◆文:一村明博 (株式会社ZUU)

(写真=pixabay)

 

外国にお金を、たとえばアメリカに10万円送りたいと思ったらまずどうしますか?

おそらく、いつも使っている銀行に行って、国際送金の手続きをするのではないでしょうか。

しかし、国際送金を使ったことがある方はご存じだと思いますが、思いのほか手数料や日数がかかります。

 

国境を超えない国際送金サービス

まず銀行の窓口に出向きます。一般の窓口とは別の”不便な場所”に設置されていることが多い送金受け付けの窓口に行き、複数の書類に必要事項を記載します。この手続きで手数料が5000円ほどとられます。

さらに通貨の両替の際に為替手数料が請求されます。「手数料無料」をうたっていても、為替レートに「スプレッド」と呼ばれる、1%〜2%ほど上乗せされたレートが適用されます。

こうして10万円の送金に必要な金額があっという間に12万円くらいになってしまいます。

 

こうした面も課題解決に取り組んでいるフィンテック企業があります。それが今回紹介するTransferWise(トランスファーワイズ)です。

トランスファーワイズはネットで簡単・格安に海外送金できるサービスを提供しています。2010年に設立されたスタートアップで、VirginやPaypal、Skypeなど名だたる企業が株主となっています。

 

トランスファーワイズは国際送金サービスを提供していますが、「海外送金」をしません。

どういうことでしょうか。

 

まず今回、「アメリカにいる友人Aさんに10万円送金したい」としましょう。すると、トランスファーワイズが逆に「アメリカから日本のBさんに10万円送金したい人」を見つけてくれます。

 

ここで、「自分がアメリカのAさんに送ろうと思った10万円は、アメリカのAさんではなく日本のBさん」に送られるわけです。逆に「日本のBさんに送られる予定だった10万円は、アメリカのAさん」に送られます。

 

こうしてお金が国境を超えないので、両替をする必要がなく、もろもろの手数料を削減できるわけです。

少々乱暴な言い方をすると、トランスファーワイズの正体は「国際送金しない国際送金サービス」「送金ニーズのマッチングサービス」なのです。

 

ちなみに手数料は、海外のお金を日本に送金したい場合(日本円で受け取る)は送金額の1%、日本円を送金したい場合(海外通貨で受け取る)は0・5%です。つまり10万円なら500円~1000円ほど。受け取り確認も1-2営業日とスピーディーです。

 

同社の公表によると、利用者数は100万人を突破し、月間の合計送金額は1100億円を超えるそうです(2016年9月データ)。従来型の送金手法と比較すると、これまで利用者が負担していた送金費用を1カ月当たり50億円以上削減できているともいわれています。

 

LINEと同じ技術を活用

トランスファーワイズが利用している技術が「P2P」と呼ばれるもので、SkypeやLINE などのサービスもこの技術を使っています。これは「Peer to Peer(ピア・ツー・ピア)」の略で、インターネットの通信方式の一つです。

特定のサーバーを介さずコンピューターとコンピューターを直接につなぐ仕組みです。

 

代表取締役は、株主でもあるSkypeの最初の従業員でもあった、ターベット・ヒンリクス氏。P2P技術を熟知しているヒンリクス氏が率いるトランスファーワイズ。昨年2016年には日本法人も設立しています。

 

国境を超えたお金のやり取りは今後増え続けると思われます。トランスファーワイズのような取り組みは銀行の既存サービスにも大きな影響を与えるのではないでしょうか。

 

zuu 一村氏

筆者プロフィール/一村 明博

東京都出身。成蹊大学法学部卒業。1993年、大和証券入社。富裕層や中小企業オーナーを主な顧客とする個人営業に従事し、常に全国トップクラスの営業成績を残す。入社3年目には全国NO.1を獲得。その後、2001年に松井証券入社。2004年、最年少(当時)で同社営業推進部長、そして2006年には同社取締役に就任。

高度かつ専門的な知識が必要とされる金融業界において20年以上にわたり500人以上の部下を育てた人材育成のプロフェッショナル。

 

〈お問い合わせ先〉 info@zuuonline.com

 

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