
誰もが知る国民的スナックメーカーが、静かに、しかし確実にデジタル変革(DX)の歩みを進めている。カルビー株式会社が18日に発表したプレスリリースによると、同社は実践型カリキュラム「カルビーAIアカデミー」の最終報告会を実施し、新たに5人をDX人財として認定したという。
同社が2025年10月に発表した「カルビーグループのDXロードマップ」によれば、企業理念を実現しながら創業から100年を超えて成長する企業を目指し、デジタル・ITを通じて変革を興すことを経営の重要テーマとして掲げている。その中核となるのが、サプライチェーンの最適化と、現場主導によるデジタル化の推進だ。
カルビーのDX戦略における大きな柱の一つが、S&OP(Sales & Operation Planning)を通じたバリューチェーンの創出価値最大化である。同社は2026年3月期に、調達から供給までのサプライチェーン効率化システムである「C-BOSS(Calbee Business Optimization Simulation System)」の本格運用を実現させる計画だ。
このシステムは、マーケティング戦略やAIによる需要予測連携を包含し、生産キャパシティ、輸送ルートと費用、在庫キャパシティなどを一元的に管理・シミュレーションする機能を持つ。SKU別や得意先ごとの損益を可視化するツールを活用し、収益改善活動を継続するとともに、DXを活用したデータドリブンで迅速な意思決定プロセスを構築し、サプライチェーンの効率化を進めるという。
もう一つの柱が、生産性向上と働き方改革を目的とした工場DXだ。カルビーでは、機器からの直接データ取得や電子帳票の導入といった基礎的なステップから、IoTダッシュボードによる可視化、さらにはオンラインNIRやDataRobotなどを活用した高度なデータ分析へと、導入ステップを標準化し期待効果を明示している。
2025年度からは、各工場のDX導入状況をKPI化および可視化し、工場の要望や必要性も加味しながら個別検討を進める方針をとっている。生産ラインの自動化を通じて、最終的には一人当たり生産量の劇的な向上を目指す構えだ。
これら高度なシステムや仕組みを真に機能させるのは「人」に他ならない。カルビーはDX人財の育成を極めて重要な施策に位置づけており、2030年度には500名のDX人財輩出を目指している。
社内のDX人財はスキルに応じて、「DXシニアマスター」「DXジュニアマスター」「ジュニアデータサイエンティスト」「DXプロユーザー」という4つのカテゴリーに認定される仕組みとなっている。2024年9月時点では、認定者とファーストユーザーを合わせて123名の体制であった。
この育成を後押しするため、工場DXの推進と人財育成を目的として2024年4月に西日本で立ち上げられたのがAIアカデミーである。選定メンバーの活動期間は2年間と設定されている。
直近の発表の通り、全国の工場や生産本部から選抜されたメンバーがAI技術を用いた分析手法を学び、実際の課題解決に取り組むことで、次なる変革の担い手として着実に現場で育ちつつある。
常態化する人財不足という中期的課題に対し、カルビーは外部のパッケージシステムに頼り切るのではなく、自社に最適化されたIT統制と現場主導の人財育成によってこの壁を乗り越えようとしている。国内市場の成熟や環境変化に対し、データと人の力でいかに新しい価値を創造していくのか。老舗企業の地道かつ戦略的な挑戦は、同じ課題に直面する多くの国内製造業にとって、一つの有力なモデルケースとなりそうだ。