オビ コラム

フィンテック・トップ企業「ウェルスフロント」(ロボアド)

株式会社ZUU 一村明博

 

これまでフィンテックのさまざまな分野について紹介してきましたが、今回から、いくつかの代表的な企業やサービスに注目していきたいと思います。

今回は、パソコンやスマートフォンを通じて個人投資家に資産運用サービスを提供する「ロボ・アドバイザー」のトップ企業「Wealthfront(ウェルスフロント)」に注目してみました。

 

市場は2兆ドルにとの観測も

かつてこの連載でもロボアドについて取り上げましたが、簡単におさらいしますと、ロボット・アドバイザーとは、人工知能やアルゴリズムを使い、ウェブサイトやアプリで「年齢・年収・投資額」などいくつかの質問に答えると、自分にあった投資先や投資商品を教えてくれるサービスです。

 

この分野で先行しているのは米国で、その市場規模は、2014年末時点で190億ドル(約2兆円)、2020年には2000億ドル(約22兆円)まで拡大するとも予想されています。

 

さらに、ロボ・アドバイザーを、米国タクシー業界を大きく変えた「Uber(ウーバー)」になぞらえる向きもあり、その場合の市場規模は2兆ドル(220兆円)に達するとの観測もあるほどです。その代表的な1社がWealthfront(ウェルスフロント)です。

 

 

融資サービスにも進出

創業は2011年、カリフォルニアで生まれました。資本金(資金調達額)は1億2900万ドル(142億円)です。CEOはスタンフォード大でも講師を務めるアンディ・ラクレフ氏。低い運用費用、ユーザー体験に徹底的にこだわったインターフェース、そして、損益通算システムと連動させたリバランス機能などの特徴が広く個人投資家に受け入れられました。5年足らずで預かり資産を30億ドル(約3300億円)にまで拡大させて注目されています。

 

同社は、プロモーションがユニークな企業としても、名を知られています。たとえばプロスポーツチームとの提携が反響を呼び、若手のIT起業家たちの支持を集めています。

 

そのトップランナーが今年になって、新たな試みとして「融資サービス」を投入することが明らかになっています。具体的には、ウェルスフロントの口座に10万ドル(約1100万円)以上の運用資産を保有している顧客を対象に、最高で30%の融資を行うというものです。

 

ロボアドのジャンルは、実はフィンテックの中でも激戦地となりつつあります。

投資ポートフォリオや金融商品を紹介してくれるだけでは、目新しさはありません。こうしたサービスに依存しているだけでは、ライバルに差をつけることは不可能です。

 

そこでウェルスフロントが目をつけたのが、運用資産(金融商品)を担保にした融資です。

こうしたサービスは、かつては一部の富裕層しか受けられませんでした。テクノロジーを活用することでコストを抑え、一般の投資家を含めた広い層に、富裕層向けのサービスを提供し、差別化を図る戦略と見られます。

 

オビ コラム

ZUU 一村氏

筆者プロフィール/一村 明博

東京都出身。成蹊大学法学部卒業。1993年、大和証券入社。富裕層や中小企業オーナーを主な顧客とする個人営業に従事し、常に全国トップクラスの営業成績を残す。入社3年目には全国NO.1を獲得。その後、2001年に松井証券入社。2004年、最年少(当時)で同社営業推進部長、そして2006年には同社取締役に就任。

高度かつ専門的な知識が必要とされる金融業界において20年以上にわたり500人以上の部下を育てた人材育成のプロフェッショナル。

〈お問い合わせ先〉 info@zuuonline.com

 

株式会社ZUU

http://zuu.co.jp/

東京都目黒区青葉台3-6-28 住友不動産青葉台タワー9F

 

 

◆2017年7月号の記事より◆

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