
永坂シール印刷株式会社 社長 永坂武志氏
「先代は、現在84歳。いまも矍鑠と、会長をとして毎日元気に出社していますよ(笑)しかし、本音を言えば、もう少し早くバトンタッチしてほしかった。私は、1995年に、大手ゲーム会社から弊社に転職し、ほどなく2001年に常務取締役に就任しました。その時点で、先代の年齢などを考えると、さほど間を置かず自分が社長を継ぐものと思っていたのですが、実際には10年以上も経過し、私も年を取ってしまいました。現在取り巻かれた環境もかなり変わっているので、経営にあたっては、本当に気を引き締めないと」
そして、経営者になった永坂氏には、強くこだわっていることがある。「従業員の雇用は何があっても守る。我が社は、私は、従業員第一主義です」(永坂氏)という考え方だ。
永坂シール印刷は大阪本社のほか東京営業部を構え、社員数およそ70名。驚くことに、この規模は、最盛期から業績不振に苦しむ現在まで、ほぼ変わっていない。利益率1割未満が一般的という薄利な業種で、且つ受注が減る形で業績が悪化している以上、まずは人件費の削減が急務であり、むしろ危機的状況下の対症療法といっても過言ではなく、リストラをしない方針には一見すると疑問符がつく。しかし、永坂氏はリストラをしないことを宣言している。その真意を問うた。
「これは私の信念でもあり、弊社の経営理念でもあるのですが、どうしても従業員の雇用は守りたいのです。弊社は従業員ありき。従業員がいなければ、そして彼等の信頼がなければ、企業として何も生み出せません。従業員が一人もいなくて、自分独り残ったとして、仕事は何もできません。逆に、従業員さえいれば、仕事はなくても、知恵を絞ることができますし、そこから活路も見出せます。そして、いざお客様が現れたときには、すぐに仕事に取りかかれます。
こう考える方が前向きだし、希望がある。従業員の雇用を守った上で、何ができるか、何をするか、この前提に立った上で、現状を打開してみせますよ。企業組織は、従業員、人が命です。私なんか特に、従業員なしでは何もできない人間ですから(笑)」

うちは、社長がボンクラでも社員は優秀なんです。これを見てください。ある社員が作ったのですが、すごいでしょう。それからこれも」自社製品はもちろん、会社案内パンフレット、HPなどを次々と見せてくれる永坂社長。こうした言葉の節々からも、従業員への愛情、人柄の良さが滲み出ている。

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ということで、ここで永坂シール印刷の製品を紹介していこう。 (取材時に資料としてもらったシールを筆者が家で試したものです。使い方とか感想とか、好き勝手言っています)。 まずは、これ。ジャケットのポケットに入れる消臭シール。(シールじゃないけど……)
スーツやジャケットのポケットに忍ばせるだけで、気になる臭いとは無縁に。ホントかよ? と2週間、半信半疑で使用してみた。
…驚いた。本当にジャケットが臭くならない。す、凄い! はたしてこの効力はどこまで持つのか。
天使の吐息。消臭・芳香インソールシール。筆者の履き潰した靴は、見てわかる通り、悪臭をまき散らしていた。それが、このシールのおかげで解消されたらしい。とりあえず筆者としては、家に帰って嫁に文句を言われなくなったのが嬉しい。永坂さん、ありがとう!
ホコリトリーナ。いつでもどこでも埃がとれる。便利なエチケットシール! こ、こっ、このひとは⁉ …とりあえず使ってみよう。
「あたし、にんにくラーメン、チャーシュー抜き!」永坂シール印刷の人で好きな人がいるのかな? (版権とか高そう…)
ブラシだと逆に生地を傷めるんだよな。それが、この綾波シールならば生地にも優しそうで、またホコリや糸くずを除去する効果も高そうだ。で、効果はいかに?
「ありがとう。感謝の言葉、初めての言葉。あの人にも言ったことなかったのに!」
ところが、ごめんなさい。筆者のスーツ、最初からそんなに汚れていなかったらしく、効果が分かりにくい(笑) でも粘着性は強く、一枚のシールが何度も使えた。生地にも優しそうで、またホコリや糸くずを除去する効果は間違いなくあるのだろう。
確かに便利だな。筆者が普段着る安いスーツには、ブラシでOKなんだろうけど、一張羅の高いスーツとか仕立てたスーツには、ぜひとも欲しい、と思った。本当、クリーニング屋とかスーツ屋に置いてあったら、需要はあるはず。
次は、脂とり紙。脂を取ると、文字が浮き出てくる代物らしい。
じゃ、いきますか。人並み以上に顔がテカっている俺の脂をなめるなよ!
って、使ったのだが、何度写真を撮っても使用後の紙は見るに堪えなくて、写真を載せるのは止めておきます。 もちろん、文字はくっきり浮き出ました。
貼る~ラ~。どこにでも貼ってはがせる便利な定規シール。元々は子どもが遊ぶことを踏まえて考案されたものだそうだ。筆者は栞として使っている。
以上。それでは本文に戻ります。
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スーツや靴に忍ばせるシールというアイデアを聞いていて、富士フィルムの古森重隆社長の存在が脳裏に浮かんだ。同社がコア事業の写真フィルムの大幅縮小という本業消失の危機を受けて大きく方針を転換し、液晶ディスプレー材料や医療機器分野、富士ゼロックスなどに活路を見出したように、永坂シール印刷株式会社も、未だ見ぬブルーオーシャンを目指して新たな航路を開拓しようとしているのだ。 そして、永坂シール印刷のこうした舵取りは、同社の歴史を顧みれば、なんら不思議ではない。 考えてみれば、同社の大得意である任天堂もまた、業態を変えながら歴史を築いてきた企業である。任天堂の顔とも言えるキャラクター、マリオにしてもそうだ。1981年にアーケードゲーム『ドンキーコング』で初登場したマリオ。気づけば、クッパを倒してピーチ姫を奪還するというお決まりの冒険劇に飽き足らず、いつしかカーレースに興じたり、白衣を着たドクターに転じたり、はたまたテニスやパーティーに明け暮れたりもするようになった。種々の派生ソフトを生み出し、活躍の場は今現在もますます広がっている。 永坂シール印刷のシールもまた、同じ可能性を持っている。永坂氏が見据える視線の先には、広大な碧海が広がっているはずである。◆
最後に永坂シール印刷株式会社の印刷機を紹介しよう。「大手コンビニエンスストアの商品用シールなども請けているため、小ロットから大量生産まで幅広く対応できることが強みです。シールに関するお話や疑問がありましたら、ぜひご連絡ください」(永坂氏)
小型間欠凸輪転機
凸輪転機間欠ではない。
高速シートカット機印刷時はロールのため、シートに切る必要があるものもある。
永坂シール印刷株式会社で唯一の間欠オフセット輪転機 名称:FX-10
平圧機。
デジタルインクジェット印刷機。
自動検査機。
永坂武志氏(ながさか・たけし)…1964年生まれ。同志社大学卒業後、神崎製紙(現・王子製紙)、株式会社カプコンを経て、現在に至る。
永坂シール印刷株式会社
http://www.nspnet.co.jp/
1960年 大阪市にて永坂シール印刷所創業
1968年 永坂シール印刷株式会社設立
1988年 東京営業所(現、東京営業部)開設
2004年 世界ラベルコンテストで最優秀賞受賞
2006年 プレミアム・インセンティブショーに初の単独出展
2014年 永坂 武志氏が代表取締役社長に就任
従業員数:70名
年商:12億円
本社
540-0006 大阪市中央区法円坂1-3-2
電話:06-6943-8541 / FAX:06-6941-1606
担当:生原(いくはら)氏
東京営業部
105-0011 東京都港区芝公園2-8-2
電話:03-3459-9025 / FAX:03-3459-9026
担当:久永氏