コラム

磐田市×テックタッチ AIで行政判断を高度化へ 年間8900時間削減の実績を基盤に

2026.02.13
磐田市とテックタッチの提携
画像出典:磐田市・テックタッチ プレスリリース

行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれて久しいが、単なるツールの導入にとどまらず、業務の「質」そのものを変革する新たな挑戦が始まった。

テックタッチの発表によると、同社は12日、静岡県磐田市と行政事務におけるAI活用に係る連携協定を締結した。同日、磐田市役所にて井無田仲代表取締役CEOと草地博昭市長が出席し、協定式が執り行われた。これまで財務会計システムで年間約8,900時間の業務削減を実現してきた実績をテコに、今後はAIによる「判断支援」へと領域を広げ、少数精鋭でも住民サービスを最大化できる自治体モデルの構築を目指す。

財務会計システムで年間8,900時間削減、実証されたDAPの効果

今回の協定締結の背景には、磐田市における確かな実績がある。同市は「すべての人にやさしいデジタルスマートシティ」を掲げ、テックタッチが開発・提供するデジタル・アダプション・プラットフォーム(DAP)をすでに財務会計システムに導入していた。

DAPとは、システム画面上に操作ガイドや入力を補助するナビゲーションを表示させる技術だ。テックタッチによると、この導入により、磐田市では全庁的な業務削減効果が年間約8,900時間に達すると試算されているという。特筆すべきは、庁内アンケートで74%を超える職員がその有用性を認めている点だ。システム改修という巨額のコストをかけずとも、インターフェースの工夫だけでこれほどの効果を生み出した事実は、自治体DXの成功例として重みを持つ。

ヒューマンエラーを「文脈理解」で防ぐ

しかし、行政事務の現場には、操作ガイドだけでは解決できない課題が横たわっている。複雑怪奇な制度や要綱、そして厳格な事務運用のルールだ。これらを読み違えることによるヒューマンエラーは、職員個人の注意深さだけに依存していては防ぎきれない構造的なリスクである。

今回の連携協定は、ここにメスを入れるものだ。これまでの「操作支援」に加え、AIが制度や業務ルールの文脈を理解し、事務処理の適正性をチェックする仕組みを構築する。単に入力漏れを防ぐのではなく、その入力内容が制度的に正しいかどうかという判断をAIが支援するというわけだ。

テックタッチの井無田仲CEOは、「システムを改修することなくAIで職員をサポートする仕組みは、多くの自治体様が抱える課題を解決する可能性を秘めている」とし、磐田市と共に新たなスタンダードを創出する意欲を示している。

「価値を生む行政」へ 草地市長が目指す持続可能な自治体運営モデル

公務員人口の減少が避けられない未来において、行政サービスの質をどう維持・向上させるかは全国の自治体に共通する難問である。

磐田市の草地博昭市長は、「DXの目的は単なる効率化ではなく、市民サービスの質を向上させることにある」と強調する。AIによる判断支援で、職員がルーチンワークや確認作業から解放されれば、その分、「考える」「創る」時間を確保できる。その時間を住民一人ひとりに寄り添った施策や、新たな価値創造に充てるというのが、今回の連携の核心だ。

将来的には職員の業務支援にとどまらず、住民による申請手続きにおいてもAI活用を視野に入れているという。今回の磐田市とテックタッチの取り組みは、テクノロジーと人が協働する「持続可能な自治体運営」の試金石として、全国から注目を集めることになりそうだ。
(文責:綿引 亮介)

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