コラム

酒づくりで地域を醸す 福島・南相馬のhaccobaが東北アントレプレナー大賞受賞

2026.02.07
haccoba
画像出典:株式会社haccoba プレスリリース

かつて酒は、地域コミュニティの中心にあった。その原風景を現代に再構築し、自由な発想で日本酒の新たな地平を切り拓こうとする福島の酒蔵が、東北経済の新たな旗手として認められた。

一般社団法人東北ニュービジネス協議会が主催する「第32回東北ニュービジネス大賞」の表彰式において、福島県南相馬市小高区に拠点を構える株式会社haccoba(ハッコウバ)が「東北アントレプレナー大賞」を受賞した。同社が7日に発表したプレスリリースによると、この賞は東北地域において新規性や革新性に富んだ事業を展開し、高い成長性が期待される起業家に贈られるものであるという。

既成概念を超える「クラフトサケ」の挑戦

haccobaを率いる代表・佐藤太亮氏が掲げるのは、「酒づくりをもっと自由に」というコンセプトだ。彼らが手がけるのは、厳密な意味での「日本酒(清酒)」という枠に留まらない。米と麹をベースにしつつ、ホップやハーブ、フルーツなどを副原料として加えることで、ジャンルを超境する「クラフトサケ」という新たなカテゴリーを提唱している。

かつて東北の農村では、各家庭でどぶろくが醸され、それが日々の労働の疲れを癒やし、祭りの場を彩っていた。haccobaの酒づくりは、そうした古き良き発酵文化を現代的な感性でアップデートするものだ。プレスリリースによれば、今回の受賞は、こうしたプロダクトとしての革新性に加え、地域資源を活用した循環型のビジネスモデルが高く評価された結果だという。

復興の地・小高から世界へ

特筆すべきは、彼らが拠点を置く場所の意味である。南相馬市小高区は、東日本大震災に伴う原発事故の影響で、一時は居住が制限された地域だ。佐藤氏は2021年、この地に酒蔵を設立した。単に酒を造る工場を建てたのではない。酒蔵を人が集まる「場」とし、地域住民や来訪者が交わることで、まち全体を「醸そう」としているのだ。

地域課題の解決とビジネスの成長を両立させるその姿勢は、まさに「ソーシャル」と「アントレプレナー」の融合と言える。東北ニュービジネス協議会が顕彰するにふさわしい、次世代のリーダー像がそこにある。

地域経済に「酔い」と「覚醒」を

東北ニュービジネス大賞は、地域の産業活性化を牽引する企業を世に送り出してきた歴史ある賞だ。第32回を迎えた今回、haccobaのような「文化」と「経済」を接続するプレイヤーが選ばれたことは象徴的である。

効率や規模の拡大だけがビジネスの正解ではない。地域の土着性を武器に、世界に通じる普遍的な価値を創出する。haccobaの挑戦は、人口減少や産業衰退に悩む東北の他地域にとっても、一種の「酵母」として作用し、新たな変化の発酵を促すことになるだろう。福島の小さな酒蔵が灯した明かりは、東北の未来を照らす確かな光となっている。

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