日本国内のIT(情報通信)人材不足が深刻さを増している。経済産業省は、2030年に国内のIT人材が最大で79万人も不足すると予測している。足元でのIT関連需要は、企業のデジタルオートメーション(DX)化などを背景に好調だが、国内のIT人材育成や海外からの人材獲得はその動きに追いつくことができていない。少子化や労働力人口の減少もこの問題の深刻化に拍車をかけている。この状況を放置すれば、日本のIT人材の量と質は米国や中国などにさらに後れを取り、日本企業の生産性を低迷させかねない。海外人材の日本企業へのマッチング事業などを展開する全研本社ではこのほど日本企業に対して海外人材についての意識調査を実施した。

 

全研本社が実施した日本企業の採用担当者を対象としたアンケート調査によると、「外国人の採用に興味がある」と回答した企業が半数近くに達し、3割強だった「興味がない」を大きく上回った。興味がある分野としては「事務、管理職」や「ITなどの技術職」などをあげる企業が多かった。少子・高齢化を背景とした労働力不足や優秀な人材の獲得競争の激化を受けて、外国人人材を雇用したいとの意欲が高まっていることが浮き彫りになった。

 

調査は全研本社が企業の人事・労務など採用担当者を対象に8月19~21日に実施し、200件の回答を得た。回答した企業の従業員数は500名以下が42.5%、500名超~1000名以下が15.5%、1000名超が42%。業種は製造業、サービス業、金融・保険、情報・通信、流通・小売業、教育・医療サービスなど。

 

6割近くが外国人「1年以内に採用目指す」

アンケートでは「外国人人材の採用に興味がありますか」との質問に対して、「興味がある」と回答した企業の比率は45.5%にのぼった。一方で「興味がない」との答えは35%にとどまった。「どちらでもない」との回答は19.5%で、今後の状況によっては外国人人材の採用に興味を持つ可能性もあるとみられる。

外国人の採用で興味のある分野は「事務、管理職」(45.1%)、「営業」(33%)、「販売」(24.2%)や「技術職、専門職(建設・開発、IT)」(22%)などが上位を占めた。

採用の時期は「1年以内」の回答が6割近くに達した。

「外国人人材の採用に興味がある」と回答した企業に理由を複数回答で尋ねたところ、断トツで回答が多かったのは「優秀な人材を確保するため」だった。回答の比率は全体の68.1%にのぼり、大半の企業が人手不足の中で、単なる数合わせではなく、有能な人材を外国人から採用したいと考えていることが明らかになった。

 

次に回答が多かったのは「外国語が必要な業務のため」で46.2%に達した。英語などの外国語の専門的な知識やスキルを必要とすることが、外国人の採用に向かわせている。「人手が不足しているため」との回答も全体に占める比率が42.9%と高かった。「海外とのつながりを強化するため」「新たなビジネス展開のため」との回答も3割程度に達し、日本企業が外国人人材の語学能力や海外での人脈、専門的な能力などに期待していることがわかった。

 

「外国人採用に興味なし」理由のトップは「社内の受け入れ体制が整っていないため」

「外国人人材の採用に興味がある」と回答した企業に理由を尋ねたところ、最も回答が多かったのは「社内の受け入れ体制が整っていないため」との回答が全体の33%にのぼり、最も多かった。「外国人の採用実績がないため」との回答の比率も29.4%と高かった。これらの回答は、受け入れ体制が整えば、外国人の採用に前向きになる可能性を示唆している。一方、「すでに人手が足りているため」との回答も27.5%あった。