オビ 特集

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学校と企業を行き来しながら、座学と実務訓練を長期に行う、ドイツ生まれの「デュアルシステム」が日本の専門高校に導入されてから12年。

もともと高卒者の就職率向上と、中小企業の人材不足を解消する目的で始まったが、いまやその効果も活用法も多様化し、地域全体を巻き込んだまちおこしにも活用されている。

そこで各地で定着しはじめた、デュアルシステムの活用の実際とポイントについて実例を挙げながら紹介していく。

 

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技術と環境保全。これからのものづくりに欠かせない2つの専門知識を備えた人材を育む

東京都立多摩工業高等学校

校長 早川信一氏/キャリア教育担当 井出洋氏

 

◆取材・文:富樫のぞみ

 

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同校外観

 

 

高度経済成長とともに発展し、数々の大規模工業が集まる多摩地域。近年では街を代表する大工場の閉鎖が続き、元気がなくなってしまったのではと心配する声もあったがとんでもない。

平成26年の東京都統計によれば、東京都全体の出荷額のうち多摩地区が占める割合は実に6割。先端技術開発に取り組む大学や研究機関も数多く、付加価値額が非常に高いのも特徴だ。

 

この優れた技術開発力を支える人材を多く輩出してきたのが、東京都立多摩工業高等学校である。

創立は昭和38年。機械科、電気科のほか、都立高校でも唯一となる環境化学科があるのも緑豊かな多摩地域ならでは。

機械・電気・化学の基礎はもちろん、ISO取得においても必須といえる環境保全への高い知見を養うカリキュラムが特徴だ。

また資格取得にも非常に力を入れており、第1種電気工事士をはじめ難関資格を含めた多くの合格者を出している。

 

平成30年には都立葛西工業高等学校とともにデュアルシステム科を新設する同校。

地元で働く意欲の高い学生と企業を繋げる取り組みについて、校長の早川信一氏、ならびにデュアルシステムをはじめとするキャリア教育を担当する井出洋氏に話を聞いた。

 

短期インターンシップと長期デュアルシステム。2つの就労訓練を実施

―貴校のデュアルシステムをはじめとする就労訓練の仕組みや実地状況について伺いたい。

 

DS_tama_hayakawa早川氏:現在取り組んでいる就労訓練は、大きく2つに分けることができます。まず2年生全員を対象としたインターンシップです。

これは毎年2月上旬に3日間、生徒が希望する企業へと出向き、就労体験を行うというものです。

実際に働く人々の現場の雰囲気を肌で感じ、その姿勢を目の前で見ることは、生徒たちにとって「働くこと」「学ぶこと」「生きること」を考える大変貴重なきっかけになっています。

 

デュアルシステムでは、毎週1日、一般社員の方と同様の時間帯で働く就労訓練を1年間続けます。インターンシップと比べても、より実務に携わる作業が多くなりますね。

まだ社会に出たことのない生徒たちが1年間働き続けるためには、強い意識が求められます。そのためデュアルシステムについては、希望者制としています。

 

参加する場合の流れですが、2年次にデュアルシステムに参加し、3年次は資格取得や就職活動に専念するというパターンが多いですね。

ですが生徒と受け入れ企業双方が合意すれば、2年間続けての実習や就職も可能な体制をとっています。

 

 

生徒たちが注目するのは事業内容と通勤距離

―どのような企業が実習生を受け入れているのか?

 

早川氏:製造業を中心に、インフラ産業、福祉、印刷・製本、化粧品販売など多分野の企業の方にご協力をいただいています。

また、多摩地域は工業地帯が広く分散していますので、協賛企業の所在地もさまざまです。八王子市、青梅市、昭島市、あきる野市、日野市のほか、西多摩郡の企業への実習を希望する生徒もおります。

生徒が企業を選ぶ基準は、まず事業内容、次に自宅から通えるかどうかを重視しているようですね。

一方で企業の大きさはそれほど気にしていないようです。〝地元で働きたい〟という志向が強い生徒が多い印象を持っています。

 

―受け入れ先企業からの声としてはどのようなものが多いのか?

 

DS_tama_ide井出氏:非常に素直で、作業にも積極的に取り組んでくれた、よく頑張ってくれたとお褒めの声をいただきました。

新設するデュアルシステム科の長期就労訓練では3年間に渡っての実習となりますので、より実務的な作業もできるのではないかと考えております。

企業の皆様からのご期待に応えるためにも、教職員一丸となって精一杯取り組んでおります。

 

また改善点・生徒への要望として多くいただくのは、コミュニケーションに関する積極性を持ってほしいということです。

今の若い子どもたちは考えていることを伝えることが不得手であったり、自ら率先して行動することを躊躇してしまったりといった傾向がみられます。

インターンシップやデュアルシステムといった職業訓練のなかで多くの方と接することを通して、生徒たちもまたコミュニケーションの難しさを感じるとともに、その大切さを知ることができたという気づきを得ているようです。

どうぞ今後とも温かいご指導のほどをお願いいたします。

 

 

来年、デュアルシステム科を新設。地元企業により密着した技術者の育成につなげたい

―貴校では平成30年よりデュアルシステム科を新設することとなったが、新設に向けての抱負や狙いなどを伺いたい。

 

早川氏:本校は、地元企業に多くの生徒が就職する〝地元密着型〟の工業高校です。

そのため機械・電気・化学といった基礎的な学習はもちろんのこと、地元企業で即戦力として活躍するためのカリキュラムが求められています。

来年度に開設するデュアルシステム科は、就労訓練の期間を大きく延長することで、これに応えたいというものです。

 


現在本校で行われているデュアルシステムは週1日の就労訓練を1年間、原則2年次に実施するものでした。

デュアルシステム科ではこれを改め、まず1年次に地元企業を見学した上でマッチングを図り、2年次に2回、3年次に1回、それぞれ1カ月間連続しての就労訓練を行うことを計画しています。

 

しかしながらこれほど長い期間連続して訓練を行うのは本校としては初めてのことですので、生徒や受け入れ企業の皆様とも密に連絡をとりながら、期間や回数などは調節していければと考えています。

 

最大3年間に渡って就労訓練を行うことで、学生にとってはものづくりへの意欲や実務能力の取得、社会人としての自覚を得ることができるでしょう。

また企業の皆様方にとっても、技術技能の継承や若手人材の確保に役立てていただけることと思います。

 

本校がインターンシップ、デュアルシステムといった就労訓練を開始して今年で7年目となります。

ありがたいことに生徒受け入れに協力していただける地元企業の数も年々増えており、生徒たちもまた「インターンシップに参加してよかった」との感想を述べています。

今後も地元で働きたいと意欲ある若者たちと企業の皆様をつなぐため、さらなる取り組みをしてまいります。

ぜひともご支援・ご協力を得ることができれば幸いです。

 

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鍛造や鋳金について学ぶことができるのは、東京都内の工業高校でも珍しい

 

 

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資格取得やコンテストへの出場も積極的に行われており、今年夏に行われた、高校生ものづくりコンテストの電気工事部門では東京都大会で優勝、関東大会にも出場している

 

 

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学校内には、ペットボトルのリサイクルシステムも完備

 

 

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回収したペットボトルから再生品をつくる授業もある

 

 

 

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◉プロフィール

早川信一(はやかわ・しんいち)氏…東京都立多摩科学技術高等学校副校長、東京都立小松川高等学校副校長などを歴任。複数の新設校や科目立ち上げにたずさわり、2017年4月、東京都立多摩工業高校校長に就任。東京都高等学校文化連盟自然科学部門会長。

 

井出 洋(いで・ひろし)氏…東京都立多摩工業高校電気科主任教諭、キャリア教育を担当する。

 

◉東京都立多摩工業高等学校

〒197-0003 東京都福生市熊川215

TEL 042-551-3435

http://www.tamakogyo-h.metro.tokyo.jp/

 

 

 

◆2017年3月号の記事より◆

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