
愛知県豊田市を拠点に、パーソナルストレッチと機能性トレーニングを組み合わせた「ストレッチ専門パーソナルジム」を展開する株式会社エスホープス(以下、エスホープス)。独自のメソッドで「強くしなやかな身体」をつくり、「ストレッチで運命を変える」ことを目指している。
代表を務めるのは、ストレッチ専門パーソナルトレーナーの内田直希氏だ。会社員からトレーナーに転身し、独立後わずか数年で直営3店舗・フランチャイズ2店舗のグループへと育て上げた。エスホープスの独自メソッドとはどんなものなのか、内田氏はなぜトレーナーに転身したのか。同社の歩みと今、そしてこれからを聞いた。
ストレッチを中心とした強くしなやかな身体づくりを通して、お客様の幸福をサポートをし続ける――エスホープスはそんな使命を持ちながら、ストレッチ専門パーソナルジム「S.HOPES」を運営している。提供しているのは、パーソナルストレッチとパーソナルトレーニングを掛け合わせた独自メソッドによる身体づくりのサポートだ。
1つ目の柱であるパーソナルストレッチは、トレーナーが手技で行う施術がベースのストレッチだ。筋肉や関節を丁寧に伸ばし、マッサージ要素も取り入れながら柔軟性を高めていく。2つ目の柱であるファンクショナルトレーニングでは、人体の構造や重力に沿った理にかなった動きを習得することで、ケガをしにくく効率的に動ける身体機能を育てていく。必要に応じて負荷も加えながら、日常動作からスポーツパフォーマンスまでを支える「動きそのもの」を整えるトレーニングだ。
この両者を組み合わせることで、単に柔らかいだけの身体ではなく、しなやかで力強く、パフォーマンスも発揮できる身体を目指す。また、それぞれの悩みや目的に沿ってオーダーメイドでメニューが組まれ、きつすぎない運動内容であるため、10代から90代までの幅広い年齢層の人が通っているという。
そんな“いいとこどり”な独自のメソッドは内田氏の経験や試行によって作り上げられてきた。内田氏は独立前に、接骨院とスポーツクラブが併設された施設で技術を学んできた。それをもとに、ピラティスやヨガ、ウエイトトレーニングなども組み合わせ、修正しながらメソッドとして落とし込んできたのだ。

そんな同社の大きな特徴は、「始める前の分析」を徹底的に行う点にある。
「私たちが一番大切にしているのは“徹底的な現状把握”です。カーナビを使う時、現在地がわかっていなければ目的地までのルートが分からず、たどり着けませんよね。パーソナルトレーニングも同じで、『こうなりたい』『痛みを取りたい』といった目的地ばかりが強調されて、現在地がぼやけたまま進んでしまうことが多い。そうすると汎用的で本人に合わない指導になり、成果も納得度も低くなってしまいます」(内田氏)
だからこそ、徹底的な現状把握によって現在地を明確にしてから、お客様の目的地までの道のりを運動指導など様々なサポートをしながら共に進んでいくのだ。その現在地を明らかにするために行っているのが、「機能テスト」「カウンセリングと心理テスト」「AIによる姿勢測定」の3つだ。
まずは自社で開発した11種類の身体機能テストを実施し、関節の可動域や動きの癖、連動性の悪い箇所などを洗い出す。そして、カウンセリングでの悩みや体感と、心理学に基づく性格分析を掛け合わせる。例えば、競技の記録更新を目指す人は「達成欲求」、コミュニティに居続けたい人は「所属欲求」が強いなど、一人ひとり異なる動機を可視化していくのだ。
さらに、目視だけでは限界がある姿勢評価については、AI姿勢測定システムを活用し、身体のズレをセンチ単位で数値化。これにより、客観的なデータに基づいた改善提案ができる体制を整えている。
そして、エスホープスの独自マニュアル「エクササイズライブラリー」と組み合わせる。このマニュアルには「こういう身体の人にはこの運動が適している」「この症状はこれで改善できる」といった情報がまとめられているという。トレーナーはこれをベースにしながら、一人ひとりの個性を加えた指導を行うのだ。
加えて、身体づくりに欠かせない「継続」のための信頼関係づくりに力を入れていることも特徴の一つだ。
「身体づくりは未来のために行うものなので、今はつらいのを我慢するというのが基本的な考え方になりがちです。でも、それだけではなかなか続きません。だから、今が楽しいと感じられて、運動の優先順位を上げられるようなパーソナルサービスを提供したいと考えています。ワクワクする、あのトレーナーに会いに行きたい、情報を仕入れられる、元気になれる…。そんな付加価値を、トレーナーたちが個性を活かして作り込んでいく。そうして、『今を大事にするパーソナルトレーニング』として継続をサポートしています」(内田氏)
エスホープスはジムの運営だけでなく、トレーナー養成スクールとしても機能している。専門メソッドや、内田氏がこれまでに培ってきたトレーナーとして成功するための思考法を伝えたり、戦略を提案したりと、トレーナーを成功に導くためのサポートをしている。既に独立したトレーナーも生まれているといい、内田氏は「独立するための能力を必ずつける。絶対に失敗させない」という思いで育成に向き合っていると話す。

そうした会社づくりの土台となっているのが、入社時に全トレーナーが取り組む「個人理念」の作成だ。人生をどう生きていきたいか、その目的を言語化する。
「最初の面談で『しがらみや制限が何もなかったら、あなたはどうなりたいですか?何が欲しいですか?』と聞くんです。すると、だいたいの人は答えに詰まります。本当にやりたいことに蓋をして生きてきた結果、そんなふうに考える習慣がなく、発想自体がないんですよね。だからまずその蓋を開けるんです。本当は自分は何が欲しくて、どういう人だと思われたくて、どういう人と関わりたくて、どうやって生きていきたいのか。そのうえで、『自分はこう生きる』ということを明文化し、個人理念を作ってもらいます」(内田氏)
そして、その個人理念をもとに、「夢を実現するために、エスホープスをどう活用できるか」を一緒に考えるのだ。すると、働き方や収入、待遇の目標もおのずと明確になる。また、会社は何ができるかを考え、独立の仕方や戦略を共に考えることもあるという。それにより、自分が発展すれば自分の夢が叶うというイメージが明確になり、一人ひとりの主体性が大きく育っていくのだ。
「主体性が高まった一人ひとりの力を集約させて、全体の成長につなげていくのが僕の役割です。そうすれば組織はどんどん大きくなっていくし、みんなのやりがいもどんどん上がっていく。そんな根っこの部分を何よりも大事にしています」(内田氏)
幼少期から野球に打ち込み、中学生の頃には身体の仕組みや使い方を独学で研究していたという内田氏。
「当時は本屋で解剖学の本を買って読んだり、プロ野球のトレーナーが書いた本を読み漁ったりしていました。週刊誌の連続写真でプロ野球選手のスイングを研究して、自分なりにトレーニングを試しては、効果があるか検証する。その繰り返しでしたね」(内田氏)
高校では1年生エースとして登板を重ねたが、それによって肩を故障してしまう。ボールも満足に投げられず、辛い日々を経験した。それでも「最後の大会はレギュラーで出る」と決め、独学でリハビリに取り組み、外野手で「背番号9」を勝ち取りレギュラーになった。
この経験から「自分のようにケガで辛い思いをする人を救いたい」と感じ、体育系の大学に進学。しかし、大学生活はアルバイトや遊びに時間を費やし、いつしか夢から目をそらすように。卒業後は製造業の会社に就職した。
ところが、3年ほどで会社が嫌になってしまったことから退職。大学時代にお世話になっていたスポーツトレーナーの人のそばで技術を学ぶことにした。「正直、辞めた理由を正当化するためにスポーツの世界に飛び込んだ部分もあります。やりたいことがあると言えば納得してくれると思ったんです」と、当時を振り返る。技術を学ぶ間は社員でもなんでもないため、無給だったが、それでも学びに通った。ガソリンスタンドでアルバイトをしながら生計を立てる日々を約2年間過ごしたのち、2012年にトレーナーデビューを果たす。

現場では誰よりも働き、スキルを磨き続けた。それと同時に、会社の野球部での活動として「豊田市軟式野球連盟A級所属野球部」のエース投手としてチームのA級昇格や、豊田市選抜選出、優秀選手、本塁打王等の実績を残し、審判員としても活動。登山クラブの発足、豊田市の強豪少年野球チーム「ドリームボーイズ」のトレーナーを務めるなど、多方面で経験を積んでいった。
そして、2019年に独立。「S.HOPES」を開業し、1年目にして年間2,000時間のセッションを達成した。トレーナー養成事業も開始し、系列店オープン、フランチャイズ展開と、徐々に事業を拡大。また、サポートする少年野球チームの全国優勝、東京オリンピック金メダリストや聖火ランナーのコンディショニングなど、トップレベルのアスリートからも信頼を集めるようになっていった。
トレーナーの道を進み始めてから、ひたすらに走り続けてきた内田氏。その源泉にある思いについて、こう語る。
「会社を辞めた時、周りの人たちからは『そんな良い会社を辞めてもったいない』と言われました。でも、その言葉通りに『だから言ったじゃん』と言われるような人生になってしまったらものすごくダサいじゃないですか。僕はそうじゃないという反骨心というか、執念のようなものを強く持っていましたね。
加えて、僕が住んでいる愛知県豊田市にはトヨタ自動車をはじめとして給与水準が高い会社が多く、周りの人たちもそれを基準にして仕事やキャリアのことを考えるんですよね。となると、どうしてもそういう会社と比較されるので、妻が不安になるのではないかと感じていました。だからこそ、『結婚して良かった』と心から思ってもらえるようにしたかった。必ず成功するという執念を持ってやり続けてきましたね。今はそれに加えて、一緒に働いてくれている仲間や、僕についてきてくれるお客様との約束を絶対に守り切りたい。その責任感が、今の自分を動かしています」(内田氏)
—東京ではなく地方で挑戦することについて、どのように感じていますか。
地域にもよりますが、トレーナーや地域の人との関係性をきちんと育みながら、理念のもとで活動することが発展のキーだと考えています。
特に、豊田市は信頼が重要な地域なので、きちんと地域に根差して、地域でナンバーワンに選ばれるようにすることが必要です。顔も知らない人からいきなり高単価のサービスを売られても、お客さんは警戒してしまいますし、本部の理念が薄い人がストレッチだけを提供していても心に響きません。だからこそ、信頼関係を築いて継続的に来てくださるお客様を増やし、その中で利益を出せるシステムを作っています。
もし、僕が東京に進出するとしたら同じやり方は絶対にしないです。今は、かかりつけトレーナーとして週一回通っていただくパーソナルジムをコンセプトとしていますが、それでは通用しないと思います。今、この場所だからできている。そういう地の利を生かすことが大切だと思います。
—仕事の中で、どのような時に働きがいややりがいを感じますか。
僕たちのキャッチコピーは『ストレッチで運命を変える』です。お客様が自分たちのサポートをきっかけに運命が変わって、本人はもちろん周りから見ても「幸せになった、豊かになった」と言える姿になっていく。そういう変化を見られることが、トレーナーとしての何よりのやりがいです。
また、オーナーの立場としては、一緒に働いている仲間たちが発展して自分の夢を実現し、いい顔で仕事をしている姿を見るのも大きなやりがいになっています。そういう姿を実現するために妥協しないことが、僕にとってのやりがいですね。
ー今後の展望を教えてください。
僕たちのミッションは「ストレッチを地域の文化にする」「トレーナーの社会的地位向上」「運動のきっかけと継続の仕組み化」です。
「ストレッチを地域の文化にする」について、今直営店やフランチャイズを徐々に増やしているところです。まずはその店舗がある地域で、自分たちが提供するストレッチや体操法に取り組む人口を増やしていきたい。そして、一人ひとりが元気になり、その積み重ねで地域全体に良い影響が波及していく。そんな流れを作りたいと考えています
「トレーナーの社会的地位向上」は、スポーツトレーナーは薄給で労働時間も長く、「結婚したら続けられない」「歳を重ねたらできない仕事」と思われているのが現実なんです。スポーツ系の専門学校で教えていても、「やりたいけど、この仕事を一生続けるつもりはない」という学生が多くいます。しかし、このままではこの業界は発展しません。
だから、まずは自分たちの地域から変えていきたい。トレーナーやフランチャイズオーナーには年収1,000万円以上を実現できる運営体制を構築したいと考えています。そのためには、ある程度の規模感と、成熟したビジネスモデルやシステムが必要なので、それらをしっかり成長させていきたいです。
そして、これら2つのミッションを実現するために「運動のきっかけと継続の仕組み化」にも取り組んでいきます。
僕の野望としては、会社をとにかく大きくしたいという気持ちはあまりありません。ただ、これらのミッションを果たすためには、一定の規模や仕組みがどうしても必要になる。だから今は、そこに向けて努力しているという感覚です。
—組織の成長と、ご自身の成長の関係をどのように捉えていますか。
僕自身が成長しなければ組織は絶対に成長しないと思っています。成長そのものが目的ではなく、組織の成長が目的で、そのために自分が成長し続けなければならない。自分の器以上に事業は大きくならないと考えているので、自分の器を広げ続けることが必要です。まわりのトレーナーから「この人についていきたい」と思えるような存在でなければ、優秀な人材は独立していくでしょう。ミッションを実現するためには、ついてきてくれる人も必要不可欠ですから、そのためにも自分が背中を見せ続けなければいけないと感じています。
◎企業情報
会社名:株式会社エスホープス
URL:https://s-hopes.website/
所在地:〒471-0865 豊田市松ヶ枝町3丁目4-1 シャンポールミヤ 105号室
代表者名:代表取締役 内田直希
◎インタビュイー
株式会社エスホープス 代表取締役
内田直希
※本記事はcokiに掲載しているこちらの記事からの転載です。