
株式会社コジマエンジニアリング
代表取締役社長 小嶋秀夫氏
「自分たちにしかできないこと、自分たちにしか生み出せないモノをつくること、提案することも含めてモノづくりであり、その心さえ貫けば廃れることなどないと思うのですよ」
さらに、「無難なモノばかり製造していては中国をはじめとするアジア諸国に取って代わられてしまうだろうし、一方、ただ技術で勝負してもドイツをはじめとする『工学の先人』のブランド力には敵わない。もともと日本人が得意とするのは生産技術や解析力の部分ですから、そこでプラスアルファの価値をつければ良いのです。何も難しいことではなく、自分が積み重ねてきた技術と知識の積み重ねで新しい発想はいくらでも生まれるのです。それが、開発ということ」と続けた。
それは、日本の技術力の高さを十分に分かっているからこその思いだろう。その表情から、同氏の抱くそこはかとないもどかしさが垣間見えた。
「あとは、匠と称する方々の『腕』に頼りすぎる考え方を変えなくては。匠に頼らざるとも最新技術を活用することで、私たちは人の手ではたどり着けないミクロな単位の精度を手に入れることができるのです」
今年、コジマエンジニアリングは同業他社に奮起させるようなある行動に出た。なんと約1億円かけての新社屋、工場の建築である。冒頭でGDP改定値の下方修正要因について「設備投資の減少」をあげたが、同社はまさにその逆をいく行動をとってくれたのだ。
「ただ単に、手狭になったからという単純な理由なのですが」
そう小嶋氏は謙遜するが、その前向きなアクションの一つひとつが結果的に中小製造業、ゆくゆくは日本経済復興の第一歩へとつながるのだ。
また、新社屋建築に関連し、同氏は自身の考える中小製造業のあり方を語ってくれた。
「一つの製品、一つの機械をつくりあげるには、それに適した企業の規模があると思うのです。それぞれキャパシティがありますから、受注をたくさん請ければよいというものでもない。工場は大きすぎても手狭でもいけない。逆にむやみに規模を大きくすると、自分の首を絞めることになる。中小企業は、投資に関しては大手以上に頭を使わないと」
結論として、最後に小嶋氏が目指していることは何かと尋ねると、前述の言葉を繰り返して「お客さまの笑顔を見ることですよ。根底はそれだけ。
逆をいえば、担当者に会わないとその方の『最高の笑顔』が想像できないのでやる気が出ないし、モチベーションも上がらない。最初に会っておけば、『この人の笑顔を見るにはこういうものを提案し、つくればいいのだ』とピンとくる」と即答してくれた。まさしく、天性のモノづくりである。
企業としての展望は、「ひらたくいえば、『常に世の中に必要とされる会社であれ』、ですよね」とのこと。
筆者もそう思う。思想は広く、いわば「おおざっぱ」ともいえるほどだが、技術は緻密。そんな小嶋氏のバランスの良さは製品にも多々、生かされている。綿密に組まれたバランスの良さ。まさに「ここにしかない」機械がつくり出されているのだ。
新社屋も完成し、年内の増産体制も整った。コジマエンジニアリングには、今後もますます注目が集まりそうだ。 ■
<プロフィール>
小嶋 秀夫(こじま ひでお)氏
1948年、長野県生まれ、63歳。
1967年、地元の工業高校を卒業後、電子メーカーに入社し、工場の技術課に在籍。同社を退職後、機械加工を営む中小製造業に入り、機械の開発に従事する。2000年にコジマエンジニアリングを創業。現在に至る。
株式会社コジマエンジニアリング
〒399-4601 長野県上伊那郡箕輪町 中箕輪10500−335番地
TEL 0265−71−1844
http://kojima-eg.com/index.html
※本記事は2011年10月号掲載記事をもとに再構成しています。