3月のM&A件数は適時開示ベースで、前年同月を4件上回る86件となった、3月として2009年(88件)以来11年ぶりの高水準。2月に比べると9件増えた。日銀の金融緩和などを背景にM&A市場の活況は3月も続いた。

ただ、海外企業を対象とする買収案件は7件にとどまり、直近1年で最も少なかった。欧米に続き、国内でも新型コロナウイルス感染拡大の深刻化とともに、業績悪化が避けられない情勢で、4月以降、M&A市場が縮小に転じることが予想される。

1~3月期のM&A件数は232件。前年同期より10件増え、09年以来の高い水準となった。

全上場企業に義務づけられた適時開示のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、ストライク(M&A Online編集部)が集計した。

取引金額1000億円を超える大型M&Aは1月、2月と2カ月連続でゼロだったが、3月は1件発生。今年最大となったのが、欧州で電力、ガスなど総合エネルギー事業を展開するオランダのエネコを買収した三菱商事と中部電力の案件。三菱商事80%、中部電力20%出資の新会社が全株式を41億ユーロ(約5000億円)で取得した。両社は昨年11月に買収の優先交渉権を獲得していた。

一方、国内企業同士では、ノーリツ鋼機が350億円を投じてDJ・クラブ機器メーカーのAlphaTheta(旧パイオニアDJ、横浜市)を子会社化する案件が最も大きかった。有利子負債約300億円の返済も引き受けるため、実質的な買収額は650億円。AlphaThetaは2015年に米投資ファンドの主導でパイオニアから分離独立し、DJ・クラブ用プレーヤーで世界トップに立つ。

合従連衡の動きも加速した。三井製糖と大日本明治製糖は2021年4月の経営統合に向けて協議に入ると発表した。統合後の持ち株会社は日本甜菜製糖とも資本業務提携を予定する。人口減や甘味需要の多様化など経営環境が厳しさを増す中、業界トップの三井製糖を軸に純大手が結集する。

オーダースーツでは業界の“両雄”が手を組む。三井松島ホールディングスは、子会社の花菱縫製(さいたま市)とメルボ紳士服工業(大阪府枚方市)などを中核とするメルボグループとの事業統合で基本合意した。花菱は「HANABISHI」、メルボは「麻布テーラー」「TAILOR FIELDS」ブランドで知られる老舗。オフィスウエアのカジュアル化などスーツ業界を取り巻く環境変化を乗り切る。