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アイセック・ジャパン青山学院大学委員会

大企業志向の固定化したキャリア観がぶっ壊れる学生活動とは!?

◆取材:加藤俊

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特定非営利活動法人アイセック・ジャパン青山学院大学委員会 委員長 兼 人材管理統括/磯目圭吾(国際政治経済学部3年・写真左) 広報ブランド戦略統括/村井祐一(国際政治経済学部3年・写真中) 山本あかり(1年・写真右)

 

「あぁ、だりーな」。筆者が学生の頃、よく口にしたセリフだ。当時は社会貢献なんてクソくらえと思っていた。そんなだから、頭の中も推して知るべし。バイトとお酒と女遊び(といっても、からっきしモテなかったが)のこと以外を考えた記憶がない。でも、学生なんてみんなそんなもんだろ。と思ったら、どうやら最近はそうでもないらしい。もちろん一概には言えないが、近ごろの学生は総じて意識が高い、という声がちらほら。で、実際どうなのか知りたくなった。どうせ聞くなら、大きな学生団体がいいということで、特定非営利活動法人アイセック・ジャパン青山学院大学委員会の学生3名に、アイセックの活動や、就職について考えていることなど、ざっくばらんに語っていただいた。

 

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※アイセックというと、2012年の夏に起きた、アイセックのインターンでルーマニアに渡航した女子大生の痛ましい事件のことが思い出される。当時、同団体は、管理体制の不備などを巡って世間から大きなバッシングを受けた。今回話を聞いた3人は、当時の質問にも真摯に答えて頂いた。だが、本稿ではその点は割愛している。「情報によって解釈が異なることからルーマニアで起きた事件への声明はすべて弊団体HPを閲覧していただくことになっています」(アイセックジャパン)という点を配慮してのことである。

私見を一つ。実際にHPを読むとわかるが、アイセックは、体制の不備を認め、改めるべきところは改めている。もとより、同団体の海外インターンシップを推進しようとする想いに責めるべき点はない。であれば、である。何より、同団体の学生は、皆一様に、志ある良い顔をしていた。それは、自堕落な青春時代を送った筆者にとっては、羨ましいものであり、同時に尊敬の念さえ覚えるものである。

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正直な話、当初は事件の際の印象から、アイセックを否定的に見ていた。ただ、話を聞いているうちに、考えを改めるに至った。お話を聞いた3人のような貢献意識の高い学生が育まれる環境である点は紛れもない事実だし、その点だけをもってしても、意義のある活動だと思ったからだ。(加藤俊)

 

アイセックの活動について

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-まずはアイセックという団体について、簡単に紹介してください。

 

磯目圭吾(以下、磯目):アイセックは海外インターンシップを運営する学生NPO団体です。世界124カ国、国内に25の委員会を持ち、学生NPO団体としては世界最大規模になります。アイセック・ジャパンは1968年に設立され、当アイセック青山学院大学委員会は設立43年目になります。

 

-海外インターンシップの運営とは、具体的にどのような活動を行っているのですか。

 

磯目:「受け入れ事業」と「送り出し事業」の2つの事業を行っています。「受け入れ事業」は、海外から学生を受け入れる活動です。企業の国際化の手助けや、海外進出の足がかりとなるマッチングを図ります。もうひとつの「送り出し事業」は日本から学生を送り出す事業で、海外インターンシップはまだまだ主流ではないので、広報から行っています。送り出し事業でのインターンシップ先は、孤児院や教育機関、農村支援などのボランティア系と、日系企業やITなどのビジネス系に大別できます。

 

-学生によるNPO団体ということですが、学生を海外に送り出す際の安全面や管理などはいかがですか?

 

磯目:個人的には、アイセックの安全対策は他団体に比べてレベルが高いと思っています。

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たとえば、語学力はTOEICで730点以上が求められます。同様の活動をしている他団体と比べて、これはかなり厳しい基準です。また、希望すれば誰でも海外インターンシップに行けるのではなく、面接によって適性をスクリーニングしています。さらに、提携している民間企業による出国前の安全講習会も義務化しています。

 

―アイセックは、他団体に比べて、学生が海外に行く際の自己負担額が少ない。これは良いように見えて、実は海外に行くリスクの自覚や覚悟が浅いまま、渡航してしまう学生を生んでいると指摘する声を聞いたことがあります。

 

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磯目:それは違いますね。一見すると、アイセックに支払う金額の負担は百万円単位で求められる他団体に比べて、安いように見えますが、これは学生の負担費用が少なく海外に行けるということではなくて、現地での資金は、航空券も含めて自己負担な点で、結局は他団体と似通った負担額が必要になります。

準備段階から必要となる時間やお金を考えても、アイセックでも、いやアイセックだからこそ、明確な意志を持った学生のみがインターンシップに行けるシステムになっています。中には、なんとなく海外に行ってみたいから希望してくるような学生もいるのかも知れませんが、こうしたシステムの中で淘汰され、あるいは意識が変わっていくのが実情です。

 

-みなさんは、どのようなきっかけでアイセックに入ったのですか?

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磯目:自分は一浪したのですが、通っていた予備校にアイセックの学生が活動を説明しに来たことがきっかけでした。大学生というと、ちゃらんぽらんしているイメージもあったのですが、彼らを見て、自分とひとつふたつしか違わないのに、こんなにしっかりしている学生もいるのだ、アイセックっていいな、という印象を持ちました。その後、大学に入学し、青学にもアイセックがあることを知り、そのまま入会しました。

 

村井祐一(以下、村井):僕の場合は、アイセックは公認団体の中でも古いところで、そんな中で何ができるか、挑戦という意味もあって入りました。

 

-アイセックの活動をしていてやりがいを感じる点、楽しい点はどんなところですか?

 

磯目:人が変わるのを見るのが楽しいですね。受け入れや送り出しの中で留学生を近くで見ていて、彼らの意識や顔つきが変わってくると、やりがいを感じます。

 

村井:僕も同じですね。

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留学生の成長を見るのももちろんですし、同じアイセックの中でも、たとえばここにいる山本はまだ1年生で頼りないですが、僕らの姿を見て少しずつ意識が変わって、今日の取材の前後で彼女の中に何かの変化があるかも知れない。営業の電話を頑張ろうとか、インターンシップを一件でも実現させようとか。そんな風に人が変わっていく姿を垣間見えるのが楽しいですし、そこに関われることに喜びを感じます。

 

山本あかり(以下、山本):私は、いま毎日がとても楽しいです!

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留学生との出会いや、先輩、仲間たちと一緒に行う活動、彼らを見て自分も成長できること、企業に営業の電話をかけて社会人の方と触れ合えるのも、すべてが楽しいです。

 

 

就職について

-磯目さんと村井さんは現在3年生ですが、いま伺ったやりがいの部分やアイセックの幹部という経験を踏まえて、ご自身の就職についてどんな希望をお持ちですか?

 

磯目:自分は、することの影響が大きな仕事をしたいです。また、人の成長や変化を見るのが好きなので、ものを教えるとか、人に頼られる事がしたいです。業界としては人材コンサルを希望していて、あるいはスタートアップした企業に入るのも良いかなと思っています。特定非営利活動法人アイセック・ジャパン青山学院大学委員会 (12)

村井:人を喜ばせるのが好きなので、人材コンサルには僕も興味があります。ほかには、企画開発系、ディベロッパーなどにも興味があります。何か仕事をすることで自分を認めてもらえる、居場所をもらえる、そんな仕事に就きたいです。「村井がいて良かったな」と思ってもらえる仕事をしたいです。

 

-アイセックだからといって、海外で働きたいとか、グローバルな企業や外資系に入りたいなどのいわゆる国際志向という訳ではないのですね。

 

磯目:そうですね。そもそも、アイセックの本質は国際交流ではなく、「リーダーシップを持った若者の輩出」です。海外インターンシップを行っているのは、国際社会の中でいかにリーダーシップを発揮できるかという観点からです。自分の就職も、国際志向というよりも、マネジメントに関する経験を活かしたいので、人材コンサルを希望しています。

 

-名の知れた企業であるとか、福利厚生という観点は重視しますか?

 

磯目&村井:特に重視しません。特定非営利活動法人アイセック・ジャパン青山学院大学委員会 (11)

磯目:アイセックにいると、わざわざ休学して海外インターンシップに行く学生や、自分もそうなのですが、インターンシップを就活の武器にするというよりは、自分の中で社会や企業を見極めるために活用する学生が多いのです。そういう前提があって色々な人と触れ合うと、固定化したキャリア観は早々に「ぶっ壊れ」ます。大企業が良くてベンチャーは嫌だという気持ちは全くないですね。

 

アイセック・ジャパン

-皆さんは青山学院大学、押しも押されもせぬ有名私立大学ですから、言ってしまえば就活は有利ですよね。そんな皆さんが固定化したキャリア観に囚われていないというのは、本心からの言葉だとしたら、アイセックって凄い団体だなと思います。

実際、大企業に勤める方が、個人の裁量が活かされない「駒」になりやすく、優秀な人材であってもその能力を発揮できないと見る向きもありますしね。ただ、その文脈でいうと、中小企業には魅力的な企業や立派な経営者が多いのですが、学生には存在が知られていないですよね。若い人に来てほしいという企業はたくさんあるのですが……。これは、企業の側やメディアの責任もありますが、学生の側からの触れ合いも少ないのでは。

 

磯目:触れ合いということで言えば、アイセックからの電話を取って欲しいです(笑)。山本はじめ多くのメンバーがたくさん電話をかけているはずなので、まずは電話を取ることで触れ合うチャンスを与えて欲しいです。

 

-なるほど。しかし、チャンスが欲しいのであれば、アイセックと関わることでの、その企業にとっての個別のメリットは何なのかを提案してもらわないと。ただ絨毯爆撃のように電話をもらって、海外の学生を受け入れると語学に堪能になるとかなんとか言われても困るワケで。自分たちの会社のことをちゃんと見てくれた上で、電話をかけてきていると相手に感じさせることが、もう少し必要なのでは。って、これは話を聞いたことがある僕の感想です。まぁ難しいのはわかるんですけどね。でも、高いコストを払って自社に留学生を受け入れるには、費用対効果を考えた上でメリットを見せて欲しいですね。弊社に突撃してきた山本さんからは、多少なりともそういう工夫が感じられましたよ。もう少し、具体的なメリットの話が見えてほしいとこですけど(笑)。

 

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磯目:確かに50~100万円を海外からの留学生受け入れ費用と考えると、高いですよね。しかし、それを採用に活かすという見方もできると思います。また、受け入れはできなくても、パートナー協力という形で資金援助すれば、もっと低い金額でパートナー企業として協力関係を築くことができます。その後の海外進出や国際化へのアプローチもしやすくなると思います。貢献意識の高い学生を自社に欲しいというのなら、アイセックとの関わりをインフラとして活かす捉え方も成立すると思うのです。

 

村井:キャンパスが使えないときに場所を提供して頂いたり、ほかにも講演やワークショップの提供や、事務用品、飲食物を提供して頂いたりというパートナーの形もあります。アイセックとしてはパートナー企業としての掲載の他、企業側の話を聞くなど、お互いにメリットのある形は色々と考えられると思います。海外インターンシップを考えていないから門前払いするのではなく、柔軟に考えて欲しい気持ちはあります。

 

-そうは言っても、5,60代の中小企業経営者たちの中には頭の固い人もいます。そういう人たちに分かってもらうにはどうしたら良いでしょう?

 

磯目:若者は、多様化していると思うのです。2,30年前と比べても、意識を高く持って自分を磨いている学生はいます。

 

-それは本当にそうですね。我々の時代と比べてもそうです。学生ベンチャーも盛んですし、みなさんのようにしっかりした意識を持った人は周りには今ほどいなかった。

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磯目:そういう学生もいることを知って欲しいですね。一様な切り口で捉えて欲しくない。生意気な口調に思われそうですが、それはもったいないですよ。

 

-確かにそうですよね。そうは分かっていても、一様に捉えたがるのが人の性。世の中には、満足せずに働いている人はとても多い。満足できる仕事というのは、意識しないとなかなか見つからないと思います。ぜひ、自分が満足できる仕事を見つけてください。今日は、どうもありがとうございました。

 

磯目・村井・山本:ありがとうございました。

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2014年9月号の記事より
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