Zenkenはインド人など外国人のITエンジニアを日本企業に正社員として紹介している(インド・ベンガルール)

人材紹介などを手掛けるZenkenが実施した日本企業のITエンジニアを対象としたアンケート調査によると、「リスキリング(学び直し)に取り組んだことがある」と答えた人は2割だった。リスキリングによって「仕事の幅が広がった」との回答は50%に達した(複数回答)。デジタル化や技術進歩に伴う人材需要の変化で、雇用のミスマッチが2030年に450万人にのぼるとの民間試算もある。日本もスキリングの拡充が急務となっており、技術力の必要なITエンジニアの間でも一段の能力向上のために取り組む人が増えるとみられる。

 

生産性向上へ政府はリスキリングを後押し

Zenkenはインドなど外国人のITエンジニアを正社員として日本企業に紹介している。調査はZenkenが全国のITエンジニアを対象に2022年7月28~30日に実施し、200件の回答を得た。アンケートで「リスキリングに取り組んだことがあるか」と聞いたところ、「ない」との回答が80%だった。「ある」との回答は20%にとどまった。

 

リスキリング(Reskilling)は、職業能力の再開発、再教育のこと。職場でより高い成果を出したり、需要の多い産業に移って新たな職に就いたりすることができるようにするのが目的だ。生産性の向上や成長分野への労働移動を促して持続的な賃上げにつながる効果が見込めるため、政府も補助金などを通じて後押ししている。ITエンジニアの間でも一部でリスキリングに取り組む動きがあるほか、リスキリングを通じて異業種からIT関連の職種に転じる人も増えている。

 

クラウドやプログラミング、情報セキュリティーなどを学び直し

リスキリングに取り組んだITエンジニアに「どのような内容に取り組んだか」と質問したところ、「クラウド技術」(52.5%)がトップ(複数回答)だった。クラウドはコスト削減やBCP(事業継続計画)対策などで注目されており、学び直しの対象になっていると見られる。「プログラミング」(50%)、「情報セキュリティー」(50%)が続き、3つの項目の回答が半数以上に達した。

このほか、「データ分析」(37.5%)、「英語(語学)」(32.5%)、「マネジメント」(30%)との回答もそれぞれ3割以上に達した。生産効率の向上に不可欠なデータ分析のニーズが大きい。人材不足を受けて、外国人のITエンジニアを採用する企業の動きも出始めており、英語など語学能力を向上させようとする人も多いようだ。このほか、「コミュニケーション」(12.5%)、マーケティング(7.5%)、経営戦略(7.5%)との回答もあった。

 

リスキリングで「転職」「副業」も

アンケートで「リスキリングによる良い影響はあったか」と質問したところ、最も多かったのは「仕事の幅が広がった」(50%)だった(複数回答)。新しい分野のスキルを向上させたことにより、必要な知識が増え、できる仕事が増えたと見られる。「モチベーションアップ」との回答も30%に達した。このほか、「昇進できた」(10%)、「転職できた」(7.5%)、「副業ができた」(7.5%)との回答もあったが、少数派だった。一方、「良い影響はまだない」との答えも30%に達した。

 

「リスキリングにより年収に影響があったか」と聞いたところ、「変わらない」との回答が75%に達した。「上がった」は17.5%、「下がった」は7.5%だった。ITエンジニアのリスキリングは仕事の幅を広げてはいるものの、スキルアップがそのまま給与の増加に結び付いていないことがわかる。ただ、転職したり、副業したりして収入が増えているケースもあるとみられる。

「リスキリングに取り組んでいない」と答えた人に理由を聞いたところ、最も多かった回答は「時間の余裕がないから」(45.6%)だった(複数回答)。「何をしたら良いかわからないから」(26.3%)、「必要だと感じていないから」(20.6%)が続いた。「お金がないから」も13.8%に達した。