◆文:冨田和成(株式会社ZUU 代表取締役社長兼CEO)

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(写真=pixabayより)

 

インターネットの隆盛によってすでにマーケティング戦略や手法の大部分はデジタルに移行した感がありますが、その中核となる「Webマーケティング」は従来型のマーケティングと何が異なるのでしょうか?

 

広告やセールスプロモーションなど認知獲得を目的とした従来型のオフラインでの手段をアウトバウンド、Webなどオンラインでの手段をインバウンドと呼称するようになりました。

これらはWebマーケティングの時代になって、従来のプッシュ・プル戦略がそれぞれアウトバウンド・インバウンドと置き換えられたもののようです。

しかし、概念としてアウトバウンド・インバウンドはより広義のフレームワークであり、その中で顧客との接点や関係作りの方法論としてプッシュ・プル戦略が位置づけられると捉えた方がよいでしょう。Web上での施策を新たなマーケティング手段として取り入れることで、従来のマーケティングよりも多面的に顧客との関係を構築できるようになったからです。

 

顧客との関係性を多面的に捉えるということは、利用できる手法やチャネルが増えたという単純なことではありません。顧客に製品やサービスの情報を「伝える・届ける(=アウトバウンド)」だけではなく、「見つけてもらう・探してもらう(=インバウンド)」方法を取り入れるということです。

それにより、顧客との関係性の作り方と維持・強化をアウトバウンド・インバウンドの両面で捉えることが可能になりました。これがWebマーケティングの本質です。

 

従って、Webマーケティングには必ずしもインバウンドに限らず、アウトバウンドな手段も含まれます。これは従来のマーケティングミックスでも同じです。インバウンドかアウトバウンドかの二者択一ではなく、より有効なマーケティングのために適切な手法を最適にミックスさせることこそが重要といえるでしょう。

そのためには潜在的な顧客についての理解が不可欠であり、この点では従来のマーケティングと変わりはありません。また、従来とは比べものにならないほどの膨大な顧客情報の蓄積と詳細な分析が可能になりました。そしてこれはマーケティング戦略全体のフレームの中で検討し活用すべきものです。

 

しかし「Webマーケティング」はすでに特別な手法ではありません。潜在的な顧客との関係を構築・維持・強化するという目的は従来のマーケティングと同じであり、その重要性や規模を考えると従来のマーケティングがWebマーケティングに駆逐されることはないでしょう。むしろ、両者をより融合・統合していく者がますます有利になっていくと考えられます。

 

最後にお伝えしておきたいのはWebマーケティングはコストが低く抑えられるという誤解についてです。確かにWebマーケティングは小規模な予算で始められますが、効果的に遂行するためにはできる限り多くの顧客情報を収集・蓄積すること、その顧客情報を緻密かつこまめに分析すること、PDCAサイクル(Plan〈計画〉→ Do〈実行〉→ Check〈評価〉→ Action〈改善〉)を早く回して機動的に施策を打つことが必要です。

そのためには十分なマーケティング予算の確保とヒューマンリソースの投入が必須であり、今後は投資規模の多い者の方が有利になっていくでしょう。

これからは「Webマーケティング」だけにとらわれず、オフライン(従来型のマーケティング手段)とオンライン(Webマーケティング)をミックスさせる、包括型のマーケティング戦略の立案能力がますます求められることでしょう。

 

ZUU

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ZUU冨田写真(内)

筆者プロフィール/冨田和成

 

神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。2006年大学卒業後、野村證券株式会社に入社。本社の富裕層向けプライベートバンキング業務、ASEAN地域の経営戦略担当等に従事。2013年3月に野村證券を退職。同年4月に株式会社ZUUを設立し代表取締役に就任。

 

〈お問い合わせ先〉 info@zuuonline.com

 

2015年10月号の記事より
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