オビ 特集オフショアに続く脅威?

ニッポンから「HTMLコーダー」の職は消えてしまうのか?

◆取材:加藤俊 /文:大木一弘

株式会社プレート

 

Webサイトの制作業者と聞くと、IT化が進んでおり、これからの時代も安泰な職だと思う方が多いだろう。しかし実際は、FA(ファクトリー・オートメーション)化の進んだ製造業に比べてアナログの世界であり、未だ個々の能力に頼る属人的な仕事がなされている。特に、デザイナーが描いたWebデザインを、実際にWebサイトとして表現するHTMLに変換する職、「HTMLコーダー」は最たるもので、現状、海外に業務を委託する「オフショア」化が進み、日本でコーディングを行う業者が減ってきている。

このたび、Webデザインデータを自動でHTMLに変換するツール「AUTOCODING」が改良リリースされる。いよいよ日本から「HTMLコーダー」は消えてしまうのか?

 

 

■「ニッポンのプログラマ」の脅威は過去にもあった

約10年前にも、日本からプログラマがいなくなると騒がれたことがあった。海外へ業務を委託する「オフショア」が始まった当初である。このときコーディングに関しても、同様の懸念があった。しかし、オフショア化の難しさというか、教育が十分できず質が今一つであったり、メンテナンスしにくいデータに仕上がったりと「実用には適さない」と判断されたため、仕事が無くなるまでには至らなかった。

ところが、昨今、オフショアの質は年々上がり、ベトナムや中国において実用に耐えうるWebサイトを日本の1/4程の価格で仕上げられるようになった。外国人を教育し、海外に人材を求めようとする企業が増えたことから、日本人コーダーは経験不足により質が下がってきているとまで言われる。いよいよ脅威となってきたのである。

そんな中、2015年1月、日本製のHTML自動生成エンジン「AUTOCODING(オートコーディング)」がリリースされた。「初日だけで400件以上の問い合わせがあった」と開発者の黒川真吾氏(株式会社プレート)は言う。特に、コーダーからの反響は大きく、「AUTOCODINGに任せた後に手を加えるだけで良くなった」と数多くの賛辞が送られた。

 

 

■AUTOCODINGリリース

AUTOCODING

▲AUTOCODING HP▲

 

これまで、AUTOCODING以外にも、自動でHTMLを生成するツールが、海外ではそう多くはないが数種類は存在していた。ただいずれも無駄な記述の多いHTMLが生成されるためにメンテナンスが難しく、またツールが提供しているデザインテンプレートしか使えないなど、実用には適さないものが多かった。

AUTOCODINGに関しても、同様の指摘「見た目に忠実に出力されるとはいえ、出力されたCSSはやはり機械的に出力した感を拭いきれない」(ユーザー)が一部で上がってはいたが、従来の生成ツールよりも格段に優れていることには、皆が同意していた。

そんなAUTOCODINGが、ここに来て、4月に大幅な改良リリースがなされるとの情報をキャッチ。さっそく黒川氏にお話を聞いてきた。

 

 

オビ インタビュー

いよいよニッポンからコーダーは消えてしまうのか?

株式会社プレート 黒川真吾氏

HTML自動生成エンジン「AUTOCODING」開発元 株式会社プレート黒川真吾氏インタビュー

 

-「AUTOCODING」は、どんなサービスですか?

黒川:デザイナーが作成するデザインデータ(Photoshopデータ)をHTMLに変換する、HTML自動生成エンジンです。今までは制作者が手作業で行っていた「HTML構造設計」「画像スライス」「コーディング」「品質チェック」の全工程を、コンピュータが自動で処理します。通常3~4時間かかるコーダーの作業工程が、2分程度で完了します。プロジェクト全体で見れば、制作コストを40%程度は削減できます。更に、W3C標準に準拠したHTML5、CSS3の高品質なコーディングを出力できます。日々改良を重ねていくため、インストール後古くなって行くソフトウェアの形態をとらず、インターネット上から常にご利用を頂くASPの形態で提供することにしました。

 

―なぜ「AUTOCODING」を開発されたのですか?

黒川:私たちは様々な業界のなかで、「IT業界の機械化が一番遅れている」という問題意識を持っています。ITの原材料は「人の労働力」。人不足が指摘される日本は、アジア各国にキャッチアップされつつあります。このままだと、日本のIT業界には先がない。やはり、日本は先進的な技術を突き詰めてゆくべきで、自動化できるところはコンピュータに任せ、人間の時間をより知的な作業に充てるべきなのです。こうした文脈に於いて、「AUTOCODING」をIT業界自動化プロジェクトの第1弾と位置付けています。

 

―御社が開発できた理由は?

黒川:弊社はベトナムでのオフショア事業を行っております。この事業では、海外のメンバーとのコミュニケーションを円滑に進めるため、すべての作業内容をマニュアル化しております。このマニュアルがすべての始まりです。「マニュアル化できるってことは、ツール化もできるだろう」と考え、徐々に開発を進めました。これまで3年程、社内で利用しておりますので、リリース間もないながら、既にある程度の実績を積んだシステムと言えます。

 

―これまで、ベータ版をリリースされていたそうですね?

黒川:今年の1月にベータ版をリリースし、初日だけで400件のお問い合わせを頂き、これまで1000件を超える無料アカウントを発行致しました。Web制作会社向けにリリースしたつもりでしたが、フリーランスのデザイナーやディレクターの方々からの反響が多かったことが意外でした。コーダーの方からは、「AUTOCODINGに任せた後に手を加えるだけで良くなった」とお喜びの声を頂いています。

 

-今回、どんな改良がなされたのでしょうか?

黒川:ベータ版では主にランディングページと言う単一ページだけのサイトを変換できるよう公開したものでした。今回の改良では、複数ページに対応したエンジンを公開いたします。

また、料金体系もこちらのアップデートに伴い変更予定をしています。これまでは1ページ単位での課金だったのですが、今後は月額の固定料金に変更し、よりお使いいただきやすいサービスになります。

 

-今後「AUTOCODING」の展開は?

黒川:この1年の間にレスポンシブル対応、スクリプト生成、サーバ連動、CMS連携、バージョン管理などの機能を実装し、Web制作業務のインフラとしてお使いいただけるように致します。

またこのツールを使えば、HTMLやCSSを詳しく知らなくても、HTMLコーディングが出来るようになります。いわば「HTMLコーディングの学習支援ツール」として活用し、国内はもちろん、労働力が豊かな東南アジア、アフリカ圏を中心とした職業訓練の提供を考えています。

 

 

Web製作業界の仕組み! ところで「コーダー」って?

株式会社プレート2

■たくさんの職種がアナログに活動しているWeb制作業界

Web制作業界はデジタルデータを制作しているが、その内情は店舗建築に置き換えて説明することができるアナログな世界である。

具体例をあげると、サイトの全体像を企画する「プロデューサー」がいて、制作現場で設計やスケジュールの管理をする「ディレクター」、サイトをデザインする「デザイナー」がいる。そして、デザインを受け取りWebルールに則った大工的役割を担うのが、「コーダー」である。このようにサイトによるが、多くの人がアナログに関わり、1つのWebサイトを制作していることがわかる。

 

■置き換えがきくと言われる「コーダー」の業務

各種ある業務の中で「他の人や機械に置き換えることができる」と言われているのが、大工的役割を担う「コーダー」の職だ。Web制作の最低限のルールを把握していれば、突貫工事で見かけだけ美しいハリボテのようなサイトを仕上げることはできる。ただし、検索サイトに対して「ここに画像がありますよ」としか伝えないハリボテサイトでは、「○○の情報」を探そうとするYahoo! やGoogleの検索結果に表示することができない。キーワード検索されるサイトに仕上げるためには「SEO対策」と呼ばれる工夫をした、必要な情報だけをきちんと整理整頓して盛り込むサイトが必要とされる。

また、この検索サイトのルールは日々変わる。一度完璧なWebサイトを仕上げた後も、常に最新のルールに則ったメンテナンスを繰り返すことが必要とされる。誰が見てもわかりやすいきちんと整理されたWebサイトと、きれいにメンテナンスできる知識をもった「コーダー」が揃って初めて最適なメンテナンスを完了することができるのだ。

オビ 特集

株式会社プレート

本社:〒105-0001 東京都港区虎ノ門1丁目19番5号 虎ノ門1丁目森ビル2階

Tel:03-6268-8709

年商:2億(2014年度)

http://www.plate.co.jp/

AUTOCODING

https://autocoding.jp/

 

黒川 真吾(くろかわ・しんご)氏…1982年大阪生まれ。大阪府立工業高等専門学校卒。株式会社サービスウェア・コーポレーション(現CSKサービスウェア)入社後、通販上場企業のインターネットマーケティングを担当する。2006年8月株式会社レセオ創業。2010年株式会社PLATEを創業。取締役/CTOとして現在に至る。

 

2015年5月号の記事より
WEBでは公開されていない記事や情報満載の雑誌版は毎号500円!

雑誌版の購入はこちらから