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異議あり!! 参院選の一番の争点はやっぱり消費増税だろ!

◆文:大高 正以知

お金
 GDP3.5%増に騙されるな

1-3月期の実質GDP(国内総生産)が、年率換算で3.5%の高い伸びを示した。これを受けて甘利明経済再生相が、記者会見で「異次元の政策投入により、異次元の景気回復が始まった」と自画自賛した上、「(これで消費税を引き上げるための)環境を整えるスタートが切れた」と、したり顔で言い放った。

昨夏の3党合意で成立した消費増税法の第18条、「景気付帯条項(名目GDP3%、実質GDP2%増)」がクリアされたという意味だ。しかし騙されてはいけない。3.5%といってもそれは、物価変動分を除いた実質GDPである。デフレに苦しむ庶民や中小零細企業の景気実感にとって、より関係の深い名目GDPの伸びは条項の半分、1.5%に過ぎないではないか。

経済成長が順調に進み、それに連れて物価や賃金が上がれば、GDPは実質より名目のほうが高くなるのが普通である。ところが2005年以来この国のGDPは、一貫して〝名実逆転〟現象を続けており(2012年は名目が475兆円で実質が519兆円)、今回の3.5%で、その差はむしろ広がったと考えられる。要するに、デフレ圧力は解消されるどころか、より深刻に推移しているというのが、本当のところなのだ。
現に高級自動車やデパート等のブランド商品を除き、全体の消費需要が伸びる気配などまるでない。それもその筈で、厚労省がまとめた3月の平均給与は、昨年末に比べて約700円も減っているのだ。そこへきて急激な円安による家計負担増(ガソリン、電気料金、輸入食料品の値上げ)である。極少数の〝株成金〟はいざ知らず、庶民の消費マインドなど上がるわけがあるまい。となると企業の設備投資も進まない。実体経済は相も変わらず低迷するしかないのだ。

ということで小欄としても、ここは黙って見ているわけにいかない。
もし甘利経済再生相の言う通り、政府与党が今のこの状況を、「景気付帯条項」のクリアされた好況だと強弁し続け、増税に突っ走る腹なら、秋に判断するなどとゴマカシは言わず、この夏の参議院選挙で堂々と主張し、国民の審判を仰ぐべきである。

 

 

脱デフレの道を閉ざしてはならない

確かにアベノミクスの第一の矢、バズーカ砲とも呼ばれる黒田(東彦)日銀の大胆な金融緩和政策で、株価は急激に上がり、円相場は急激に下がった。株が上がれば企業の時価総額=企業価値が上がり、低コストで資金が調達できるし、設備投資もし易くなる。円が下がれば企業の国際競争力が強くなり、しかも手にする利益の額が(自動的に)増え、それだけ賃金も上げ易くなる。

現にアメリカがその手法を使って、リーマンショック(2008年9月)による痛手を、短期間で克服している。FRB(米連邦準備制度理事会)がバーナンキ議長の号令一下、ドルを大量に刷り、際限なく市中に送り込むという、ドラスティックな量的緩和政策を採ることで、株高・ドル安基調を生み出し、その結果、消費と設備投資とを一気に回復させたのである。

安倍内閣と黒田日銀の狙いも、まさにそこにある。しかもデフレを脱却し、インフレ率が2%になるまで、円を刷り続けると市場にメッセージを送ることで、早ければ来年にも達成すると明言しているのだ。
そんなこんなを考えると、アベノミクスが一見、バラ色のプランに見えるのも無理はない。したがって、「景気は必ず上向く。将来の社会保障のために、消費増税は予定通り実施すべきだ」と大新聞が書き、政府高官が言えば、つい頷きたくなるのも当然と言えば当然かも知れない。

しかし果たして、そんなに上手くいくものなのか。

産経新聞の編集委員で、先の白川(方明)総裁時代、日銀の〝出し渋り政策〟を痛烈に非難し、大胆な金融緩和政策を提言してきた田村秀男氏は、同紙のコラムで次のように書いている。

 

(FRBが株高とドル安に腐心してきたのは)米国では、株価が上がればただちに個人消費や民間設備投資が好転する効果が見込めるからだ。が、日本にその法則が当てはまるわけではない。日本では家計の金融資産のうち、株式と投資信託の合計が11%、非金融系企業の債務のうち株式・出資金は37%にとどまるが、米国ではそれぞれ45%、54%を占める。従って、米国には株価の上昇が企業の資金調達を容易にし、家計の富を増進しやすい金融構造がある。(中略)お札を刷って実体経済をよくする効き目は米国ほどではない。金利を押し下げる余地はまだ残されているが、実質金利がマイナスの米国よりよりも低くすることは難しい。(中略)やはり金融緩和とマーケットに依存するだけでは、早期に脱デフレできるかどうか心もとない。(中略)このまま野田佳彦前内閣が敷いた増税路線にのめり込むと、官僚をのさばらせ、わずかに見える脱デフレの道をみずから破壊する恐れがあるのではないか。

 

まさに正鵠を射た指摘である。

確かに消費増税は、やがて否応なく必要になるだろう。しかし冒頭に書いた甘利経済再生相の言葉からも分かる通り、腹の中では絶対にやるつもりでいるくせに、「景気の回復が見えなければ実施しません」(安倍晋三首相)とウソをつくのは、余りに卑劣と言う他ない。
先ごろ民主党を離党した植松恵美子参議院議員も言っていたが、あの3党合意で当時の自民党執行部は、おそらく「しめしめ」と思ったに違いない。今度の選挙はあれから約1年になる。憲法もTPPも、もちろん重要課題だが、消費増税をいつどうするかという問題は、それらに匹敵する重みを持った、政府与党にとっての喫緊の宿題である。

もう「しめしめ」なんて腹の中でほくそ笑んでないで、この際はっきり表に出し、国民にケリをつけてもらうべきではないだろうか。
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2013年6月号の記事より

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