ホームテック株式会社 代表取締役 髙橋久明氏
2015年、韓国財閥系企業A社のトップが東京府中市のリフォーム会社を訪れた。革新的な営業スタイルで成長を遂げるそのリフォーム会社のビジネスモデルを学びにきたのだ。 実は、韓国には住宅リフォームの市場が育っていない。そこで財閥A社は韓国でリフォーム事業を展開することに商機を感じて、日本企業を参考にしようとしていた。A社が業界各社を見比べた結果、これだと目をつけたのが、東京の多摩地区一帯に1000㎡を超える大型ショールーム「リフォームプライス」や「ミズファミ」を他店舗展開する「ホームテック株式会社」だった。 ホームテックは、商品・諸経費・工事費など全てを開示してお客自身に商品を選びリフォーム・プランを考えてもらう、そんな来店型の営業スタイルで業績を上げている企業だ。ホームテック本社
「私がこの仕事を始めた二十数年前の話です。独り住まいのおばあさんから、家の壁紙を張り替えたいという依頼を頂きました。そのころ私は現場監督をしていたのですが仕事がつまらなく、続けていくことに疑問を感じていた時期でした。上司もその様子を感じていたのか、「たまには営業に行ってきたら」というので、そのおばあさんのお宅を訪問したのです。 依頼の部屋は15畳くらいのリビングでした。もうご主人が他界されているということで、部屋にはお仏壇が置いてありました。お客様のご自宅をどうこう言うのは大変失礼な話なのですが、部屋の片隅には古新聞が積んであるような薄汚れた部屋でした。また、煎れて頂いたお茶の茶碗には茶渋がびっしり付着しており、正直訪問したことを後悔する次第でした。 話を聞くと、ご主人が亡くなられてからはこれといった楽しみもないとのこと。唯一の楽しみが、隣の市に住んでいる孫たちが月に一回くらい遊びに来てくれることだと言うのです。私はおばあさんの話を聞いていて、ふと、壁紙の一部をクレヨンで自由にお絵かきできるものにしましょうか、と提案してみたのです。そうしたらお孫さんがもっと遊びに来てくれるかもしれない、と思って。この提案におばあさんも賛成して頂きました。 そうしたら、これが見事に大当たりしたのです。毎週のように孫たちが遊びに来てくれるようになったのです。 それで数カ月後、私が訪問したら驚く程家の様子が変わっていました。茶渋のついていた食器が全て買い替えられていたのです。家具も変わって。おばあさんも明るくなって、服まで着物から洋服になって。 衝撃でした。壁一枚でこんなことが起きるのかと。人をこんなにも変えることができるのかと。それが私の原体験となり、この仕事が面白いなと思えるようになり、今日に繋がっています」 このエピソードはホームテックの理念の通奏低音となって今日も流れている。韓国財閥が注目したビジネスモデルの原点もここにあると言えるのだ。リフォームの持つ可能性を早くに感じた髙橋社長にインタビューした。事務所の壁一面に、近隣の小学生達が書いた絵が貼られていた
―ショールームという営業スタイルの着想はどこから?
「元々、このスタイルはアメリカにはあったので、それを一部参考にしました。2006年から始めましたが、日本にはまだこの形態がなかったので、好評でした。ショールームでも、工賃込みの総額が示されているので、お客さんが勝手に見積りを立て、大体いくら位のものになるのか腹積もりをしてから、安心して相談することができる。これは我が社が独自で考えたものです」
―何を大切にしているのか?
「私たちリフォームプライスは、単なる機器の取替えではなく、お客様が10年、20年先より過ごしやすくするためにどうしたらよいかを大切にしています。また『子供も独立したし自分用に書斎がほしい』『思い出のある沖縄のホテルの様な部屋で暮らしてみたい』といった暮らしの理想像を一緒に実現するお手伝いをしています。お客様が心の中で感じている「心の贅沢」を叶えるお手伝いをするのが私たちです」
―差別化が難しい業界だが、経済産業省から「平成26年度先進的なリフォーム事業者」として表彰され、伸びているのはどこに理由が?
「リフォームの場合、まずは地元の工務店に行くのが普通でしょう。よほどの失敗をしない限りそこから動かないと思います。しかし、地場の工務店は設計に関して、やはりカンに頼ることが多い。今の時代それでは通じません。
対してハウスメーカーで働いている建築士は自分の会社の建物しか知らないことが多く、自社物件のリフォームしかできないのがほとんどです。だから床下を見て柱を取り替えなくてはならない、となってもその方法が分からない。
しかし、うちの構造設計部門はまず、床下にロボットを走らせたりして、充分に調べてから設計プランを立てる。そこまで面倒くさいことをするのは、業界内でも私たちだけ。そして作った設計プランを、お客様の予算に併せて調節することができる。
他ではできないきめ細やかな対応をすることで、お客様が安心してリフォームを任せてくれるようになったこと、そしてショールーム『リフォームプライス』や『ミズファミ』でこういった啓蒙活動をして、新しい需要を作り出せたことを、評価していただけたんだと思います。また、リフォーム後の設備の点検などのフォローもしています。これは業界初だと思います」
―業界の今後の展望を、どう観ているか?
「啓蒙活動をしていますが、厳しいことに変わりはありません。今の景気ではそんなにリフォームに割く余裕はない、という人がほとんどでしょう。当社としては、中古の不動産を購入した人たちを新たにターゲットにしています。
現在、日本での中古不動産物件の市場規模は1兆円ほど。一方アメリカは、新築より中古のほうが物件が多く、市場も40兆円と遥かに巨大です。リフォーム業界も日本より8倍も大きい。アメリカでは中古物件を購入し、リフォームして使うというのがごく一般的です。日本でも、これからの高齢化社会では例えば子供が独立した夫婦が、若い時に購入した家にそのまま住み続けるのではなく、老後を過ごす物件を新たに購入して、暮らしやすいようにリフォームして使う、というような生活様式になっていくでしょう。
政府も中古市場をアメリカのように拡大しようという政策を推進しています。今後、不動産を住み替えたときにリフォームするという文化が、日本でも根付いていくでしょう」
―今後の業界における御社の使命は何か?
「私は「リフォー夢パートナー」という言葉を掲げています。もう一度夢を見られる家を、そして家族を。そういう想いを持ってこれからも仕事をしていきたい。リフォームでこんなに生活が楽しくなる!ということを多くの方に知って頂きたい。
また、今後リフォーム業界では、ネットを使った商品比較や広告宣伝なども増え、お客様からの厳しい目に晒されていくはずです。そんな中でも、大手のハウスメーカーではマネできないサービスを提供し続けていく。それが私たちの使命です」
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全国には820万戸の空家が存在する。自治体はその管理に苦心しているが、高橋社長の目指すリフォーム像は、その大きな解決策になるのではないだろうか。 直すだけのリフォームではなく、新しい価値を生み出すリフォームを。その高橋社長の言葉から、日本中にあのおばあさんのような笑顔を広めたい、というヴィジョンが見えるようだった。
髙橋久明(たかはし・ひさあき)…1959年10月1日生まれ。中央大学法学部卒業後、1993年にホームテック株式会社を創業。代表取締役として現在に至る。
ホームテック株式会社
〒206-0011 東京都多摩市関戸1-1-5ザ・スクエアE棟6F
042-356-8901
http://www.hometech.co.jp/
年商:57億7千万円(平成26年3月期)
従業員数:201名