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実例で見るクラウドソーシング活用法①

 忍者たい焼き×ランサーズ

◆文:関島 慶太(ランサーズ株式会社)

 

インターネットを通して、スキルを持った不特定多数の相手に仕事を受発注する「クラウドソーシング」。2013年7月号で紹介した、このクラウドソーシングの雄「Lancers(ランサーズ)」の協力を得て、今号からは実際に仕事を依頼した企業の事例を紹介していく。クラウドソーシングが仕事のあり方を変えていく様を見ていこう!

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古くから東京の下町として親しまれてきた観光地、浅草。最近では東京スカイツリーのお膝元になったことで、ますます活況を呈している。そのスカイツリーがオープンしたのと同じ2012年、この地に誕生したのが、今回ご紹介する一風変わったたい焼き店「浅草忍者たい焼」だ。このお店、その名の通り、たい焼きが忍者の格好をしている。そのデザインの奇抜さから、多くのメディアに取り上げられ、現在お店は大繁盛。

 

実は、このたい焼きの誕生に、ランサーズが深く関わっている。経営者の瀧口氏は、忍者たい焼きのキャラクターと、実際の焼き型のデザインの作成を、どちらもランサーズで行っているのだ。

氏は、もともとテーマパークに勤務して、アニメ作品やゲーム作品のキャラクターをモチーフにしたキャラクターフードの開発に携わっていた。当時から、いつか自分でもオリジナルのキャラクターフードを創りたいと考えていたという。構想はやがて、「たい焼き」が忍者服を着て、日本刀を差している「忍者たい焼」のアイデアに纏まっていった。

 

しかし、アイデアは生まれても、それを形にする上で必要なデザインスキルが無かった。なまじ素人が手を出すより、きちんとしたプロにデザインしてもらいたいという思いもあった。そこで「忍者たい焼」のキャラクターとロゴを制作しようと、あれこれネットで検索した結果、瀧口氏が辿りついたのがクラウドソーシングサイト「ランサーズだった。

 

「不特定多数のデザイナーから、同時に複数の提案を受けて、気に入ったデザインを選んでいける」「複数の提案の中からデザインを選べるにも関わらず、制作会社への外注に比べて安いコストで依頼できる」(コンペ方式 ※1)。

このような、一般的な外注には無いランサーズの特徴は、氏に「このサービスであれば理想の条件で自分の求めるデザインに出会えるのではないか」と期待させた。

そして、実際に素晴らしいデザインが上がってきた。

※1/コンペ方式…コンペの様に、依頼に対してランサーズに登録する複数のクリエイターが提案を行う依頼方式。

 

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クラウドソーシングの可能性に魅せられた氏は、たい焼きの焼き型を製作する際も、ランサーズを活用した。「焼き型の立体デザイン」を作るにあたって、電化製品等の立体デザインを手がける「工業デザイナー」をランサーズのクリエイター一覧の中に見つけたのだ。そのデザイナーの過去作品(ポートフォリオ)を見たところ、どれも緻密で美しいデザインであったため、「この人なら間違いない!」と思い、直接依頼を行ったそうだ。(プロジェクト方式 ※2)

※2/プロジェクト方式…クリエイターから提案される仕事計画や、作品・スキルから判断し、特定のクリエイターに直接仕事を依頼する方式。

 

こうして瀧口氏は、「忍者たい焼」の商品開発に欠かせない「平面」と「立体」のデザインを、ランサーズを最大限活用することで完成させた。クラウドソーシングの無かった時代ならば、浅草忍者たい焼きは、今のような形で日の目を見ることはなかったはずだ。

この事例から、中小企業は何を読み取れるだろうか。従来、商品のアイデアはあっても実現するスキルが伴わないと、仕事として具現化するハードルは非常に高かった。ところが、クラウドソーシングの登場は、いとも簡単にこの障壁を失くしてしまったのである。従来の常識を破る安いコストで、且つ、数十人ないし数百人単位の知恵を絞った仕事を前にすれば、仕事の在り方そのものの変換を感じるはずだ。

 

今はその端境期。町工場にとっては、発注者としてだけでなく、受注者として仕事を受ける窓口としても、クラウドソーシングは新しい未来を開いてくれる。ネットを通して、世界から仕事を受注できる可能性があるのだから!

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【取材協力】

●ランサーズ㈱

〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-10-13 渋谷Rサンケイビル7F

http://www.lancers.co.jp

 

●忍者たい焼

〒111-0033 東京都台東区花川戸2-15-3

TEL 03-5830-8900 営業時間…12:30~20:00(火曜日定休)※夏季は土日のみ営業