Webマーケティングで念頭に置くべき消費行動プロセス、AISAS ‐ 冨田和成 株式会社ZUU
◆文:冨田和成(株式会社ZUU 代表取締役社長兼CEO)
(写真=pixabayより)
伝統的な消費行動プロセスのモデルとしてよく知られているのが、AIDMA(アイドマ)の法則と呼ばれるモデルです。AIDMAとは、Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)の頭文字を取ったもので、消費者が商品やサービスについての情報を知り、購買に至るまでの心理的プロセスをモデル化したものです。
1920年代に提唱されたこの古典的なモデルは、大量生産・大量販売とそれに伴う大量のコミュニケーションといったマスマーケティングを説明する上では有効でした。しかしその後のインターネットやeコマースの普及によって、AIDMAの法則では当てはまらない行動パターンが多く見られるようになりました。
このような環境の変化を受けて、Webマーケティングの特性であるSearch (検索)とShare (共有)というプロセスを加えたAISAS(アイサス)の法則というモデルが電通によって提唱されています。
AISASとはAttention (注意)→Interest(興味) →Search(検索)→Action(購買)→Share(情報共有)のプロセスを示しています。AISASにはAIDMAモデルでみられた購買に際しての「欲求」喚起や、情報を吟味し考慮するための「記憶」の機会が少なく、代わって「検索」が購入決定の重要な要因と位置づけられており、さらに購入後に「情報共有」のプロセスが組み込まれているのが特徴です。
ここで注目されるのが、AIDMAモデルが主に生活者の心理的プロセスを捉えたモデルであるのに対して、AISASでは検索や共有といった行動プロセスに着目し重点が置かれている点でしょう。マーケティングのフィールドとしてWebの重要性が高まり、さらにはより簡単にいつでもどこでもWebにアクセスできるモバイルベースに移行したことで、生活者の行動を促すことの重要性はかつてなく高まっています。
また、AIDMAモデルにみられた欲求・記憶のプロセスは、AISISの検索のプロセスに集約され内包されているといっていいでしょう。欲求が起きたその瞬間にWebで検索し情報にアクセスするという行動に置き換えられています。これはWebというものがデータをやり取りするものから、生活者の行動を促すものになったともいえるでしょう。
モバイルでのWebへのアクセスが当たり前になったいま、AISASの一連のプロセスはループ状のサイクルになり、そのサイクルが回転するスピードはますます早くなっています。このようなプロセスが高速化する中で行動を促すためにより重要なのは、時間をかけて情報の吟味や解釈を求めるよりも瞬間的に生活者の「直感」に訴えるコミュニケーションやプロモーションです。
直感で感じたことは検索で調べて検証することができるし、間違っていてもすぐさま修正が可能です。瞬時に行動のきっかけとなる直感にアピールすることは、Webマーケティングのコアとなるでしょう。
AISASモデルで特徴的なプロセスが「情報共有」です。商品やサービスを購買した結果や感想といった個人の情報を他の人とシェアすることは個人で情報を発信できるWebならではの行動です。さらに情報共有は近年のソーシャルメディアの発展とともにますます比重が重くなってきています。このプロセスをうまく取り込むことはWebマーケティングで必須です。
人の行動は最終的にはオフラインとオンラインの双方にまたがり切れ目なく繋がっています。だからこそ、これからはオフラインでのマーケティングとオンラインのWebマーケティングと連携させて統合型マーケティングを推進すべきです。またその中では行動喚起に注力し、生活者の直感に訴えることでAISASのプロセスのスピードアップに対応することが求められるでしょう。
筆者プロフィール/冨田和成
神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。
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