取引金額は約368億円で、こちらは5月としては2012年以降の10年間では2019年の約4600億円に次ぐ2番目となった。2019年はソフトバンクが約4564億円を投じてヤフーを子会社化した大型案件があったため、これを上回ることができなかった。

全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。

取引金額のトップはAOI TYO Holdingsの約213億円

取引金額のトップはAOI TYO Holdingsが、米カーライル・グループと組んでMBO(経営陣による買収)で株式を非公開化すると発表した案件で、買付代金は最大213億9058万円。

中江康人代表取締役グループCEO(最高経営責任者)ら経営陣の依頼に基づき、カーライル・グループがTOB(株式公開買い付け)を実施し、全株取得を目指す。

AOI TYOはテレビCM制作トップだが、コロナ禍の影響拡大でCM需要が大幅に減少し、2020年12月期決算は営業赤字に陥った。こうした中、広告のデジタル化への対応などを進めるうえで、非公開化を通じて中期的な視点で経営を進められる体制を作り出すことが不可欠と判断した。

 

金額の2番目はPKSHA Technologyが買収目的会社を通じて、オウケイウェイヴのソリューション事業を買収することを決めた案件で、取得金額は73億1400万円。オウケイウェイヴが対象事業を会社分割して設立する新会社PRAZNA(東京都港区)の全株式を取得する。

オウケイウェイヴのソリューション事業は、法人向けFAQ(よくある質問)/お問い合わせ管理システム「OKBIZ.」シリーズなど。PKSHAはグループ企業を通じて展開する自動応答エンジンとの掛け合わせにより、高付加価値化などにつなげる。

 

金額の3番目もPKSHA Technologyの案件で、同社は50億600万円を投じ、ソフトウエア開発のアシリレラ(東京都渋谷区)の全株式を取得し子会社化する。アルゴリズムモジュール(自然言語処理、画像認識、異常検知など)、アルゴリズム・ソフトウエアとの強力な相乗効果を見込む。

アシリレラは、ビジネスプロセスの自動化や生産性向上を実現するソフトウエアを提供しており、エンドユーザー企業のライセンスは1000社以上という。

 

【IT・ソフトウエア業界の2021年5月のM&A】