

平沢 そうです。ただしそれに連れて国内の賃金にも押し下げ圧力が掛かるという懸念はありますよ。だからそうならないようきちんと青写真を描いて、計画的に進めなければいけないと言ってるんです。設備投資について言えば、税制や社会保障の在り方についても、早急に改める必要があると私は思いますよ。

 

 

頑張らないところに支援は要らない

平沢 かつてイギリス病という言葉がありましたが、日本だってその懸念がなくはないんです。医療費が毎年38兆円にも上り、生活保護費受給者は今や215万人。そんなこんなが財政を圧迫し、そのあおりで法人税は世界と比べても図抜けて高くなっている。これでは海外の企業はもちろん、国内企業だって投資したいとは思いませんし、投資もしない会社に勤めた若い人たちに、働く意欲なんか湧いてきませんよ。イギリスの場合は1979年にサッチャーがその治療に着手し、ブレアが2001年に克服宣言を出しましたが、それまで20年以上掛かっているんですよ。

日本が同じ轍を踏まないためにも、せっかく衆参のネジレが解消したことですし、今こそ自民党は勇気を以って、少々痛みを伴うことがあるとしても、一時的に支持率を落とす懸念があるとしても、次世代、次々世代のための思い切った改革を、強力に進めるべきだと本当に思いますね。

最近よく言われる実体経済という意味からも、国際競争力の比較という意味からも、やはり基礎となるのは中小企業、町工場支援策ですよ。日本の産業界は、中小零細が元気にならないと話にならないんです。逆に言うと、中小零細が元気になれば、日本はまた、〝世界一の工場〟になれるんですよ。

 

─そう言えば先生の地元の葛飾区(東京)は、このところずいぶん元気ですね。

 

平沢 元気ですよ、皆さん。この前も杉野ゴム(化学工業所。葛飾区)さんを中心とした産学連携のプロジェクトチームが、8000メートルもの海底を探査する深海ロボットをつくりましてね。世界から熱い注目を集めているところです。こういうところには国や行政がドンドン金を出して応援してやればいいんですよ。その代わりと言ってはなんですが、頑張らないところに無駄に税金を投じてはいけません。社会保障にしても税制にしても、中小企業支援策にしても、その辺りのメリハリをきちんと付けること。さっきの移民政策もそうですが、成長戦略にそれらをしっかりと盛り込んでいけば、アベノミクスは成功しますし、日本は間違いなく世界一の工場になると、私は思いますよ。

 

─ありがとうございました。益々のご活躍をお祈りしております。

 

▼9月号ではTPPに関してお聞きしている▼

=前編=9月号の記事:TPP 政府がイエスでも、国会はノーを突きつけられる!

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