2025年1~6月期の飲食業界のM&A件数は37件と前年同期から5.1%減少した。24年のM&A件数が新型コロナウイルスの感染拡大前の19年以来、5年ぶりの高水準だったことから、その反動減があったとみられる。一方で25年1~6月期のM&A件数はコロナ禍の悪影響が大きかった22年1~6月期と比べれば3割超も増加している。コロナ禍後の景気回復に伴い、買い手である同業他社やファンドの業績が回復したことで潤沢な買収資金を確保できていることが背景にある。
飲食業のM&Aは戦略的売却型が6割占める
飲食業界のM&Aを仲介するM&Aプロパティーズ(東京・新宿)が、全上場企業に義務づけられた適時開示情報などから集計した。1~6月期のM&A件数は前年同期に比べると微減だったが、23年、22年の上半期と比べれば、それぞれ23.3%、22年32.1%も増加している。政府は23年5月に新型コロナウイルスを感染症法上の分類を季節性インフルエンザと同等の5類に引き下げ、コロナ禍は出口を迎えた。これに加えて景気回復やインバウンド(訪日外国人)需要を背景に飲食業の業績も急回復。買い手の資金力も高まっている。
25年1~6月期の飲食業界のM&Aでは、事業の選択と集中で生産性を向上させる「戦略的売却型」が59.5%を占め、最も多かった。次に多かったのは「事業承継型」で27%だった。経営者の高齢化が進んでいることから、次世代への事業の引継ぎの方法としてM&Aを選んでいることも多い。
飲食業のM&A件数は増加へ
トランプ米政権の高関税政策に伴う通商摩擦を受けて、世界経済には先行き不透明感が漂っている。景気の先行き不透明感が飲食業界のM&Aに及ぼす影響についてM&Aプロパティーズの中村幸司社長は「景気の先行き不透明感を背景に、現時点ではM&Aの検討に時間がかかるケースもある」と指摘。ただ「将来的には事業再編の活発化や、経営者の高齢化に伴う事業承継ニーズの高まりから、M&A件数は増加する可能性が高い」としている。