顔認証技術が注目されている理由

今、顔認証技術が注目されている。

顔認証技術自体は昔からある技術だ。そもそも、顔認証技術の始まりは日本だと言われている。1973年に金出教授が京都大学でスタートした研究がベースになっているそうだ。1993年にはアメリカ陸軍研究所が中心となって顔認証アルゴリズム・コンテストを行い、共通の評価データベース基盤を持ったことで急発展した。そして1997年ごろからは米国メーカーが商品化を開始した。中国でも2億人が顔認証システムを使用していると言われる。

 

そして、なぜ今、これほどまでに顔認証が注目されているのだろう?

 

実はここ3年ほどで顔認証の技術が大幅に進化した。

AIの代名詞とも言われるディープラーニング技術の進歩のおかげである。ディープラーニングとは、人間の自然な行為をコンピュータに学習させる機械学習の手法であり、特に自動運転車、また、医療機器、家庭用機器等において重要な役割を果たしている。今、ディープラーニングは、かつてなく高いレベルで認識できるようになっており、画像認識などのタスクにおいては、人間の認識能力を超えるまでになっている。

 

顔認証においては、積極認証と非積極認証の2方式がある。

顔認証における積極認証は、カメラを直視して静止した状態で認証する方式である。それに対して非積極認証では、歩行中などに本人が意識せずに認証される。

照合処理については、積極認証に対して、非積極認証の方が格段に難しい。求められることが高度だからである。高速かつリアルタイムに、複数人が同時に、低い解像度でも、あらゆる顔の角度でも、そして様々な照明条件のもとでも認証ができることが求められる。

 

よって、これまでの顔認証技術では実用レベルで積極認証が限界だった。積極認証は空港の出入国審査などユーザーの協力を得やすい環境では有効である。ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)でもこのタイプの顔認証が採用されている。

しかし、扉の解錠のための認証や最近盛り上がりを見せているスマートリテール(店舗での利用)、スマートオフィスなど、カメラを意識していない個人を識別したい状況の大半は「カメラを直視して静止」してもらうことは現実的でないため、顔の積極認証システムは採用できない。

 

そこでディープラーニングの進化によって、高度な AI(人工知能)技術を採用した顔認識エンジンが登場した。これが非積極認証である。動いていても、また直視ではなく斜めであっても認証が可能になったのだ。

そしてまた、これによって多様なニーズが顕在化することになった。

 

例えば、かつてタイムカードを使っていたオフィスの入退室管理、カウンターで数えていた店舗での来店者調査、木札を裏返していた工事現場での工員管理などは、動いている人の認識を前提とするため、ハンズフリーな認証方式があればもっとスムーズだったはずだ。

 

中国ではすでに2億人が使っている顔認証システムが、発祥の地日本が顔認証後進国となっているのは皮肉である。

しかし、日本においても、今後は観光施設、ショッピングモールなどでの人流解析、学校、学習塾の出欠管理、店舗のセキュリティ管理、社会福祉施設の安全管理、博物館やバスターミナルや遊園地などのサイネージなど様々な場面においても、顔認証は最強にして最適な認証方式ゆえに、利用が検討されている。

実際、南紀白浜エリアにおける”顔パス旅行”の実証実験「IoTおもてなしサービス実証」では顔認証が積極的に使われている。また、CES2020ではトヨタがスマートシティ「WovenCity」の建設を発表し、こちらでも顔認証が採用される。そのトヨタも協力するつくばスマートシティ協議会においても、モビリティイノベーションによる新たな統合型移動サービスの実現を目指しており、顔認証による乗降時決済などの新たな社会サービスが検討されている。

 

生体認証において特に顔認証が注目されている理由

空港での入出国手続やクレジットカードの使用時など、現代人の生活で「その人である」ことを証明する「認証」が必要なシーンは多い。

 

その方法として従来は許可証や免許証などが使われてきたが、物体による認証はそれらを紛失したり、盗難にあったりするリスクがあり、利便性さえ損なわなければ生体認証のほうが認証方法として優れている。

 

これまでは、パスワードを使う知識認証方式、許可証や免許証などの所持情報方式が認識方式としてメインで使われてきた。しかし、知識認証は記憶したり変更したりする管理が煩雑である。また物を介する認証は、紛失したり盗難にあったりするリスクが大きい。

そこで求められてきたのがパスワードレスな生体認証である。利便性さえ損なわなければ、セキュリティ上の意味合いからも、生体認証は優れた認証方法だと言える。

 

生体認証の中には、指紋認証・静脈認証・虹彩認証などもあるが、どれも一長一短である。

指紋認証は長らく空港などで使われてきたが、高齢者や手荒れの激しい人、指を酷使する職業の人などは指紋が消えているため、正確に登録することが難しい。また、犯罪捜査のイメージがつきまとい、登録に抵抗感を覚える人もいる。
虹彩認証は、正確性が高いものの、読み取り装置が大きく、システムが高価だというデメリットがある。さらには目の細い人や、眼鏡をかけている人の場合、読み取りづらい。

静脈認証についても、複雑かつ装置が大きいというデメリットゆえに実績データも少なく、病歴がわかる可能性もあり、その場合は個人情報の問題も出てくる。

 

顔認証が特に注目されているのは、以上のような他の生体認証のデメリットがきわめて少ないからだ。それは、人間の身体の中でも「顔」が有するいくつかの特殊性ゆえである。

顔は身体の中でも比較的面積が広く、かつ基本的には露出している。また、手足などと異なり、遠くからでも複数人同時に認識することが可能である。

これらは他の生体認証にはない特徴であり、顔認証の汎用性が高い要因となっている。

また、大型の装置を必要とせず、利便性と精度という点では他の生体認証方式と比較すると群を抜いており、さらには活用シーンが多岐にわたる。

一度、登録してしまえばなにか「モノ」を持たなくても認証ができ、汎用性の高い顔認証は今後も利用が進んでいくと思われる。

時代はパスワードを不要とする「顔パス」の時代となる。

弊社でも「FaceMe」という顔認証プログラムを持っており、様々な用途で利用相談をいただいている。次回以降、実際の利用用途をご紹介していきたい。