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コラム – 内容証明を発送するときと受領したときの留意点

2017.08.01
オビ コラム

内容証明を発送するときと受領したときの留意点

◆新日本パートナーズ法律事務所/初澤寛成(弁護士)   【事例】 当社は、ビルやマンションを修繕する会社で、今年で設立30周年を迎えます。これまでクレームなどもありましたが、誠実な対応で大きなトラブルになることはありませんでした。 しかし、先日防水処理をしたビルに関して、当社の修理がいい加減で建物内に水漏れしているというクレームが入りました。こちらも状況を確認してこれまでどおり協議して解決しようと思っていたのですが、突然、弁護士から内容証明郵便というものが送られてきて、当社の修理に瑕疵があり、損害が発生したから賠償金を支払えと言われています。 ただ、当社が防水処理をしたところが原因とは思えません。どのように対応すればよいでしょうか。   【ポイント】 1.内容証明郵便とは 内容証明郵便というのは、いつ、どのような内容の郵便が誰から誰宛に送られたのかということが記録として残る郵便のことです。つまり、①郵便の内容、②郵便を差し出した日付、③郵便が配達された日、が第三者である郵便局によって証明されるということです。 ここでご注意いただきたいのが、③の配達された日の証明です。内容証明郵便は書留扱いですので、ただ内容証明郵便を発送するだけでは、配達された日は証明されません。 そこで、内容証明郵便に配達証明を付ける必要があります。 では、実際には、どのような形で内容証明郵便の配達が証明されるかというと、相手に配達されると「郵便物配達証明書」というハガキが差出人のところに送られてきます。そのハガキに、「上記の郵便物は、●年●月●日に配達しましたので、これを証明します。」と記載され、郵便局の押印があります。   2.内容証明郵便を送る目的 内容証明郵便が、①郵便の内容、②郵便を差し出した日付、③郵便が配達された日を証明するものであることが分かりました。では、内容証明郵便は、具体的にどのような場合に使うのでしょうか。 内容証明郵便は、売掛債権が時効で消滅するのを防ぐために催告書を送ったり、契約解除の意思表示を通知したり、債権の譲渡があった場合に当該債権譲渡を通知したりするときに利用します。 このように、相手に通知することで何らかの法律効果が発生する場合に、その法律効果が発生したことを証明するために、内容証明郵便を利用して、証拠化しておくのです。 また、上記のような法律効果や証拠化を意図せず、単なる支払い請求の場合などに利用することもあります。この場合の意図としては、毎回請求書を送るけど何の対応もしない相手に対し、いつもと違うぞ、この後裁判になるのかもしれないと思わせることで、誠実な対応を期待するというところにあります。   3.内容証明郵便の送り方 内容証明郵便を送る方法は、2通りあります。 1つ目の方法は、郵便局(集配郵便局及び支社が指定した郵便局とされていますので、内容証明の取り扱いがあるかどうか事前の確認が必要です)の窓口から送る方法です。この場合、郵便窓口に次のものを提出します。   ① 送付する書面(受取人へ送付するもの) ② ①のコピー2通(差出人及び郵便局が各1通ずつ保存するもの) ③ 差出人及び受取人の住所氏名を記載した封筒   ①の書面ですが、1行あたりの字数や1枚あたりの行数、使用できる文字や記号などが定められていますので、詳しい条件は、郵便局のホームページで確認する必要があります。 2つ目の方法は、インターネットを利用して送るもので、電子内容証明郵便と呼ばれています。こちらはインターネットを通じて24時間受付が行われているので便利です。こちらも、文書のファイル形式等利用条件がありますので、郵便局の「e内容証明」というWebサイトをご確認ください。   4.内容証明郵便を受け取ったら 弁護士からの内容証明郵便を受け取ったことがある人はいますでしょうか。突然、弁護士から内容証明郵便が送られてくると慌ててしまう方がたくさんいます。慌てて、法律事務所に電話をして、自社に責任がないのに責任を軽減しようというスタンスで話をしてしまう人もいます。 そもそも、内容証明郵便というのは、すでに説明したとおり、証拠としての価値はありますが、強制力のようなものは一切ありません。当然ですが、これが弁護士であっても変わりません。あくまでも、弁護士は依頼を受けて、本人に代わって書面を書いているだけです。 簡単に言ってしまうと、内容証明郵便に書いてある内容というのは、一方の言い分が書かれているに過ぎないのです。内容が正しいというわけではありませんから、送られた方も内容が正しいという前提で行動する必要はありません。ただ、書かれている内容について、自社でも事実確認等を行うことが肝要で、必要に応じて弁護士等専門家に判断を求めます。 また、多くの場合、●日以内などの期限が記載されていますが、弁護士に電話をして、交渉に応じる意思があること、検討時間が必要であることを伝えれば、回答を待つのが通常です。 まずは、慌てずに送られてきた書面の内容を確認しましょう。

オビ コラム 弁 護 士 名:初澤寛成 経   歴: 平成19年 弁護士登録 平成29年 新日本パートナーズ法律事務所 開設 所属事務所:新日本パートナーズ法律事務所 事務所住所:東京都千代田区麹町4-5 KSビル2階 連 絡 先:03-6261-6263 H    P:http://www.shinnihon-law.jp 著   書:「会社を守る!社長だったら知っておくべきビジネス法務」などビジネス法務に関する執筆多数       ◆2017年07月号の記事より◆
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