3月として2008年(111件)以来13年ぶりの高水準

2021年3月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比6件増の94件で、3月として2008年(111件)以来13年ぶりの高水準だった。前月比では1件減。2カ月連続で90件台に乗せるのも13年ぶり。コロナ禍の状況下、1都3県の緊急事態宣言の延長(3月21日解除)と重なったものの、年度末にかけてM&Aラッシュの様相を呈した。

取引金額は1兆1232億円で、前年同月(5728億円)の倍近くに膨らんだ。米IT企業を1兆円超で買収する日立製作所の巨額案件があったことから、2月に続いて月間1兆円の大台を突破した。ただ、日立を除けば、最高は200億円台にとどまり、総じて案件規模は小粒だった。

全上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online編集部)が集計した。

3月の大半を占めたのが日立による米グローバルロジック(カリフォルニア州サンノゼ市)の買収。買収金額は有利子負債の返済を含めて約1兆368億円(96億ドル)に上り、日立として過去最大の買収となる。7月末に買収完了を見込む。

グローバルロジックは顧客企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援に関するリーディングカンパニーとされる。日立は「ルマーダ(Lumada)」と名づけた独自のIoT(モノのインターネット)基盤の世界展開を加速する。

取引金額100億円超の大型案件は日立を含めて3件と、2月の11件から大きく減った。総件数が伸びた半面、案件規模は小型化の傾向が目立った。

金額2位と3位はいずれもTOB(株式公開買い付け)。なかでも注目されたのは中堅電機メーカーの船井電機に対する案件。TOBを仕掛けたのが出版事業を手がける秀和システム(東京都江東区)だったからだ。赤字が常態化している船井電機は、投資家として知られる秀和システム会長兼社長の上田智一氏に経営立て直しを託す。

廃棄物処理・リサイクル業界では大型の経営統合があった。タケエイとリバーホールディングスが10月に共同持ち株会社を設立することで合意した。売上高規模は700億円を超え、アサヒホールディングスに次ぐ業界2位に躍り出る見通しだ。

3月M&A:取引金額上位

1 日立製作所 米IT企業のグローバルロジックを買収 1兆368億円
2 イグニス 米ベインキャピタルと共同でMBOを実施し、株式を非公開化 263億円
3 秀和システム 中堅家電メーカーの船井電機をTOBで子会社化 209億円
4 アイ・シグマ・キャピタル 昭和電工傘下の化学品商社、昭光通商をTOBで子会社化 74億円
5 NFCホールディングス 比較サイト運営子会社のウェブクルー(東京都世田谷区)を経営陣に譲渡 35億円
6 フリー 電子契約サービス「NINJA SIGN」展開のサイトビジット(東京都千代田区)を子会社化 27.8億円
7 朝日インテック 腹腔鏡手術支援ロボット開発のA-Traction(千葉県柏市)を子会社化 26.8億円
8 デジタルハーツホールディングス メタップス傘下で中華圏マーケティング支援のMetaps Entertainment(英バージン諸島)を子会社化 21.6億円
9 東京通信 電話相談サービス「カリス」運営のディファレスト(東京都渋谷区)を子会社化 20億円
10 ニッパンレンタル MBOで株式を非公開化 20億円