総務省が2022年9月にまとめた人口推計によると、70歳以上の人口は前年比で39万人増の2872万人となった。後期高齢者医療制度の対象となる75歳以上の人口は72万人増の1937万人に上り、介護関連の需要が急速に増えている。

高齢化が進んでいることから、厚生労働省によると40年には介護人材を現在から約69万人も増やす必要がある。しかし、少子化を受けて15~64歳の生産年齢人口(概算値)はこの10年で1割減少している。国内の人手不足もあり、介護分野でも海外人材の雇用を模索する動きが強まっている。

しかし、せっかく外国人を雇用しても、日本では介護関連の資格を取得していなければ一定期間しか働くことができない。海外人材の確保は日本の介護分野の人手確保のカギとなる。第一次ベビーブーム(1947~49年)に生まれた「団塊の世代」と呼ばれる人たちが後期高齢者になる「2025年問題」を直前に控え、こうした課題の解決に向けた新たなサービスが始まっている。

 

海外人材による介護福祉士の資格取得をサポート

全研本社はこのほど外国人の介護人材向けの新たなサービス「ZENKEN NIHONGO 介護」を始めた。外国人が働きながら「介護福祉士」の資格を取得するため、介護現場で使われる日本語や専門用語などを教える。資格取得のための頻出問題をマスターする受験対策も実施し、3~4年内の合格を目指すという。

同サービスは、介護施設などで働いた経験を持つ複数の日本語教師が授業をするのが特徴。現場経験があるだけに、一般的な日本語教師よりも実用的、実践的な日本語を教えることが可能という。厚生労働省によると、高齢化の進行を背景に介護人材はさらに需給がひっ迫する見通し。全研本社は、外国人の介護福祉士を増やし、介護分野の人手不足の問題解消に貢献する考えだ。

 

介護福祉士の資格取得なら外国人の永続業務可能に

日本では無資格の外国人人材は一定の期間しか介護業界で働くことができないが、介護福祉士の国家資格を取得すれば永続的に働けるようになる。全研本社の新サービスでは、1年目は生活するために必要な日本語や介護現場で使われる日本語を取得。2年目からは専門用語の理解・運用、介護福祉士の受験対策を実施する。

オンラインでの授業のほか、チャットで学習法などの質疑応答もできる。個人が参加するグループが一緒に教育プログラムを通じて進める「コーホート学習」も取り入れている。料金は月額1万円からで、外国人人材を雇用している日本企業が支払う。企業は外国人人材の学習の進捗状況もシステム上で確認することができる。

 

「2025年問題」まであと2年、海外人材の活用なるか

人口の多い「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者に到達し、介護ニーズの急増が想定される「2025年問題」の到来まで2年を切った。人手不足や施設不足に対する懸念が高まるなか、事業者は人手の確保を急いでいる。しかし、単純に海外人材を雇用しても企業側の受け入れ体制や資格取得に向けた教育体制が整っていなければ、有能な人材の早期離職を招きかねない。全研本社の取り組みは日本の介護という高齢化社会の大きな課題解決の一助となりそうだ。