ブラック企業 覆面座談会

経営者達が日頃思っているけど口に出せないことを暴露

◆取材・文:加藤俊

 

覆面座談会

連合(日本労働組合総連合会)が「ブラック企業に関する調査」を2014年11月1日~6日の7日間において実施。20〜59歳の働く男女3,000人を対象にインターネットで実施した。質問項目は、「あなたが働いている会社はいわゆる“ブラック企業”だと思いますか?」。この調査結果は瞬く間にSNS等で拡散された。なぜなら、自社を「ブラック企業だと思う(どちらかと言えばを含む)」と答えた割合が26.9%にも上ったからだ。実に4人に1人が自分の勤める会社をブラック企業と捉えていたことになる。

それにしても、近年爆速で認知されてきた「ブラック企業」という言葉。企業経営者にとって、この言葉が持つ乱暴性に無自覚でいれる人は殆どいないのではないか。

そこで今日は、3人の経営者に集まってもらい、日頃思っているけれども、従業員の手前では絶対に口に出せない、経営者なりのブラック企業談を語って頂いた。

 

 

■ブラック企業という言葉を皆さんはどう思っているのか

Aさん(43)製造業:非常に怖い言葉です。何が怖いって、一度ブラック企業と見做されたら、触法行為と同じようなペナルティを受けますよね。採用をはじめ、事業活動に支障を来す恐れだってある。長期的に見れば、噂は直ぐ消えるものなのかもしれないけれども、求人などのダメージは大きいのではないでしょうか。社名で検索すると否定的な言葉が上位にでてくるとかがあり得るわけですよね。自分が仕事を探す立場になったと考えれば、社名で検索してダーティーなイメージの会社は行きませんものね。犯罪は何をすれば、犯罪になるのかの規定が明確だけれども、ブラック企業は受け手側の主観に大きく左右されるから解釈が曖昧。その曖昧さは非常に怖いです。

 

B(36)IT業:企業としては追い詰められている状態。そもそも労基法を完璧に守ること自体が難しい。大半の中小企業はブラック企業になってしまうのではないか。そのうえ、今はSNSがあるから、簡単に悪評も広まっていくし。もちろん、問題になった外食産業なんかの事例を見ていると、そりゃアウトでしょ、って思うけどさ。

 

C(49)印刷業: 私は十数年企業を経営していますが、ある程度地域に社会貢献をしている自負もあります。でも、お客様から仕事を急に頂戴することもありますからね、そのときはどうしたって従業員に皺寄せが行くわけです。皆理解してくれているから、いいですけど、でも誰かが、Twitterなどでチンコロしてしまうと、怖いなと思っています。

 

A:時代の移り変わりによって、ワークライフバランスなんて考えが持て囃され、価値観が変わったところが大きかったと思います。

 

B:人間って不思議だよな。人に元々色が付いているのではなくて、時代の中で環境が人を変えていくんだもの。例えば、ほっといても勝手に仕事をしていたやつが、ワークライフバランスが叫ばれるようになったのに前後して、結婚して2年も経つと、変わってしまうんだ。同じ人間なのに、働き方、仕事に対する向き合い方がまるきり変わってしまう。家族優先になるのは、もちろんいいんだけどさ。そして、本人が嫁と仕事との間で板挟みになっているのもわかるんだけど、でも、こっちから見ると、仕事に全力投球していたやつが、明らかにパフォーマンスが落ちているのが分かるんだよね。お客様を大切にしようって、まぁ、そういった話をするんだけど、途中なんで俺はこいつにこんな話をしなければならなくなってしまったのだろうって、思うことがある。

 

A:本当、そういった風潮に流される人達が増えてきたのは残念。

 

C:結局、不平不満を述べる人というのは労働者なんです。プロフェッショナルワーカーであれば、そういった考えにはならない。昔は職人でも何でも、その道のプロにあろうとしたものだが、最近は必ずしも皆が皆プロを目指さなくなった。環境や人が変わったというのは、プロフェッショナルというものに対する価値観や目指したいという意識が薄まったからなのかもしれません。金さえあれば良いという人と、文句ばかりいう人ばかりが目立つ社会になってしまった。

 

A:受け身であるかぎりは永遠に文句ばかりが出てくる。経営者に成りたいと想えば、どんなことにも耐えられるでしょ。そのための修業としてどんなことにも、耐えられるでしょ。

 

B:まぁ、僕は生まれ変わったら経営者にはなりませんけどね。社長に成りたいかと聞かれたら、二度とやりたくない(笑)。

 

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