担保の有無でなく「いいね!」が融資を決める?

キャベツ(cabbage)をデザインした会社ロゴのKabbageは、中小企業や個人向けに融資サービスを提供する企業です。最近では、2017年8月にソフトバンクが2億5000万ドル投資したというニュースが報じられました。2009年にアトランタで設立された新興企業ですが、15年の段階ですでに評価額が10億ドルを超え、いわゆる「ユニコーン」企業になっています。

 
同社のサービス、ビジネスの特徴は3つほど挙げられます。まずは融資に関する審査がオンラインで完結する点です。Kabbageには顧客が11万5000人いるそうですが、顧客は融資のために店舗などに足を運ぶ必要はありません。従来、銀行などの金融機関から融資を受けるには店舗に出向くことが当たり前でした。面談をしたり、書類を提出したりと複数回に出向く必要すらありました。それを考えれば、Kabbageが便利であることは言うまでもありません。

 

しかも、審査のスピードも驚くほど速いそうです。審査時間は数分とうたっています。審査に通過すると、融資されるお金は通常の銀行口座なら0~3日、PayPal(ペイパル)なら数分で振り込まれるそうです。金融機関だと審査から入金までに2週間はかかります。このスピード感は既存の金融機関には大きな脅威でしょう。

 

3つ目が最大の特徴ともいえる「審査」の仕組みです。Kabbageの審査はオンラインで完結すると上で述べましたが、これは顧客企業が利用するSNSやSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)のデータを分析して、信用力を測るためです。

 

分析するデータはたとえば「PayPal」などでの決済情報、クラウド会計サービスやアカウント・アグリゲーションサービスにおける会計情報。ECサイトに出店しているならAmazonやebayでの取引履歴や売上情報などです。SNSでの友達数や発言内容までも対象です。これらを同社の審査アルゴリズムが分析するのです。

 

そこから、売上が伸びているか、顧客は増えているのか、顧客数が多いのか特定顧客に依存しているのか─などを審査するといいます。まるで経営コンサルテタントやアナリストのようなアプローチといえます。極端に言えば、普段使っているSNSでの評判、「いいね!」や「シェア」「友達」の数が融資条件(金額や金利)を決めてしまうのです。これまでに同社は10万件以上の顧客に対し、35億ドル超の融資をしています。

 

最後に、Kabbageの仕組みをもう少し掘り下げてみましょう。これまでフィンテックサービスといえば、銀行や証券など既存の金融機関が提供しているサービスを代替するものがほとんどでした。
しかし、Kabbageは、フィンテックのフロントランナーであるPayPalや、フィンテックの代表的な分野であるクラウド会計サービスのデータを利用するサービスです。つまりKabbageは、フィンテックサービスを利用してフィンテックをさらに進化させているのです。既存の金融機関が最も恐れるべきなのは、従来からある金融サービスを必要としない、この新しい構図ではないでしょうか。

 

筆者プロフィール/一村 明博
東京都出身。成蹊大学法学部卒業。1993年、大和証券入社。富裕層や中小企業オーナーを主な顧客とする個人営業に従事し、常に全国トップクラスの営業成績を残す。入社3年目には全国NO.1を獲得。

その後、2001年に松井証券入社。2004年、最年少(当時)で同社営業推進部長、そして2006年には同社取締役に就任。高度かつ専門的な知識が必要とされる金融業界において20年以上にわたり500人以上の部下を育てた人材育成のプロフェッショナル。