7月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比3件増の70件

3カ月連続で前年を上回り、7月としては過去10年で最多。新型コロナウイルスの感染拡大で国境を超える海外案件は低調だったものの、国内案件が底堅く推移した。一方、案件の小型化傾向にも一服感がみられた。取引金額10億円超のM&Aは7月に13件を数え、3月(15件)以来4カ月ぶりに2ケタに回復した。全上場企業に義務付けられた東証適時開示のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online編集部)が集計した。

外食で2件の注目M&Aがあった。一つはコロワイドが仕掛けた大戸屋ホールディングスへのTOB(株式公開買い付け)。大戸屋は猛反発し、敵対的買収に発展した。もう一つはペッパーフードサービスによる「ペッパーランチ」事業の売却だ。主力の「いきなり!ステーキ」事業に経営資源を集中して再建を目指す。114店舗閉鎖に合わせ、約200人の希望退職者を募った。
金額トップは、医療機器メーカーの川澄化学工業(東証2部)をTOB(株式公開買い付け)で完全子会社化する住友ベークライト。成長領域の血管内治療、内視鏡治療など低侵襲治療分野で事業展開を加速するのが狙いで、買付代金は約270億3880万円。2位に、三井物産傘下でブドウ糖を製造するサンエイ糖化(愛知県知多市)の全株式を150億7500万円で取得する昭和産業の案件が続く。

金額100億円超の大型M&Aは上記の2件にとどまり、依然低調。ただ、10億円超でみると、1月15件、2月23件、3月15件の後、4月4件、5月7件、6月8件と3カ月連続で1ケタだったが、7月は13件(前年同月は14件)に持ち直した。海外案件は米国5件、中国3件をはじめ合計13件。6月(9件)より増えたが、前年同月比では4件少ない。大気社がクリーンルーム向け部材製造のインド企業を45億円超で子会社化するのが最も大きく、10億円超はこのほかにダントーホールディングスが米住宅金融会社を子会社化する案件があるだけ。

業種別で多かったのはホテル・宿泊関係の4件。このうち新日本建物は自己破産したファーストキャビン(東京都千代田区)のカプセルホテル事業を取得した。バルニバービは料理旅館道「南禅寺参道 菊水」を運営する傘下の菊水(京都市)の売却を決めた。

 

7月:金額上位案件
1 住友ベークライト、川澄化学工業をTOBで子会社化(270億円)
2 昭和産業、三井物産傘下のサンエイ糖化を子会社化(150億円)
3 ペッパーフードサービス、ペッパーランチ事業を投資ファンドのJ-STARに譲渡(85億円)
4 コロワイド、大戸屋ホールディングスをTOBで子会社化(71.7億円)
5 大気社、クリーンルーム部材製造のインドNicomac Clean Rooms Far Eastを子会社化(45.6億円)
6 ファーストブラザーズ、ビル管理の富士ファシリティサービスを子会社化(21.7億円)
7 栗林商船、日本通運傘下で青函フェリー運航の北日本海運を子会社化(20.3億円)
8 電算システム、情報セキュリティー製品輸入のピーエスアイを子会社化(17.1億円)
9 ポート、マッチングサイト「外装塗装の窓口」運営のドアーズを子会社化(16.1億円)
10 ダントーホールディングス、米住宅金融会社SRE Mortgageを子会社化(14.9億円)