(写真=写真AC)

 

 

企業や個人が「お金を借りる」ときに利用するのは、銀行やノンバンクなどの金融機関が一般的でした。しかし、不要なものを売りたい人と欲しい人を直接つなぐフリマアプリが人気のように、今ではあらゆるサービスにC2Cの波が押し寄せています。

 

これは融資の分野も同様で、「借り手と貸し手間の直接融資」である“ソーシャルレンディング”(マイクロレンディング)の利用者が増えています。

 

借りる側にとっては通常の融資より低金利で借りられることが多いのがメリットです。貸す側にとっても、銀行など金融機関に預けたときの金利よりは高リターンが狙えるとあって人気の投資先となりつつあり、日本でもいくつかの事業者が誕生しています。

 

この分野で伸長著しいのは人口の多い中国で、中でも注目されているのが楽信集団(楽信控股、レクシン・フィンテック・ホールディングス)です。

楽信は2013年、中国の深セン市南山区で設立されました。18~36歳の若者層をターゲットにしており、2016年10月~17年9月末日の収益は8億ドル、17年1~9月の利用者は前年比34%増の330万人に達しました。

 

楽信の最大の魅力は、ビッグデータやクラウドコンピューティング、AI(人工知能)といった最新テクノロジーを利用して、商業銀行、融資企業、融資事業の認定を受けた機関を含む30社を超える融資パートナーの中から、借りたい条件に限りなく近い貸し手を見つけてくれる点です。

 

2017年は趣店、融360貸款、和信貸など、中国のマイクロファイナンス企業が米国で相次いで上場しました。

その中で、中国の E コマース大手 JD.com(京東)からの支援を受けた楽信も12月にナスダック国際市場に上場しました。ゴールドマン・サックス・アジア、バンク・オブ・アメリカ、ドイツ銀行など国際金融機関が主幹事を務めるなど、国外の投資家の関心を一挙に集めるIPOとなりました。

 

設立者兼CEOの文傑肖氏は江西省にある南昌航空大学の卒業生で、中国のインターネット・ファイナンスの先駆け者として知られています。中国プライベート・テクノロジー・起業家協会(CEA)のヴァイスプレジデントも務めており、中国メディア第一財経週刊(CBN ウィークリー)が主催する「CNBインベーション50」や、「中国フィナンシャル・アニュアル・チャンピオン・アワード」などでの受賞歴があります。

 

しかし中国では市場の急成長とは裏腹に、事業の継続性やリスクを懸念する声も高まっています。楽信のようにテクノロジーを用いたデータ分析で「信頼性の高さ」を前面に押しだしている企業でも、そのデータが常に信用できるとは限りません。

また回収の仕組みも従来の金融機関ほどしっかりとしていない可能性もあります。

 

楽信も含め、中国ソーシャルレンディング業界にとっては、こうした市場の懸念を打ち消しながら、消費者からの信頼をどうやって築いていくのかが今後の重要な課題と言えそうです。

 

 

筆者プロフィール/一村 明博
東京都出身。成蹊大学法学部卒業。1993年、大和証券入社。富裕層や中小企業オーナーを主な顧客とする個人営業に従事し、常に全国トップクラスの営業成績を残す。入社3年目には全国NO.1を獲得。

その後、2001年に松井証券入社。2004年、最年少(当時)で同社営業推進部長、そして2006年には同社取締役に就任。高度かつ専門的な知識が必要とされる金融業界において20年以上にわたり500人以上の部下を育てた人材育成のプロフェッショナル。

 

株式会社ZUU (英語名 ZUU Co.,Ltd.)
〒153-0042東京都目黒区青葉台3-6-28 住友不動産青葉台タワー9F
従業員数:66名 (パート・アルバイト・インターン・海外支社社員含む、2017年12月時点)

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