外国人留学生に向けた進路イベントで国内最大級のイベントに潜入レポート。
6月4日、渋谷ヒカリエの周辺に多くの外国人留学生が集まっていた。
4日と5日の二日間にかけて延べ1万人の外国人留学生が参加する「アクセス日本留学フェア」という進路イベントの来場者たちだ。本イベントは、「2024外国人学生のための進学説明会」と銘打たれ、外国人留学生の進路イベントでは、日本最大規模のイベント。
実際にヒカリエホールの会場は参加者達の熱気で、人いきれに包まれていた。

会場の入り口は長蛇の列
「今日は日本大学と関西大学の2校を見たくて来た。1校あたり15分ぐらいの説明を聞かせてもらいました。留学生にとって有益なイベントです。人が多すぎて忙しくなりそうだけど笑」(中国人留学生)
ただ、進学先を決めていない学生も多かった。なかには「ブースを回ってフィーリングで決めたい」という学生も。3人組の留学生グループは、13時の段階で「3校を回った」と語ってくれた。
「面談者が丁寧に説明してくれ、学校の魅力が伝わってきた」(3人組の留学生)。
興味を持ってくれた学生はいたかとの問いには、「当校は建築とデザインの大学院がある。中国の大学で建築を学んだ学生がいて、一定の手ごたえをもった」とのこと。大学としてなぜ、本イベントに参加をするのかについては、「たくさんの学生と面談をして繋がりを持てればいいなと期待している。アクセスのイベントは、東京で最大のイベントだから」(愛知産業大学大学院担当者)。
これまで47カ国から7880名の留学生を受け入れてきた滋慶学園COMグループの担当者も、本イベントの他のイベントとの違いを「来場者数が一番多いイベント」であり、さまざまな国の留学生と触れ合えることが魅力と語る。
「今日は滋慶学園COMグループから9校がブースに出展している。午前中に約200名の留学生たちと面談をした。留学生の獲得は学校にとって極めて重要なこと。人気なのはデザインやゲーム、アニメなどの学科。なかには、将来ペットショップを開きたいという学生や音楽での活動を目指しているという学生もいた」(滋慶学園COMグループ担当者)
学校や留学生に話を聞くことで感じたのは、留学生にとって就職しやすい分野と自分が好きで勉強したい分野に対する生徒の温度感の違いだ。また、日本語学校の教員によると、今年は、専門学校志望でもビジネス志望が減り、服飾や音楽関係などアート系が増えている傾向が伺えるようだ。自分が興味を持つ分野の説明をまずは聞き、そのうえで、就職しやすい分野も回るという順序が多いように感じた。
「もともと、2008年に掲げられた留学生30万人計画を機に留学生の数は増えはじめ、アクセス日本留学フェアの参加者数も比例して増えていきました。その勢いは、政府が目標としていた2020年よりも1年ほど早く達成するほどでしたが、コロナ禍を機に、留学生の数は激減しました。それが、政府の40万人計画も背景にあり、去年から今年にかけて復調してきている傾向が見えます」(運営会社アクセスネクステージ取締役 長谷川祐介氏)
この留学生40万人計画は、日本を世界により開かれた国とし、アジア、世界の間のヒト・モノ・カネ、情報の流れを拡大するグローバル戦略の一環として位置付けられている。
ただ、日本に来る留学生は、もともと、中国、韓国、台湾や漢字圏、アジア圏の学生が多かったようだが、この10数年でかなり変化しているようだ。

開催エリア別来場者国籍 提供:アクセスネクステージ
「専門学校が先行して、留学生を積極的に受け入れていくことを考えてくれるようになりました。大学はこういったフェアは、当初はJASSOが実施するイベントにしかほぼ出ていない状態でした」
ただ、アクセスは自社のイベントとともに、2009年よりJASSOのイベントの運営も受託して開催している。その効果が「徐々にシナジーを持ち、機能していった」(田中氏)。
「始めはそれなりの苦労もありましたけれども、留学生を必要とする未来は予想できましたので、グループとしての方針、考え方もあって、開催を貫き通して大学を揃えるということに注力してきました。そのおかげで、JASSO以外でこれだけ大学が揃うというのがアクセス日本留学フェアの特徴と言われるようになりました」(田中氏)
はたして、参加者が増えたブレークスルーのタイミングはどこだったのか?
「2014年にこのヒカリエの会場で開催できるようになったことが大きかったです。また、もともと外国人留学生だった当社の社員が日本語学校に対して、熱心に案内をして回り、学校に送迎のバスを用意するサポートなどを提供したことも参加者増に大きく貢献しています」(アクセスグループ・ホールディングス代表取締役社長 木村勇也氏)。
◆
教育未来創造会議 「未来を創造する若者の留学促進イニシアティブ」の第二次提言で開示されている工程表には、留学生の卒業後の活躍に向けた環境整備についても触れられている。働き手不足が叫ばれるなかで、外国人留学生の地元企業への就職・定着支援の実施にも期待がかかる。環境整備を国任せにすることなく、企業としても、留学生と触れ合う接点づくりを自主的に作る姿勢が求められるだろう。 彼らは貴重な人材であると同時に、日本の魅力を対外的に語ってくれる語り部でもある。留学生たちにとって、日本に来ることを選択したことが、後に振り返った時に最良の決断と思ってもらえるような社会でありたい。 取材後、アクセスの長谷川氏から、今年は二日間のイベントで10676人が参加した旨をメールで教えてもらった。これは前年の8105名から131.7%増のようだ。1万人の留学生たち。会場にいた彼ら留学生たちの希望に満ちた笑顔は裏切れない。 本記事はcokiにも掲載されています。