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鈴木宗男 新党大地代表 北海道は独立するしかない!?

◆取材・文:加藤俊

鈴木宗男氏

もちろん、人によっては様々な見方があるだろうが、やはり北海道における中小零細の実情を知り、未来への手掛かりを得るには、この人の話をまずは聞かねばなるまい。

イジメ易いところばかりイジメる永田町・霞ヶ関に真っ向からNO!

競争原理ですべてが上手くいくなら政治は要らない

「北海道に利益誘導をして何が悪い」と、公言して憚らない情と道(北海道?)義と信義の政治家、鈴木宗男氏(新党大地代表)である。確かに言うことは少々荒っぽい。しかしその中身は極めて分かり易い。しかも首尾一貫してブレないのだ。何がどうブレないか。とくとご覧いただこう。

 

北海道、とくに鈴木氏の地元である道東から道北にかけての厳寒地は、冬になると〝ホワイトアウト〟なる脅威が、毎年のように住民たちを襲う。豪雪に覆われた大地と、猛吹雪の荒れ狂う空中の大気とが一体化し、太陽の位置はおろか、自分が今どこに立っているかも分からない恐ろしく危険な自然現象である。

そのホワイトアウトによって、今年(3月2日)もまた9人の尊い生命が失われた。余りに長く冷気に晒されて口も利けなくなった幼い女の子と、その女の子を脱いだジャンパーでくるみ、抱きかかえたままこと切れている若い父親が発見されたのは、翌朝のことだったという。

 

「これが北海道の現実なんですよ。たまたま自然現象を例に挙げて話しましたが、疲弊した産業や逼迫した財政など、北海道には北海道なりの難しい事情が他にもいっぱいあるんです。そんなことも顧みないで、何でもかんでも競争原理だ、市場原理だなんて中央の屁理屈を振り翳して言うから、北海道もこの国も、いっぺんにおかしくなってしまったんですよ」(鈴木氏、以下同)

いわゆる新自由主義経済を標榜した、〝小泉構造改革〟である。

「小泉さんは自民党をぶっ壊すと言って総理大臣になりましたが、ぶっ壊れたのは自民党じゃなく北海道ですよ。地方都市ですよ。構造改革なんて美名の下にいろいろやりましたが、実のところ何のことはない。政治の役割を放り投げて、全部競争原理に委ねただけじゃないですか。公共事業費の一律1割カットなんてその典型ですよ。それですべてが上手くいくなら、政治は要りませんよね。

でも実際はそうじゃないでしょ? 頑張っても頑張っても税金だけ取られて、経営が一向に良くならない中小零細は全国どこにも少なからずあるし、働いても働いても暮らしが良くならない人だっていっぱいいます。さっきのホワイトアウトの件もそうですが、政治を必要としている人も地域も、この国にはうんといるし、うんとあるんですよ。それを無視して、一律同条件に扱うなんてことがあってはいけません。なのに彼はそれをやってしまいました。早い話が、麻酔なしで外科手術をしたんです。それじゃあ北海道ならずとも参りますよ」

 

ちなみにこの10年ほどだけのデータでいうと、完全失業率、生活保護受給世帯率とも、北海道はほぼ毎年ワースト5、もしくはワースト10に名を連ねており、企業倒産発生率も、全国平均を大きく上回っている。ついでにいうとその間に、かつて1兆円を超えていた北海道開発予算は半分以下にまで減額されている。おまけに先の公共事業費1割カットである。
血も涙もないとはこのことだ。

 

 

日本人の胃袋を支えている事実は無視できない

言うまでもないが、中央政府の一番の仕事は国の予算編成と執行、つまりは〝儲け〟の再配分である。これが適正に為されていなければ、とてもじゃないが国家とは言えない。

「私自身が、北海道に利益を誘導して何が悪いんだと常々言っていますし、多くの国民も、鈴木宗男はそういうタイプの政治家だと思っています。でも誤解あるといけないから言いますが、私は北海道に過分な予算を回せと言ってるんじゃないんですよ。北海道の置かれている立場や厳しい現状、担っている役割や責任などに応じた、適正な配分をしろと言ってるんです。

考えてもみてください。北海道の食料自給率は200%ですよ。カロリーベースで全国の約2割の食料を生産しているんです。農業生産量の約1割、漁業生産量の約4分の1です。ひと言でいうと、この厳寒の地にありながら、日本人の胃袋を一生懸命に支えているんですよ、北海道の人たちは。この事実を無視していいわけはないでしょう。だって食料自給率が減るということは、国の領土が減るにも等しい重大事ですからね」

そこへきてTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の交渉参加表明である。北海道庁の試算によると、TPPに参加すれば毎年2兆円を超える経済のシュリンク(収縮)と、新たに17万人を超える失業者が生まれる可能性が高いという。もちろん道内だけ、である。

もしこのままTPPに参加することになれば、北海道は独立するしかないんじゃないかと、私は真剣に思っています。幸いにして食料資源が豊富ですし、観光産業が好調ですし、足りないエネルギーはロシアからパイプラインを引けば何とかなりますからね。だってそうでしょう。何をやるにもそうですが、この国の中央政府は搾り易いところから搾り、イジメ易いところからイジメるじゃないですか。

沖縄の普天間問題もそうでしょう。なんでまた沖縄に負担させるんでしょうか。米軍基地によって守られているのは日本全国であり、全国民じゃないですか。他の46都道府県と、胸襟を開いて話をすればいいとは思いません? 同じ日本人ですよ。日本人というのは、自分の喜びは他人にも分かち、他人の痛みは自分も引き受けることが普通にできるという美しい風習を、古代から連綿と受け継いできているんです。必ず解決策は見つかります。要はそのための努力を、政治家や官僚、マスメディアを含めて、社会的に影響力を持つ人たちが命を懸けてやるかやらないか。それだけですよ」

むべなるかな。

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6月号 北海道特集

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町工場・中小企業を応援する雑誌BigLife21 2013年6月号の記事より

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