生成AIは来年以降、さらに活用が拡大するとみられている

今年の新語・流行語大賞(ユーキャン)のトップ10にも入った生成AI(人工知能)。日本では米オープンAIが手掛けるChat(チャット)GPTが有名だが、実際には国内外で多くの種類の生成AIが登場している。企業向けクラウドシステムなどを手掛けるFIXERが10月に実施した日本企業の経営者や管理職を対象としたアンケート調査によると、生成AIを「利用している」との回答は3割に達した。活用事例としては、情報収集・調査や文章のチェック・作成などが2~4割に達している。生成AIは文章以外にも画像・デザイン作成やプログラミングなどにも発展しており、2024年は多くの企業や団体で活用に弾みがつきそうだ。

 

生成AIの活用、国内では道半ば

FIXERは企業向けクラウドシステムのほか、安全性を高め、使いやすくした生成AI「GaiXer(ガイザー)」を提供 している上場企業。12月からはデジタル庁と協力し、ガイザーを活用した政府や自治体の業務効率化の実験に乗り出している。調査はFIXERが全国の従業員300人以上の企業を対象に10月17~20日に実施し、800件の回答を得た。情報・通信のほか、金融・保険、不動産、流通・小売りなどの企業が対象となった。

 

生成AIは人間の指示に基づき文章や画像を自動で生成する人工知能(AI)。企業は生産性向上に向けて導入を進めている。ボストン・コンサルティング・グループは生成AIの市場規模が27年に世界で1210億ドル(約17兆円)に達する可能性があると予測している。

 

アンケートで「生成AIを利用しているか」と聞いたところ、「業務で利用している」は21.9%に達した。新しい技術にもかかわらず、中堅以上の企業ではすでに一定数が活用に動き始めていることがわかった。「私用では利用しているが業務では利用していない」は8.8%だった。「私用でも業務でも利用していない」は69.8%だった。

 

生成AIを文章関連で利用するとの回答が多数

「生成AIを具体的にどんな業務で利用しているか」との質問に対しては「情報収集、調査」との回答が40.6%でトップだった(複数回答)。生成AIを検索サービスのような観点で利用している人も少なくないようだ。

次に多かった答えは「文章のチェック・構成」で32.6%だった。「文章の要約」(28.6%)、「企画書の作成」(27.4%)、「稟議書の作成」(24%)、「稟議書、企画書以外の文書の作成」(20.6%)なども多数の回答を集めた。複数回答ではあるが、合計すると130%以上が文章関連だった。利用者の大半が生成AIに対して、主に文章を作成する能力を期待していることがわかる。

 

このほか、「アイデア出し」との回答も26.3%に達した。生成AIについては、「人間では気づかない視点を指摘してくれるケースがある」との見方もあり、新たなアイデアに期待する向きもあるようだ。「エクセルの関数やコードの生成」との回答は13.7%あった。一方で「動画・画像の生成」は6.3%にとどまった。生成AIは現時点では、画像や動画よりも文章の生成のイメージが強いとみられる。

 

生成AIへの将来投資「1億円以上」の回答も7%近く

「現在、どの程度の金額を生成AI関連に投資しているか」との回答では「1000万円以上」は15%程度だった。最も多かったのは「わからない」で66.1%。「0~100万円未満」も12.4%に達した。現時点では生成AIへの投資は未知数だと考えている企業も多く、日本企業全体としてはなお積極的な投資姿勢はみられない。

 

一方で「業務に活用するため、将来的に生成AIに投資したいと考えている金額はどの程度か」との回答で「1000万円以上」と回答した人は20.4%に達した。一定数の企業が生成AIの活用に向けて、ある程度の規模の投資を検討していることがわかった。このうち「1億円以上」との回答も7%近くに達した。生成AIは新たな産業革命になるとの声もあがっており、24年以降は資金力のある大企業を中心に投資が進む可能性がある。