オビ コラム

更に加速する日本企業のアジア展開

現地で上場するという選択肢を考える

◆文:冨田和成(株式会社ZUU代表取締役社長兼CEO)

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日本企業の海外進出の流れは毎年のように加速しています。一昔前のトレンドは中国でしたが、その流れが台湾や香港、またタイやシンガポールを中心とする東南アジアに移ってきています。その中で、現地での株式上場を視野に入れる企業が増加しており、この2年間で10件以上の企業様が弊社に相談に来て頂いている状況があります。

 

ちなみに、人気の高い香港、シンガポールの上場基準はかなりハードルが高く、日本企業で上場している例もまだ少ないのが実情です。しかし今後は現地およびグローバルでの知名度アップ、資金調達の多様化を狙って挑戦する日本企業が増えていくと見られています。

 

上場で得られるメリットとは?

現地企業として根付くことで、成長する消費市場/金融市場で一定の存在感を発揮することも大切な戦略です。上場で得られるメリットはズバリ「知名度」と言えるでしょう。しかも現地だけではなくグローバルに名が知られます。主要国の上場企業の株価の推移は、日々のニュースですから、そのたびに世界中のメディアに社名が掲載されます。それだけ人々の話題になっていきファンも増えていきやすくなります。

そもそもアジアへの投資が活発になったのは円高の影響が大きく、国際競争力を得るためにも生産拠点を海外へ求めていく必要がありました。さらにグローバル経済が進み、国内にいたのではマーケットが見えないこともあり、現地主義が広がってきています。アベノミクス以降、行き過ぎた円高時代は終わり、円安へ戻りつつある昨今、資金調達についても多様化が不可欠となってきました。今後は現地での資金調達というメリットも注目されます。

 

アジアの証券取引所の概況

海外企業が上場している市場としては、シンガポール、台湾、香港、韓国が知られています。いずれも急成長時代を経て、これから資本市場が充実していくと期待されている地域であり、規模が大きくなっていけば取引も増え、上場企業も増える好循環になっていきます。ただ、日本から見ると、どの市場も上場へのハードルが高く感じられ、そこまでの努力をして本当にメリットが得られるのかと考える企業もあるようです。

一方で、香港市場にあえて上場する日本企業、東証をやめてアジアへシフトする企業といった動きも、まだ少ないですが出てきています。

 

中国など主要国での上場基準 香港の場合

多くの日本企業が考えているのは香港市場でしょう。香港証券取引所は世界中の企業が上場を検討するアジアNo1の市場と言えます。中国の入り口であるだけではなく、国際資本市場からの資金調達にも適しているからです。上場企業数は1643社で、時価総額は計3兆1007億ドル(2013年末時点)で、同時点で世界第6位の規模を持ちます。また、IPO(新規株式公開)での資金調達で2009年から2011年までの3年連続で世界一の規模となったことも印象的です。

香港市場には、メインボード(大型優良企業)とGEM(成長企業)の2つの市場があります。メインボードが主ですので、その上場基準からいくつか重要なポイントをあげると、3年以上の会計年度があること、最低時価総額2億香港ドル以上、浮動株時価総額5,000万香港ドル以上、株主構成として浮動株数が株式総数の25%以上、300名以上の株主、上位3名の株主の株数は浮動株総数の50%以下であることが求められます。このほか財務内容にも厳しい条件があります。

 

そのほかの国の上場基準 台湾、シンガポールの場合

一方、台湾はどうでしょうか。TWSE(台湾証券取引所)とGTSM(台湾証券グレタイ売買市場)があります。TWSEは、3事業年度以上の実績があり、払込資本金6億新台湾ドル以上、または純資産が6億新台湾ドル以上、または市場価格が16億新台湾ドル以上であることが求められます。GTSMは2事業年度以上で、純資産が1億新台湾ドル以上です。

そしてTWSEでは財務状況として、直近3事業年度の累積税引前純利益が2億5000万新台湾ドル以上であり、かつ直近1事業年度の税引前純利益が1億2000万新台湾ドル以上であり、かつ未処理損失がないことを求められます。GTSMは直近1事業年度の税引前純利益が400万新台湾ドル以上であることなどが求められます。

注目のシンガポールは、SGX(シンガポール証券取引所)は、メインボードとカタリストの2つの上場基準があります。メインボードは3事業年度以上の実績があり、直近事業年度で3000万S(シンガポール)ドル以上の連結税引前純利益があること。または直近事業年度で純利益を計上している時価総額1500万Sドル以上であること。または直近事業年度で営業収益を計上している時価総額3000万Sドル以上の企業です。最低株主500名で、一般株主が25%を占めていることなどが求められます。

 

専門家のサポートが不可欠

このように魅力的な証券取引所はいずれも上場基準が厳しいのが現状です。詳しく触れることはできませんでしたが、ロックアップ(一定期間、発起人の株式売買禁止)条項もありますし、提出書類もそれぞれに違いがあります。

現地で信頼できるパートナーを選び、国際的な会計事務所や優れたコンサルティング会社を選んで進めていくことが重要です。自分たちだけでは限界があるので、専門家のサポートが不可欠となります。

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富田

【プロフィール】

冨田和成(とみた・かずまさ)…株式会社ZUU 代表取締役社長兼CEO。大学在学中にソーシャルマーケティングにて起業。2006年に一橋大学を卒業後、野村證券株式会社に入社。支店営業にて同年代のトップセールスや会社史上最年少記録を樹立し、最年少で本社の超富裕層向けプライベートバンク部門に異動。その後シンガポールへの駐在とビジネススクールへの留学やタイへの駐在を経て、本店ウェルスマネジメント部で金融資産10億円以上の企業オーナー等への事業承継や資産運用・管理などのコンサルティングを担当。2013年3月に野村證券を退職し、2013年4月株式会社ZUUを設立、現在に至る。

 

◆2015年2月号の記事より◆

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