コラム

ものづくり.com – 皆さんの課題に専門家が答える!企業のお悩み相談室〈2017年6月号〉

2017.07.10
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皆さんの課題に専門家が答える!企業のお悩み相談室

  ものづくり.com/濱田金男(高崎ものづくり技術研究所)    

人材育成計画の作成中

Q.会社の人材育成の統括を任されている者です。会社の規模としては従業員が120人程と経営陣が5名います。最近、経営陣から私に直接人材育成計画の策定をするように指示があって相談させていただきました。   元々、家族経営が強かった弊社では、あまり人材育成に力を入れておらず先輩が後輩に仕事を教えることのみにとどまっていました。しかし、会社の規模も大きくなり、さらに成長を遂げるには人材育成が必要と経営陣も感じていたようです。   現在私の方で考えているのは、新入社員や管理職といった具体的に階層別研修の導入を検討しています。この他に何か良い人材育成計画があれば教えてください。     A.工場ですぐ使える品質改善技法の開発と普及活動を行っている、高崎ものづくり技術研究所の濱田と申します。 人材をどのように育成していけばいいのか? 進め方、内容について考えてみます。 まず、進め方は以下の3ステップで行います。   ◉ステップ1:強化すべき工場の機能と、期待する人材像を明確にする ◉ステップ2:現状の人材レベルと期待する人材レベルのGAPを把握 ◉ステップ3:GAPを埋める教育・訓練計画、採用、評価制度見直し   つまり、人材像、育成、活用、評価、処遇の人材マネジメントサイクルのしくみを整備します。 階層別教育を行う場合の分類は以下の通りとします。   ・優秀な新人の新規採用 ・リーダー教育 ・次世代幹部社員の育成   いずれにしても、求める人材像を明らかにすることがすべての基準となるため、最初に「工場の将来像」「そこで求められる人材像」が明確になっている必要があります。経営層は、教育の必要性を認識しているからには、現状の人材にどのようなスキルの習得を求めているのかを明らかにしなければなりません。   次に、人材像が明確でも、人材育成の手段については明確になっていない場合が多いのです。   (1)新人の育成 新人はOJT主体で教育を行っている例が多いようですが、より効果的な教育を行うにはOJTと集合教育をミックスさせること、また、計画、実施、評価、フィードバックのサイクルを回すことが重要です。   (2)リーダーの育成 現場リーダーの育成は、最も必要性を感じていることと思いますが、理想のリーダー像を描いても、実際にどうやって育成したらいいか? 明確な解を持ちあわせていない場合が多いのです。 リーダーシップ研修などを受講させることも必要ですが、実際の業務の中で、課題を自らの力で解決していく、「チャレンジ」して「失敗」を重ねながら、再び「チャレンジ」する、そこに上司の「サポート」が加わることによってリーダーの成長が加速されるのです。   ・困難を伴う課題にチャレンジする機会を与える ・サポートする ・評価する   運よくこのような場面に出会う、また自らが行動して難題に向き合うことが無ければ、おそらくリーダーとしての成長のチャンスを逃してしまうというのが、多くの企業の実情ではないかと考えます。 外部から「できる人材」を招き入れることも方法かもしれませんが、社内の人材を育て上げて行くという姿勢こそ、新人も採用しやすくなり、定着率も上がるという結果に繋がると思います。     (3)幹部社員の育成 会社の将来を担う幹部社員候補の教育についても、実態はお寒い状況です。環境変化への対応、グローバルな視点から求められる人材は、以下のような知見を持っていることが求められます。   ・経営理論 ・マーケティング理論 ・マネジメント理論 ・固有技術   一般に、今までの現場の経験に基づいた技能、管理技術は持ちあわせていても、管理層としてはそれだけでは不足です。日本では、年功的な評価で管理職に昇進させますが、実際に会社をマネジメントする、工場を改革していく力量はかなり不足していると思います。 当然、人材マネジメントに関する専門的な教育も不足しており、人材の重要性を認識しつつも、社内育成システムも十分整備されてるとは言えません。 OJT/off・JT、コーチング/ティーチングなどの基本的な育成手法についての基本をよく理解しください。    

工程手順を浸透させるのが難しい

Q.部品製造業です。定年退職になる職人が多く、新人に引き継ぎを実施させ、引き継ぎは完了したのですが、思い通りの製品が出来ずに不良も多発している状況です。 原因を追究すると、先人から引き継いだマニュアルを守っていない様子で、感覚や思い込みでやってしまう傾向にあり、「そう思っていた」とか、「そうだと思った」とかに行きつきます。 先人はそんなことは無かったのですが、新人に切り替わったことで、このような問題が多発しています。 新人には、品質安定化のために、製品毎に作業手順マニュアルをパウチして、機械に貼り付けさせて必ず見るように言っていますが、徹底ができないようです。どのようにすれば、徹底できるようになるのか、頭を抱えています。     A.先人から「新人に引継ぎを実施、完了」しても、マニュアルを「守らずに」、感覚や思い込みで作業してしまう、またマニュアルをパウチして、機械に貼り付けてもそれを「見ずに」作業し、ミスを犯す。「先人はそんなことは無かった」のですが、どうしたら良いかというご質問ですね。 熟練者の技能は、なかなか口では表せられない暗黙知的なものが多く実際に体験しながら身に付けて行かなければなりません。そこで、作業の「引継ぎ」の問題、「マニュアル」の問題の2つに分けて考えてみたいと思います。   (1)引継ぎの問題について 先人は、長年にわたって失敗を繰り返しながら今に至ったのであって、一通りの引継ぎが完了したからと言って、すぐに先人と同じように作業ができるようになるとは限りません。 この場合、段階的なOJT実施計画に基づいて、作業を教え、実際に作業をさせて、結果を評価することを繰り返しながら、自立して作業ができるかどうかを見極める必要があります。 特にどの作業で、どんなミスを犯しやすいのかを良く観察し、正しい作業ができるまで集中的に繰り返し教える必要があります。その場合重要なことは、「こうせよ(HOW TO)」よりも「なぜそうするのか(KNOW WHY)」を理解させることです。   (2)マニュアルの問題について マニュルをなぜ守らないのか、なぜ見ないのかを考えてみる必要があるように思います。 マニュアルが、見づらいのか、内容が分かりづらいのか、またマニュアル通り作業してもうまくいかないのかなど、作業者の意見を聞きながら、見直すべきところは見直すことが必要です。 特に、なかなか文章では表せられない暗黙知的な技能については、それぞれ勝手な感覚や思い込みで作業しがちです。そこで熟練者がマニュアルを作成するのではなく、むしろ作業を熟知していないが、物事を科学的に分析できる能力を持った第三者によって、熟練者の意図をくみ取りながら作成し、その内容で実際に作業し検証を行います。   また、熟練者の作業をビデオ撮影し、熟練者と一緒にそれを見ながら共同でマニュアルを作成、実際に作業を実施し、突合せを行う方法も有効と思われます。 一般的に、現場では、マニュアルを見ながら作業を行うことはありません。マニュアルの内容、手順は事前教育によって頭の中に入っていなければならず、そうでない場合は生産性は低下し、ミスも誘発します。 もしどうしても、機械に貼りつける必要がある場合は、簡単な手順フローや、注意事項を箇条書きにするなど、見やすいものに限定します。    

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  obi2_column ●プロフィール 濱田金男(はまだ・かねお)   〈高崎ものづくり技術研究所〉 http://factorysupport.seesaa.net/   【経歴】 1971年3月 国立長野工業高等専門学校卒業 1971年4月 沖電気工業株式会社入社 設計係長(16年)、品質・ISO9000事務局長(6年) 2001年9月 沖電気実業(深セン)有限公司 ATM組立工場品質保証部長(2.5年) 2004年5月 加達利(香港)有限公司、基板実装工場品質保証部経理(2.5年) 2007年4月 東邦工業株式会社、新製品中国立上げ技術スペシャリスト(7年) 2013年12月 昆山駿巧商貿有限公司 総経理 2014年2月 高崎駿巧ビジネス コンサルティング・オフィス 代表   【業務実績】 設計:通信端末機方式設計、顧客折衝、ハードウエア設計、基板設計、ファームウエア設計 品質:中国調達部品の品質保証、ATM組立工場工程改善、ISO9000構築/新人、技能者教育訓練、認定・評価制度構築 生産:中国ローカル工場監査、委託契約、新製品立ち上げ、製造移管、量産 マネジメント:中国拠点の運営管理、人材採用・評価、予算計画・管理     ◆2017年6月号の記事より◆
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