梅村圭司 代表取締役CEO 株式会社ロイヤルゲート
PAYGATEの進化の歴史・高セキュリティで安心安全、信頼性と実績のある決済ソリューションサービスへ
そもそもロイヤルゲートのマルチ決済ソリューション「PAYGATE」の強みは、端末・アプリ・センター・セキュリティのすべてワンストップで提供している点。ここには同社の決済デバイスたるもの各ありきという思想が込められている。従来のビジネスモデルでは、決済端末提供・ネットワーク提供・決済代行など決済のバリューチェンにおける決済プレイヤーが非常に多いため、コストも必然的に割高になっていた。
同社は「決済端末販売だけではないので、たとえば決済代行やネットワークの利用などどこかで収益が取れれば、全体として比較的安価で提供できる。またこれまでの決済端末は、決済端末内部にソフトウェアを格納しているため、端末が高くなる要因やメンテナンス性や拡張性が無いものが多かった。当社はアプリケーションやソフトもすべてスマートデバイス側に寄せたので、端末にかかるコストを下げられる」という。
PAYGATE端末の構想は2011年には出来上がっていたため、自己資金のみで開発研究を続けてモック版の改良を重ねてきたが、シリーズAファイナンスを2014年に実施し製品化まで持っていくことができた。梅村氏によれば、日本には古くからの素晴らしい技術をもつ大手決済端末事業者はいても、ベンチャーで安価にスピード感を持っていいデバイス製品を作れるプレイヤーがあまりいない。mPOS(モバイルPOS)やシンクライアント型の決済の製品化にはハードウェア、ファームウェア、セキュリティ、ネイティブアプリ、ウェブアプリケーション、サーバーシステムなど、さまざまな技術をカバーするエンジニアが必要になるからだ。
また、人材を揃えられる大手であっても、部門をまたいで連携するとなるなど、どの部門の予算で、誰が責任をとってやるか、また部をまたがって稟議を上げてスピード感を持って市場投入できるのかなど、大手には大手の事情がありなかなかこの分野の製品開発が進まない理由があると推測している。
もともと怪我でウィンタースポーツを引退した際に、カナダに留まりたい一心から2000年に現地で学生起業したのが最初だったという梅村氏。スポーツの楽しさを伝える側に回ろうとの考えだったが、プレイヤーだった自分と、起業家としての自分の間でジレンマを感じていたところへ、2006年にふとしたきっかけからITサービスの世界に参入することとなった。
母の日のプレゼントにネットでカーディガンを買おうとしたところ、複数の色が選べたことで似合う色でさんざん迷い、決まったかと思うと今度はサイズがヨーロッパサイズの表記だったため選べず困ってしまう、という体験をした。「これはもらう側が選んだ方が楽しいんじゃないか」と思い、そういったサービスをあれこれ探したが当時存在しなかった。そこで弁理士に相談し「自分で作れるカタログギフト」で特許を申請・取得。実際に権利化されたのは2011年だが、特許出願をした瞬間に「ITならアイディアひとつで、世の中を変えられるかも知れない」と思い到った。
「私自身が目立ちたがり屋だったこともあるかも知れないけど、死ぬまでになにか一つは自分が作り上げた文化をのこしたい、何か生きてきた軌跡を残したいという思いがあった」。それが社会に新しい技術を提供し、社会に貢献できればなおいいと考えたときに、ITであれば小資本で、世の中のためになるような文化をつくれるかもしれない、と大きな可能性を感じた。そこで、何かひとつでも世の中の役に立つものをつくっていこうと、「IT社会に新しい文化を創造する」とのビジョンを掲げて、2007年に立ち上がったのがロイヤルゲートだ。
カタログギフトの特許で事業化したのはいいものの、当時はまだ資金調達方法もそれほど多様化しておらず、自己資金で収益を上げて自己投資を繰り返していくという方法で成長するしかなかった。同社は2007年当初から、ITコンサル、システム開発、ウェブデザイン、サーバー保守、オンライン決済等々をワンストップで提供するなど、ITサービスを幅広く提供。現在でも稼働しているという大手広告会社の広告の請求管理システムや、ミュージシャンの WEBサイトやコンテンツ作り、ファンクラブの月額課金システムなど、この時期は多角的に展開していたという。
「私は創業者として、また株主から期待を受けてこの決済サービスを世の中に誕生させた生みの親としての立場で、何よりもこのサービスを世の中の新しいインフラとして残すことを最優先に考えるべきであり、創業者のエゴで、株主に支えられてここまで作り上げてきたものを衰退させてしまうリスクを追ってはならない。人、モノ、金やブランド力のある大手企業に支援してもらうことで、サービスをより早く世の中に広めていった方が社会にも貢献できるし、タイミング的にも今しかないと考え、今回の大和グループ入りを進めさせていただいた。また、ここまで一緒に戦ってきてくれたチームのみんなに対しても、大きな決断であるし、創業から10年を迎え、年齢を重ね家族を持つようになったチームの仲間たちにとっても、今後いいものを作り上げていくためには、安心して事業に邁進していける家族の信頼やサポートが大事だと考え、そのための安心材料となるのではないかという判断もあった」
この点に関して、大和ハウス側のフィナンシャルアドバイザリーを務めたプルータスM&Aアドバイザリーの島田光太郎氏も「大和ハウスとしてもPAYGATEを手中におさめることは、同社の今後の事業展開の青写真上、大きな意味があった」と述懐する。

プルータスM&Aアドバイザリー 島田光太郎氏
梅村社長と二人三脚で歩んできた大坂浩平取締役(左)
そもそも米国でスクエアが流行った背景には、日本よりキャッシュレス化が進んでいることにある。米国の最終消費支出に占める非現金決済比率は50%以上なのに対して、日本は、当時10%台、2016年にようやく20%を上回ったところにすぎない。そのような状況の中、町の小さな飲食店や小売店からインフラ構築しても決済の利用がされなくては収益は上がらない。
同社は、エンタープライズ企業が求める要件や仕様に耐えうるコンセプトを持って開発してきた。現在マーケットは、タクシー、ピザデリバリー、飲食店、スポーツショップ、弁当チェーン店、格安SIM会社、ホームセンターなど多種多様な導入実績をもつ。
梅村氏によれば、向こう3~5年の短期的なキャッシュレス化は、クレジット主要ブランドや電子マネーでの非接触型ICカードの増加やQRコード決済、仮想通貨の拡大で進む見通し。長期的には生体認証、さらには少額決済に関しては支払い行為すら発生しないペイレスに移行していくのではないかとみている。
「携帯しているスマートデバイスからGPSやBluetoothを使って個人を特定することで、一定枠内の少額決済に関してはその場所に立ち入るだけで自動的に決済が完了するようなところまで推し進めていかないと、日本でそれ以上のキャッシュレス化は進まない」
政府の指針にも2025年までにキャッシュレス化40%の実現とあることからも、世界的に遅れているのはみて取れる。
現金を持つことはコストにもつながってくるので、企業にとってもキャッシュレス化のメリットは大きい。とはいえ、向こう3~5年で、リーダーライターやプラスチックカードがなくなることはないとみている。
「端末からアプリ・センター・決済代行までワンストップで担う当社がプラットフォーマーとしての地位を確立していくことでエコシステムを広げていけば、上に乗るサービスが生体認証やペイレスに移行しても、ゲートウェイは必ず必要になる」
またPAYGATEは Microsoft Azure(マイクロソフト・アジュール)上で動いているため、グローバル展開も意識したエコシステムとなっている。日本発で、グローバルに向けたペイメントの仕組みとしての地歩を固めることも可能だ。梅村氏の次なる目標は、次世代社会に向けたグローバル規模の決済エコシステムを構築することにある。
<プロフィール>
梅村 圭司(うめむら けいじ)
1977年6月16日生。北海道札幌市出身。
北海道工業大学工学部 機械工学科 複合力学、流体力学専攻。
在学中にカナダバンクーバーに留学。留学中の怪我でプロスポーツ選手の道を断念。帰国後に商社勤務後、2004年に有限会社SidewayStyleを設立し代表取締役に就任、旅行関係事業、スポーツイベント、スポーツアカデミー事業を立ち上げ法人化。また10年にわたるスポーツコーチングで、延べ5,000名の指導に携わる。2006年にITコンサルの知見からビジネスモデル特許を出願・取得し、大きくITビジネスへ参入。2007年株式会社ロイヤルゲートを設立、代表取締役就任。
<会社情報>
株式会社ロイヤルゲート
東京都港区赤坂2-10-5 赤坂日ノ樹ビル4階
TEL:03-3568-4321
2007年設立
http://www.royalgate.co.jp